小説用倉庫。
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扉を開くと、そこには見慣れた姿があった。
漆黒の髪。
滑らかな肢体をドレスに包んだ彼女は、入ってきたルヴィアに気付くと椅子から立ち上がった。
「セレイア。何かあったのか?」
呼びかけると、彼女は深刻な顔をして告げた。
「西の境に配置しておいた兵のところで、小規模の戦闘が2度起きたと報告が来てるわ」
「2度? この間の報告から3日経ってないぞ」
驚愕の声をあげつつ、セレイアが差し出した報告書に目を通す。
戦闘の規模、動員した兵の数、損傷程度、その他諸々が書いてある。
「……」
被害の欄を見て、表情を険しくする。
例え小規模の戦闘だったとしても、被害は大きい。
「……全兵数の、約半分か」
「治療者の数が足りないの。……この状態で更に戦闘を続けさせるなら、全滅することも考えないといけないでしょう」
「だけど、撤退するわけにはいかない」
強い意志をこめて断言する。
例え勝ち目が薄くても。
「分かってるわ。けれど、最悪の状態も常に考えておかないといけないのよ」
セレイアが諭すように首を振る。
一つ頷くと、ルヴィアは窓の外に視線を向けた。
そこには、戦争とはかけ離れたのどかな風景が広がっていた。
気持ちが悪い。
軽い吐き気と、身体の倦怠感で意識が目覚める。
胃の辺りが重い。
寝ていられなくて身を起こすと、眩暈に襲われた。
深呼吸をして掛け布をどかす。
ひんやりとした石の床に足を下ろすと、少し気分が良くなった気がした。
まだ少し痛む身体を引きずって、扉まで歩く。
前回よりは息が切れていない。
扉を開ける。
そこは部屋と同じような石でできた廊下だった。
頬に少し冷たい風が当たる。
何処から風が入ってくるのか、それは外の匂いがした。
風の吹くほうに足を向けた。
廊下の所々には、蝋燭が灯っているので躓く心配がなさそうだ。
少し歩くと、階段が見えた。
だいぶ息が切れていたのでそこで少し休む。
「……ルシェイド?」
声はいきなり振ってきたように感じた。
見上げると、明かりを背にして誰かが立っていた。
逆光で顔は見えない。
けれど声で判断はついた。
「……セイラス?」
「何をやっている。こんな所で」
怪訝そうな声には心配も含まれているようだ。
体重を感じさせない猫の様な動きで近くまで下りてくると、傍らに膝をついた。
「寝ていろと、言っただろう」
手を差し出し、抱えていこうとするのを拒否し、ルシェイドは首を振った。
「何故だ?」
問う声は感情があまり入っていない分、冷徹に響いた。
怯えたように更に首を振るルシェイドを見て、セイラスはため息をついた。
「……理由が、あるのか?」
上手い言い方が見つからなかったらしく、先程と同様の質問を繰り返す。
けれど理由が上手く説明できず、ただもう一度首を振った。
気持ちの悪さはかなり酷くなっている。
座っているだけなのに息は切れ、手足が細かく震えている。
さぞ、具合が悪く見えるだろうと何処か客観的に見ていると、頭上で靴音がした。
漆黒の髪。
滑らかな肢体をドレスに包んだ彼女は、入ってきたルヴィアに気付くと椅子から立ち上がった。
「セレイア。何かあったのか?」
呼びかけると、彼女は深刻な顔をして告げた。
「西の境に配置しておいた兵のところで、小規模の戦闘が2度起きたと報告が来てるわ」
「2度? この間の報告から3日経ってないぞ」
驚愕の声をあげつつ、セレイアが差し出した報告書に目を通す。
戦闘の規模、動員した兵の数、損傷程度、その他諸々が書いてある。
「……」
被害の欄を見て、表情を険しくする。
例え小規模の戦闘だったとしても、被害は大きい。
「……全兵数の、約半分か」
「治療者の数が足りないの。……この状態で更に戦闘を続けさせるなら、全滅することも考えないといけないでしょう」
「だけど、撤退するわけにはいかない」
強い意志をこめて断言する。
例え勝ち目が薄くても。
「分かってるわ。けれど、最悪の状態も常に考えておかないといけないのよ」
セレイアが諭すように首を振る。
一つ頷くと、ルヴィアは窓の外に視線を向けた。
そこには、戦争とはかけ離れたのどかな風景が広がっていた。
気持ちが悪い。
軽い吐き気と、身体の倦怠感で意識が目覚める。
胃の辺りが重い。
寝ていられなくて身を起こすと、眩暈に襲われた。
深呼吸をして掛け布をどかす。
ひんやりとした石の床に足を下ろすと、少し気分が良くなった気がした。
まだ少し痛む身体を引きずって、扉まで歩く。
前回よりは息が切れていない。
扉を開ける。
そこは部屋と同じような石でできた廊下だった。
頬に少し冷たい風が当たる。
何処から風が入ってくるのか、それは外の匂いがした。
風の吹くほうに足を向けた。
廊下の所々には、蝋燭が灯っているので躓く心配がなさそうだ。
少し歩くと、階段が見えた。
だいぶ息が切れていたのでそこで少し休む。
「……ルシェイド?」
声はいきなり振ってきたように感じた。
見上げると、明かりを背にして誰かが立っていた。
逆光で顔は見えない。
けれど声で判断はついた。
「……セイラス?」
「何をやっている。こんな所で」
怪訝そうな声には心配も含まれているようだ。
体重を感じさせない猫の様な動きで近くまで下りてくると、傍らに膝をついた。
「寝ていろと、言っただろう」
手を差し出し、抱えていこうとするのを拒否し、ルシェイドは首を振った。
「何故だ?」
問う声は感情があまり入っていない分、冷徹に響いた。
怯えたように更に首を振るルシェイドを見て、セイラスはため息をついた。
「……理由が、あるのか?」
上手い言い方が見つからなかったらしく、先程と同様の質問を繰り返す。
けれど理由が上手く説明できず、ただもう一度首を振った。
気持ちの悪さはかなり酷くなっている。
座っているだけなのに息は切れ、手足が細かく震えている。
さぞ、具合が悪く見えるだろうと何処か客観的に見ていると、頭上で靴音がした。
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