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2013/03/12 (Tue)
 飲み込まれそうな漆黒の瞳をしている彼女は、セイラスの隣りに立っているルシェイドを見て首を傾げる。
「セイラス、どうしたの?」
 綺麗とは言えないが、良く通りそうな声だ。
「教えてやってくれ」
 端的に言うと、リィーナにはわかったらしい。
 首をかしげたままルシェイドを見て、一つ頷く。
「そうね。よろしく。ルシェイド」
「教えてくれるの?」
 聞くと、リィーナは微笑んで頷いた。
 顔を輝かせるルシェイドに、セイラスが言う。
「だが、まだ駄目だ」
 不満そうな顔をしてセイラスを見上げると、セイラスは微かに眉を寄せてルシェイドを見ていた。
「おまえ、怪我人だろう。無理だ」
「怪我してたの?」
「重体だといって良い」
 驚くリィーナに、セイラスは平然と言った。
「じゃあ、駄目ねぇ」
「怪我なら平気だ!」
 ルシェイドが言うと、リィーナは間近まで顔を寄せていった。
「怪我を甘く見たら駄目よ。同時に、魔法もね」
 強く言われ、ルシェイドは迷った末に頷く。
 リィーナはにっこりと笑った。
「怪我が治ったらいらっしゃい。歓迎するわ」
 そう言って少年たちの方に戻って行った。
 セイラスに促され、その場から歩き出す。
「セイラス」
 呼びかけると、セイラスは意外そうな顔をしていた。
 そのまましばらく黙っているルシェイドの頭に手を乗せる。
「何だ?」
「セイラスは、剣を扱うんでしょう」
「……まあな」
「魔法は使わないの?」
「使えるが……それがどうかしたのか?」
 ルシェイドは少し考えて言った。
「怪我してると魔法は使えないの?」
「……使えないことはない」
 苦虫を噛み潰したような表情でセイラスが答える。
「じゃあ、どうして駄目なんだ?」
「おまえが素人だからだ」
 言われて、目の前が暗くなるのを感じた。
 傷の所為ではなく、何か。
『素人だから』
 駄目なのだと。
 過去。
 あの時の。
 言い知れぬ悔しさ。
 焦燥。
 何の?
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