小説用倉庫。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
自らの居城に戻ったエディウスは、そのままベッドに倒れこんだ。
無理矢理魔法を解こうとしたことが、彼を疲れさせていた。
予想もしていなかった。
まさか、それが彼の魔法だとは。
訝しげに眉をひそめて、思い直す。
簡単に、彼の魔法を見ることはない。
なぜなら。
「……ルシェイド……ぼくの声が、聞えるか……?」
「呼んだ?」
呟きに答えるように、不意に虚空から少年が出現した。
ロスウェルで見た姿より幾分幼い。
エディウスは何とか顔だけを上に上げる。
「……フォリィアに、魔法をかけた……?」
聞くと、ルシェイドは驚いたようだった。
「かけてないけど、なんかあったの?」
エディウスはその答えに眉をひそめた。
調停者である彼がかけたものなら、それなりの理由があるから。
それを聞こうと思ったのに。
「……君と、同じ魔法の、気配がしたんだ……」
「僕と?」
ルシェイドは考えこむように腕を組む。
「もしかして、彼かな」
「……知っているの……?」
「うん、心当たりはあるよ。聞いてこようか?」
笑顔で言われたことに、エディウスはうなずく。
「……できれば、魔法を解いてあげたいんだけど……」
「そうだね。……無理をした? ……もう休むと良いよ」
苦笑して、ルシェイドは右手を振る。
途端眠気がエディウスを襲う。
ベッドに倒れこんだエディウスにきちんと布をかけてから、ルシェイドは虚空に姿を消した。
無理矢理魔法を解こうとしたことが、彼を疲れさせていた。
予想もしていなかった。
まさか、それが彼の魔法だとは。
訝しげに眉をひそめて、思い直す。
簡単に、彼の魔法を見ることはない。
なぜなら。
「……ルシェイド……ぼくの声が、聞えるか……?」
「呼んだ?」
呟きに答えるように、不意に虚空から少年が出現した。
ロスウェルで見た姿より幾分幼い。
エディウスは何とか顔だけを上に上げる。
「……フォリィアに、魔法をかけた……?」
聞くと、ルシェイドは驚いたようだった。
「かけてないけど、なんかあったの?」
エディウスはその答えに眉をひそめた。
調停者である彼がかけたものなら、それなりの理由があるから。
それを聞こうと思ったのに。
「……君と、同じ魔法の、気配がしたんだ……」
「僕と?」
ルシェイドは考えこむように腕を組む。
「もしかして、彼かな」
「……知っているの……?」
「うん、心当たりはあるよ。聞いてこようか?」
笑顔で言われたことに、エディウスはうなずく。
「……できれば、魔法を解いてあげたいんだけど……」
「そうだね。……無理をした? ……もう休むと良いよ」
苦笑して、ルシェイドは右手を振る。
途端眠気がエディウスを襲う。
ベッドに倒れこんだエディウスにきちんと布をかけてから、ルシェイドは虚空に姿を消した。
目が覚めた時、あれから2日が経っていた。
エディウスは腕に纏わりつく髪を払って、立ち上った。
頭がぼうっとしている。
「……ルシェイドは……」
ぽつりと呟いた時、近くに気配を感じた。
「や、目が覚めた? ……そんなに疲れるまで頑張ったとは思わなかったよ」
現れたのはルシェイドだった。
苦笑いを浮べて、エディウスの側に寄る。
「フォリィアの魔法は解いてきたよ。……大した理由じゃなかったしね」
「……」
「……もちろん一度に、じゃないから平気だよ」
口を開きかけたエディウスを遮るようにルシェイドが言う。
ふいに宙を見上げると、ルシェイドは呟いた。
「……またか」
「え……?」
「ん、こっちの話。来たばっかだけど、もう帰るよ。それじゃあね」
手を振って消える。
彼はいつも唐突だと、思う。
呼べば来るけども。
エディウスは着替えると、界を開くために部屋を出た。
エディウスは腕に纏わりつく髪を払って、立ち上った。
頭がぼうっとしている。
「……ルシェイドは……」
ぽつりと呟いた時、近くに気配を感じた。
「や、目が覚めた? ……そんなに疲れるまで頑張ったとは思わなかったよ」
現れたのはルシェイドだった。
苦笑いを浮べて、エディウスの側に寄る。
「フォリィアの魔法は解いてきたよ。……大した理由じゃなかったしね」
「……」
「……もちろん一度に、じゃないから平気だよ」
口を開きかけたエディウスを遮るようにルシェイドが言う。
ふいに宙を見上げると、ルシェイドは呟いた。
「……またか」
「え……?」
「ん、こっちの話。来たばっかだけど、もう帰るよ。それじゃあね」
手を振って消える。
彼はいつも唐突だと、思う。
呼べば来るけども。
エディウスは着替えると、界を開くために部屋を出た。
どこかの森ではなく、今度はロスウェルに直接行く。
街中では目立つので、人気の少ない裏路地に出た。
上を仰げば城が見える。
荘厳といっていいものかどうかの判別がいまいちつかなかったが、綺麗だと、思う。
青い空に映える、その白さを。
それなりに月日は感じられるけれども。
城に向かって歩いていくと、騒がしい集団と出くわした。
その中に見た覚えのある人影を見つける。
声をかけようとして、そういえばしゃべらないんだっけと思い直す。
見つかっても面倒だと、目を合わせないように通り過ぎようとする。
けれど。
不意に日が翳った。
見上げると、傍らに馬に乗ったその人がいた。
ルーク。
フォリィアの弟だ。
「こんなところで会うとは、偶然だなっ!」
「……」
やはり何も話さないでいると、ルークは少し眉間にしわを寄せた。
「何だよ、俺には何も話せないって言うのかよ」
エディウスはやはり答えず、ただ彼を見上げている。
じっと。
深く青い瞳に見つめられルークがたじろぐ。
その様子にエディウスは思わず笑みをもらすと、その場から歩きさった。
顔を赤くしたルークは馬上から陶然とエディウスを見送った。
歩き始めてしばらく。
ルークのことなど綺麗さっぱり忘れていたエディウスは、城の入り口で金色の光を見つけた。
それは髪の色が金色だからとかではなく。
身体からにじみ出るような。
神々しい、気配。
魔法を解かれた影響なのか、少し成長している。
それに伴った影響力。
思わず目を見開いていた。
綺麗な現界の王。
黄金の。
彼はこちらに気づくと、表情を変えずに走りよった。
街中では目立つので、人気の少ない裏路地に出た。
上を仰げば城が見える。
荘厳といっていいものかどうかの判別がいまいちつかなかったが、綺麗だと、思う。
青い空に映える、その白さを。
それなりに月日は感じられるけれども。
城に向かって歩いていくと、騒がしい集団と出くわした。
その中に見た覚えのある人影を見つける。
声をかけようとして、そういえばしゃべらないんだっけと思い直す。
見つかっても面倒だと、目を合わせないように通り過ぎようとする。
けれど。
不意に日が翳った。
見上げると、傍らに馬に乗ったその人がいた。
ルーク。
フォリィアの弟だ。
「こんなところで会うとは、偶然だなっ!」
「……」
やはり何も話さないでいると、ルークは少し眉間にしわを寄せた。
「何だよ、俺には何も話せないって言うのかよ」
エディウスはやはり答えず、ただ彼を見上げている。
じっと。
深く青い瞳に見つめられルークがたじろぐ。
その様子にエディウスは思わず笑みをもらすと、その場から歩きさった。
顔を赤くしたルークは馬上から陶然とエディウスを見送った。
歩き始めてしばらく。
ルークのことなど綺麗さっぱり忘れていたエディウスは、城の入り口で金色の光を見つけた。
それは髪の色が金色だからとかではなく。
身体からにじみ出るような。
神々しい、気配。
魔法を解かれた影響なのか、少し成長している。
それに伴った影響力。
思わず目を見開いていた。
綺麗な現界の王。
黄金の。
彼はこちらに気づくと、表情を変えずに走りよった。
近くまで来ると、フォリィアは耳元で囁いた。
「しばらく待て。……部屋にいけるか?」
エディウスは頷くと、城の陰に入った。
それを見届けてから、フォリィアは入り口に戻った。
陰に入ったエディウスは、転移の魔法を使う。
一瞬後には、この間訪れたフォリィアの部屋だ。
ソファに座ってしばらく待つ。
ぼうっとしていると眠気が襲う。
あんなに寝ていたのに。
うとうとしていると、肩を叩かれた。
目を開けるとフォリィアがいた。
どうやらすこし眠っていたらしい。日はすでに傾き始めていた。
「まだ疲れが取れないのか?」
「……ルシェイドに聞いたの……?」
「ああ、2日も姿を見せなかったのはその所為だとな」
溜息交じりに言われて、エディウスは困ったように首をかしげた。
「……本当に、大丈夫なのか?」
少し顔色の悪いエディウスを見て、フォリィアが問う。
「……平気……」
微笑んでフォリィアを見上げる。
「……魔法、解けたんだね……」
「ああ、あいつが右手を一振りしただけなのに」
それほどの。
魔力の持ち主。
フォリィアはエディウスに向き直ると、表情を引き締めて聞いた。
「あいつは、何者なんだ?」
「……前に、言わなかったっけ……?」
「ミッシュローアに記述があると、それだけだ」
エディウスは考え込むように俯く。
その近くに椅子を持っていき、腰をおろすと頬杖をつく。
沈黙。
時計の音が耳につく。
「しばらく待て。……部屋にいけるか?」
エディウスは頷くと、城の陰に入った。
それを見届けてから、フォリィアは入り口に戻った。
陰に入ったエディウスは、転移の魔法を使う。
一瞬後には、この間訪れたフォリィアの部屋だ。
ソファに座ってしばらく待つ。
ぼうっとしていると眠気が襲う。
あんなに寝ていたのに。
うとうとしていると、肩を叩かれた。
目を開けるとフォリィアがいた。
どうやらすこし眠っていたらしい。日はすでに傾き始めていた。
「まだ疲れが取れないのか?」
「……ルシェイドに聞いたの……?」
「ああ、2日も姿を見せなかったのはその所為だとな」
溜息交じりに言われて、エディウスは困ったように首をかしげた。
「……本当に、大丈夫なのか?」
少し顔色の悪いエディウスを見て、フォリィアが問う。
「……平気……」
微笑んでフォリィアを見上げる。
「……魔法、解けたんだね……」
「ああ、あいつが右手を一振りしただけなのに」
それほどの。
魔力の持ち主。
フォリィアはエディウスに向き直ると、表情を引き締めて聞いた。
「あいつは、何者なんだ?」
「……前に、言わなかったっけ……?」
「ミッシュローアに記述があると、それだけだ」
エディウスは考え込むように俯く。
その近くに椅子を持っていき、腰をおろすと頬杖をつく。
沈黙。
時計の音が耳につく。
「……運命の調停者……」
ポツリと、エディウスが呟く。
ともすれば聞き逃しそうな声音で。
続く言葉を待っていると、ゆっくりと話し始めた。
「……金色の瞳って、見たことある……?」
否とフォリィアが答えると、エディウスは少し目を伏せた。
「……それは、……彼にのみ許された、色だから……」
ルシェイドの。
役目の者にのみ。
「……なぜ?」
「……ぼくも、詳しくは、知らないんだけど……。本当に、この世界では、彼だけなんだって……」
「フォリィア様―!」
のんきな声を聞いて、フォリィアはがっくりと首を落とした。
「あいつは……またか」
うんざりしたように、フォリィアが立ち上がる。
扉を開け放つと同時に声を出す。
「今度は何の用か!!」
「あ、フォリィア様、サファが呼んでます、急いでくださいって」
「用件は」
いらいらと訊ねると、ツェリーシュは首をかしげた。
「えーと、聞いてません」
「今度からは聞いてこい」
「はーい。第2応接室だそうです」
それだけ言うと、彼は走って行ってしまった。
どうやら忙しいらしい。
溜息をついて、フォリィアはエディウスを振り返った。
「すまない。どうやら急ぎのようだ」
「……そうだね……」
と、遠くに行ったはずのツェリーシュが戻ってきた。
「すいません、言い忘れました。エディウス様もよければどうぞということです」
「何でエディウスの事を知ってるんだ」
「さあ、何ででしょう」
首をかしげて、エディウスが聞く。
「ぼくも、……行ったほうが、いいの……?」
溜息をつくと、しばらく逡巡してから頷いた。
「行ったほうがいいだろう。向こうが知っているのだからな」
ポツリと、エディウスが呟く。
ともすれば聞き逃しそうな声音で。
続く言葉を待っていると、ゆっくりと話し始めた。
「……金色の瞳って、見たことある……?」
否とフォリィアが答えると、エディウスは少し目を伏せた。
「……それは、……彼にのみ許された、色だから……」
ルシェイドの。
役目の者にのみ。
「……なぜ?」
「……ぼくも、詳しくは、知らないんだけど……。本当に、この世界では、彼だけなんだって……」
「フォリィア様―!」
のんきな声を聞いて、フォリィアはがっくりと首を落とした。
「あいつは……またか」
うんざりしたように、フォリィアが立ち上がる。
扉を開け放つと同時に声を出す。
「今度は何の用か!!」
「あ、フォリィア様、サファが呼んでます、急いでくださいって」
「用件は」
いらいらと訊ねると、ツェリーシュは首をかしげた。
「えーと、聞いてません」
「今度からは聞いてこい」
「はーい。第2応接室だそうです」
それだけ言うと、彼は走って行ってしまった。
どうやら忙しいらしい。
溜息をついて、フォリィアはエディウスを振り返った。
「すまない。どうやら急ぎのようだ」
「……そうだね……」
と、遠くに行ったはずのツェリーシュが戻ってきた。
「すいません、言い忘れました。エディウス様もよければどうぞということです」
「何でエディウスの事を知ってるんだ」
「さあ、何ででしょう」
首をかしげて、エディウスが聞く。
「ぼくも、……行ったほうが、いいの……?」
溜息をつくと、しばらく逡巡してから頷いた。
「行ったほうがいいだろう。向こうが知っているのだからな」
倉庫
管理者:西(逆凪)、または沖縞
文章の無断転載及び複製は禁止。
文章の無断転載及び複製は禁止。
カレンダー
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
カテゴリー
- ご挨拶。(3)
- [長編] Reparationem damni(12)
- [長編] Nocte repono rubei(72)
- [長編] Sinister ocularis vulnus (30)
- [長編] Lux regnum(61)
- [長編] Pirata insula(47)
- [長編] Purpura discipulus(43)
- [長編] Quinque lapidem(29)
- [短編] Canticum Dei(3)
- [短編] Candidus Penna(9)
- [短編] Dignitate viveret,Mori dignitas (11)
- [短編] Praefiscine(3)