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2012/07/25 (Wed)
 そこまで考えたところで扉が開いた。
 セイラスは、何かの紙を持って戻ってきた。
 何も言わずに寝台の上に広げる。
 それはどうやら地図のようだった。
 真ん中と、左右に大陸があって、小さな島がいくつかあるようだ。
「見たことは?」
 返事は否。
「地理は、分かるか?」
 もう一度同じ答え。
 セイラスは特に表情を変えずに地図の一点を指した。
 それは真ん中の大陸の、中心よりやや右下の位置だった。
「此処が、今居る場所。王都ロスウェル」
「……王都?」
「今、この現界を治める王が居る都だ」
 きっぱりと断言する声は、少し誇らしげな響きがあった。
 相変わらず表情はあまり変わらなかったが。
「大陸は、昔は4つあったらしいが、今は3つだ。ユーディリス大陸と、トゥーディス大陸、ヴァイサーシアー大陸」
 左、右、真ん中の順で指差す。
 聞き覚えがあるような気がする。
 実際に行った事があるのかもしれない。
「4つ目の大陸は、何処にあったの?」
 不意に聞くと、セイラスは少し考えて、地図の上を指した。
「この辺りにあったと聞く。今はもう地図も残っていないから、名前も一部にしか伝わっていない」
 ヴァイサーシアー大陸の、上。
 地図から消された島。
「レイヴァント大陸、という名前だったそうだ」
 どくん、と一瞬心臓が大きく脈打った。
 知らない場所のはずだ。
 古い大陸だから。
 なのに何故。
 こんなにも懐かしい気がするのだろう。
「……講義はこれまでにしよう。これは此処に置いておくから、後で見るといい。今はまた暫く眠れ」
 寝台に開かれた地図を畳むと、枕もとの机に置く。
「眠くない」
「駄目だ。寝転がっているだけでも、体力は回復する。……焦らなくて良い」
 肩を押されて寝台に寝ながら、少し不満そうに地図に目をやる。
「また次に、教えてやる」
 不承不承、といった感じで素直に布団を肩まで上げ、目を閉じる。
 衣擦れの音がして、扉が開閉する音が聞えた。
 眠気は暫くして訪れた。
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