小説用倉庫。
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「……ルシェイド?」
心配そうな声に目を開けると、目の前にセイラスの顔があった。
「傷が痛むか。戻るか?」
「平気」
何か言いたそうだったが、部屋には戻らないでくれた。
言いたいことを、分かってくれる。
この人は。
「あ、あの」
中庭を後に歩き出したセイラスに、ルシェイドが話し掛ける。
セイラスは振り返ると、無言でルシェイドを見つめた。
その沈黙が先を促すものだと気づくのに少しかかったが、聞きたかったことを聞こうとして口を開き。
そこで凍りついたように動きを止めた。
あまりに唐突な停止の仕方に、セイラスが訝しげに眉を寄せる。
「……おい?」
不安に思ったのだろう、躊躇いがちに声をかけるが、ルシェイドが微動だにしない。
ルシェイドの視界の中で、セイラスの姿が大きく歪んだ。
同時に風を切るような音が周囲を圧して響く。
平衡感覚が失せる。
立って居られない。
ぐらりと倒れこむように視界が揺れ、それを耐えるように瞼をきつく閉ざす。
だが全身に強い風を感じて目を開けると、眼下に町並みが見えた。
さっきまで廊下に居たはずだ。
混乱して辺りを見回す。
右手に高い山がそびえ、左側には町並みと、少し高台に城のようなものが見えた。
その城に、少し見覚えがあった。
ロの字型。
石造りの其処に、さっきまで居たのだと妙な確信があった。
視界で赤い色がゆれた。
城のさらに向こう、いくつかの森と草原の彼方に動く赤い色。
段々大きくなっていく。
近づいてきているのか。
それとも自分が近づいているのか。
嫌な気配がする。
ざわりと髪が逆立つほどの、不快感。
あれは排除すべきもの。
取り除かなければ役目に反する。
(役目?)
耳慣れない言葉。
世界を正しく動かす為に。
(何の、話を)
その声は耳に聞こえるものではなく、内から響いているようだった。
淡々とした、感情を感じさせないまるで機械のような。
激しくかぶりを振る。
(そんなものは知らない)
強くそう思っても声は消えない。
あれを排除するのだと。
方法も理由も告げずにただそれだけを繰り返す。
けれど、あの赤いものが自分や、自分が今居る場所にとっても危険なのだと、何故かわかった。
それでも。
(そんなもの、僕は知らない――!)
「ルシェイド!」
切り裂くような鋭い声に、ルシェイドは目を瞬いた。
心配そうな声に目を開けると、目の前にセイラスの顔があった。
「傷が痛むか。戻るか?」
「平気」
何か言いたそうだったが、部屋には戻らないでくれた。
言いたいことを、分かってくれる。
この人は。
「あ、あの」
中庭を後に歩き出したセイラスに、ルシェイドが話し掛ける。
セイラスは振り返ると、無言でルシェイドを見つめた。
その沈黙が先を促すものだと気づくのに少しかかったが、聞きたかったことを聞こうとして口を開き。
そこで凍りついたように動きを止めた。
あまりに唐突な停止の仕方に、セイラスが訝しげに眉を寄せる。
「……おい?」
不安に思ったのだろう、躊躇いがちに声をかけるが、ルシェイドが微動だにしない。
ルシェイドの視界の中で、セイラスの姿が大きく歪んだ。
同時に風を切るような音が周囲を圧して響く。
平衡感覚が失せる。
立って居られない。
ぐらりと倒れこむように視界が揺れ、それを耐えるように瞼をきつく閉ざす。
だが全身に強い風を感じて目を開けると、眼下に町並みが見えた。
さっきまで廊下に居たはずだ。
混乱して辺りを見回す。
右手に高い山がそびえ、左側には町並みと、少し高台に城のようなものが見えた。
その城に、少し見覚えがあった。
ロの字型。
石造りの其処に、さっきまで居たのだと妙な確信があった。
視界で赤い色がゆれた。
城のさらに向こう、いくつかの森と草原の彼方に動く赤い色。
段々大きくなっていく。
近づいてきているのか。
それとも自分が近づいているのか。
嫌な気配がする。
ざわりと髪が逆立つほどの、不快感。
あれは排除すべきもの。
取り除かなければ役目に反する。
(役目?)
耳慣れない言葉。
世界を正しく動かす為に。
(何の、話を)
その声は耳に聞こえるものではなく、内から響いているようだった。
淡々とした、感情を感じさせないまるで機械のような。
激しくかぶりを振る。
(そんなものは知らない)
強くそう思っても声は消えない。
あれを排除するのだと。
方法も理由も告げずにただそれだけを繰り返す。
けれど、あの赤いものが自分や、自分が今居る場所にとっても危険なのだと、何故かわかった。
それでも。
(そんなもの、僕は知らない――!)
「ルシェイド!」
切り裂くような鋭い声に、ルシェイドは目を瞬いた。
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