小説用倉庫。
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完全に遠ざかったのを見計らって、フォリィアが口を開く。
「で、さっきのは何だったんだ?」
「……魔法を、使ってみたんだけど……これ、料理……?」
ツェリーシュが運んできたものを指差して、エディウスが問う。
「そうだが、見たことがないのか?」
首をかしげてエディウスは答えない。
それを見たフォリィアは彼に近寄ると、顔をこちらに向かせた。
「質問には答えろ」
「え、と……この料理は見たことないけど……何の薬品使っているの……?」
「薬品?」
「……魔法に、近いけど……。まがい物の気配もする……効力は……さっきの魔法と似てる、かな……」
考えこむように答える。
「魔法……?」
怪訝そうな顔で、フォリィアは料理を見る。
いつもと変わらないそれを、手に取ってみる。
「成長抑止……っていえばいいのかな……」
「つまり、私が成長しないのはこの料理のせいだと、そう言いたいわけか?」
「……そう、だね……。でも、これだけじゃ効果は薄いと、思うよ……。……長い間、使われているみたいだし……」
フォリィアはうつむいて考えこむ。
誰かがやったのだとしても。
胸が痛む。
「……でもこれ、どこで手に入れたのかな……」
「裏通りにでも売ってるんだろう」
吐き捨てるように言われたことに、エディウスは首をかしげる。
近寄り、頭を撫でた。
驚いたようにフォリィアがエディウスを見上げる。
彼は感情のあまり伺えない表情で見ていた。
「……私はもう子供ではないんだが……」
苦笑しつつも、フォリィアはその手を払わなかった。
「で、さっきのは何だったんだ?」
「……魔法を、使ってみたんだけど……これ、料理……?」
ツェリーシュが運んできたものを指差して、エディウスが問う。
「そうだが、見たことがないのか?」
首をかしげてエディウスは答えない。
それを見たフォリィアは彼に近寄ると、顔をこちらに向かせた。
「質問には答えろ」
「え、と……この料理は見たことないけど……何の薬品使っているの……?」
「薬品?」
「……魔法に、近いけど……。まがい物の気配もする……効力は……さっきの魔法と似てる、かな……」
考えこむように答える。
「魔法……?」
怪訝そうな顔で、フォリィアは料理を見る。
いつもと変わらないそれを、手に取ってみる。
「成長抑止……っていえばいいのかな……」
「つまり、私が成長しないのはこの料理のせいだと、そう言いたいわけか?」
「……そう、だね……。でも、これだけじゃ効果は薄いと、思うよ……。……長い間、使われているみたいだし……」
フォリィアはうつむいて考えこむ。
誰かがやったのだとしても。
胸が痛む。
「……でもこれ、どこで手に入れたのかな……」
「裏通りにでも売ってるんだろう」
吐き捨てるように言われたことに、エディウスは首をかしげる。
近寄り、頭を撫でた。
驚いたようにフォリィアがエディウスを見上げる。
彼は感情のあまり伺えない表情で見ていた。
「……私はもう子供ではないんだが……」
苦笑しつつも、フォリィアはその手を払わなかった。
表情を改めて、彼は扉に視線を向けた。
「ツェリーシュ! そこにいるか?」
「はいー! なんですかー?」
少し遠くからバタバタと足音が聞えてきた。
扉の前で止まると、勢いよく開いた。
息を少し切らしてツェリーシュが入ってくる。
「おまえ、この料理誰が作ったか知ってるか?」
「えーと、確かベルナさんが作ったと思いますよ」
「……ベルナか……」
「どうかしたんですか?」
腕を組んで下を向いたフォリィアに、怪訝そうにツェリーシュが問う。
そんな彼を一瞥して、溜息を吐く。
「ツェリーシュ、この料理は誰に渡された?」
「ミナヴァスさんですけど……なんか変な味がしたとか、ですか?」
「……」
「何か答えてくださいよぅ」
「……いや、知らないなら、いいんだ……」
何だか無性に疲れた気がして、フォリィアが力なく呟く。
「この料理が何かしたんですか?」
「料理が何かするわけないだろ。……そうじゃないから」
なおも釈然としない感じでその場に立ち尽くす。
「……ベルナ……って?」
聞き慣れない名前を聞いて、エディウスが問いかける。
「この城の料理長さんです!」
口を開いたフォリィアを遮るように、ツェリーシュが勢いよく答えた。
「ちなみにミナヴァスさんはルーク様の従者です」
「それがなんで私の料理を持ってくるんだ?」
「……そう言われれば、変ですねぇ」
呑気に言われて、フォリィアは顔を覆った。
「……じゃあ、これ食べれないんですか?」
「食べられないことはないが……どうだろうな」
「それじゃあ、ベルナさんに言って作って来てもらいますね!」
「え、おい……!」
言い終わらないうちに、ツェリーシュは出ていってしまった。
「……人の、話をあまり、聞かない人だね……」
複雑な顔をしてフォリィアは答えなかった。
「ツェリーシュ! そこにいるか?」
「はいー! なんですかー?」
少し遠くからバタバタと足音が聞えてきた。
扉の前で止まると、勢いよく開いた。
息を少し切らしてツェリーシュが入ってくる。
「おまえ、この料理誰が作ったか知ってるか?」
「えーと、確かベルナさんが作ったと思いますよ」
「……ベルナか……」
「どうかしたんですか?」
腕を組んで下を向いたフォリィアに、怪訝そうにツェリーシュが問う。
そんな彼を一瞥して、溜息を吐く。
「ツェリーシュ、この料理は誰に渡された?」
「ミナヴァスさんですけど……なんか変な味がしたとか、ですか?」
「……」
「何か答えてくださいよぅ」
「……いや、知らないなら、いいんだ……」
何だか無性に疲れた気がして、フォリィアが力なく呟く。
「この料理が何かしたんですか?」
「料理が何かするわけないだろ。……そうじゃないから」
なおも釈然としない感じでその場に立ち尽くす。
「……ベルナ……って?」
聞き慣れない名前を聞いて、エディウスが問いかける。
「この城の料理長さんです!」
口を開いたフォリィアを遮るように、ツェリーシュが勢いよく答えた。
「ちなみにミナヴァスさんはルーク様の従者です」
「それがなんで私の料理を持ってくるんだ?」
「……そう言われれば、変ですねぇ」
呑気に言われて、フォリィアは顔を覆った。
「……じゃあ、これ食べれないんですか?」
「食べられないことはないが……どうだろうな」
「それじゃあ、ベルナさんに言って作って来てもらいますね!」
「え、おい……!」
言い終わらないうちに、ツェリーシュは出ていってしまった。
「……人の、話をあまり、聞かない人だね……」
複雑な顔をしてフォリィアは答えなかった。
「入りますよー」
しばらくしてツェリーシュが戻ってきた。
両手にいくつも皿を持っている。なんだか危なっかしい。
フォリィアは近寄ると、皿をいくつか受け取って机に置いた。
「そんなにいっぺんに持ってくると危ないだろう」
しかめ面をしてたしなめるが、ツェリーシュが悪びれずに笑った。
「平気ですって」
エディウスも少し皿を受け取る。
机にそれらを並べて、フォリィアは溜息をついた。
「あ、大丈夫ですよ。これ、ベルナさんから直接もらってきましたから」
「そうじゃない。……わざわざ作らせたのか?」
「訳を話したら作ってくれました」
彼はこともなげに言った。
「……あとで、お礼言わなきゃね……」
「平気だと思いますよー? ていうか怒ってました」
怪訝そうにエディウスとフォリィアが眉を寄せる。
「料理に細工したかもって言ったら、なんてことをって言って……」
片手を顔に当てて、フォリィアが長い溜息をつく。
「正直に話したのか?」
「はい。あ、料理冷めないうちに食べちゃってください」
そういい残してツェリーシュは部屋を出て行った。
「……慌しいね……」
「そうか……?」
複雑な顔をしてフォリィアが答える。
料理に目をやり、エディウスに座るよう促した。
「とりあえず、食べてしまおう」
「……せっかく、作ってもらったんだしね……」
淡く微笑むと、フォリィアも苦笑した。
しばらくしてツェリーシュが戻ってきた。
両手にいくつも皿を持っている。なんだか危なっかしい。
フォリィアは近寄ると、皿をいくつか受け取って机に置いた。
「そんなにいっぺんに持ってくると危ないだろう」
しかめ面をしてたしなめるが、ツェリーシュが悪びれずに笑った。
「平気ですって」
エディウスも少し皿を受け取る。
机にそれらを並べて、フォリィアは溜息をついた。
「あ、大丈夫ですよ。これ、ベルナさんから直接もらってきましたから」
「そうじゃない。……わざわざ作らせたのか?」
「訳を話したら作ってくれました」
彼はこともなげに言った。
「……あとで、お礼言わなきゃね……」
「平気だと思いますよー? ていうか怒ってました」
怪訝そうにエディウスとフォリィアが眉を寄せる。
「料理に細工したかもって言ったら、なんてことをって言って……」
片手を顔に当てて、フォリィアが長い溜息をつく。
「正直に話したのか?」
「はい。あ、料理冷めないうちに食べちゃってください」
そういい残してツェリーシュは部屋を出て行った。
「……慌しいね……」
「そうか……?」
複雑な顔をしてフォリィアが答える。
料理に目をやり、エディウスに座るよう促した。
「とりあえず、食べてしまおう」
「……せっかく、作ってもらったんだしね……」
淡く微笑むと、フォリィアも苦笑した。
食べ終わり、片付けてもらった後に、フォリィアはエディウスに問いただした。
「で、その魔法まがいのものは解けるのか?」
「……解くの?」
「当たり前だ。このままの姿では継承権の剥奪ということになりかねん」
憤慨した様子で言ってくる彼を見て、エディウスは視線を落とした。
「……でも一気に解くと、それは目立つよね……」
「ではどうすればいい」
「……とりあえず、全部解いてみる……?」
少し考えた後、フォリィアはうなずいた。
それを見て、エディウスがソファから立ちあがる。
「……そこに、立って」
言われたままフォリィアが立つと、エディウスは彼の前に立った。
長い、詠唱を唱える。
ゆっくりと、それはフォリィアの身体に染み込む。
淡い光がエディウスを包み、思わず見とれてしまう。
長いような短いような時間が流れて、不意にエディウスの声が止まった。
がくりと、フォリィアはその場に膝を突く。
詠唱の終わりが唐突すぎたことに疑問を感じ、フォリィアはエディウスを見上げた。
彼は蒼白な顔をしていた。
病的なまでの白さで、虚空を凝視している。
「エディウス……?」
声をかけると一瞬視線が揺れて、彼は屑折れた。
「おい!」
驚いて、何とか抱き留める。
「で、その魔法まがいのものは解けるのか?」
「……解くの?」
「当たり前だ。このままの姿では継承権の剥奪ということになりかねん」
憤慨した様子で言ってくる彼を見て、エディウスは視線を落とした。
「……でも一気に解くと、それは目立つよね……」
「ではどうすればいい」
「……とりあえず、全部解いてみる……?」
少し考えた後、フォリィアはうなずいた。
それを見て、エディウスがソファから立ちあがる。
「……そこに、立って」
言われたままフォリィアが立つと、エディウスは彼の前に立った。
長い、詠唱を唱える。
ゆっくりと、それはフォリィアの身体に染み込む。
淡い光がエディウスを包み、思わず見とれてしまう。
長いような短いような時間が流れて、不意にエディウスの声が止まった。
がくりと、フォリィアはその場に膝を突く。
詠唱の終わりが唐突すぎたことに疑問を感じ、フォリィアはエディウスを見上げた。
彼は蒼白な顔をしていた。
病的なまでの白さで、虚空を凝視している。
「エディウス……?」
声をかけると一瞬視線が揺れて、彼は屑折れた。
「おい!」
驚いて、何とか抱き留める。
抱き留めた時のその軽さに驚き、自分の腕が長くなっていることに更に驚く。
「何だ……?」
とりあえず寝室にエディウスを運ぼうと立ちあがる。
その視線にも差があった。
いつもより高い。
寝室の入口の近くにある姿見をみる。
そこに映っていたのはいつもの子供の姿ではなかった。
実感が湧かなかったので、エディウスをベッドに横たえ、その近くに腰を下ろす。
蒼白なエディウスの顔を見て、フォリィアは溜息を吐いた。
これが、成長した、身体か。
何とも信じられず、手を開いたり握ったりしてみた。
拭えない違和感。
苦しそうなエディウスの声に我に返る。
「大丈夫か」
起き上がろうとして、また倒れこむ。
「……ぁ……ッ……!」
ゆっくりと呼吸をくりかえすが、顔を伏せたままだ。
「おい……」
エディウスは苦しげに眉をひそめてフォリィアを見る。
「……魔、法の、……駄目だ……ぼくじゃ、その魔法は……完全に、解けない……」
切れ切れに何とか言う。
フォリィアはどうしていいかわからずに差し出そうとした手を戻した。
「……ごめん、時間を、くれないかな……解ける人を、……連れてくるから……」
「……それはいいが、この姿はもう小さくならないのか?」
突然大きくなっていれば、まわりの人間に何をいわれるか。
「……右手を……」
言われるままに右手を差し出す。
エディウスは低く一言、呟いた。
とたんに戻ってくるいつも通りの感覚。
視線も低くなったのを感じた。
「……それじゃあ、また、来るから……」
言い終えると同時にその姿は霞のように消えた。
何か言おうと口を開きかけ、もうその気配も完全になくなったのを悟る。
眉をひそめて溜息を吐き、彼は髪をかきあげた。
「何だ……?」
とりあえず寝室にエディウスを運ぼうと立ちあがる。
その視線にも差があった。
いつもより高い。
寝室の入口の近くにある姿見をみる。
そこに映っていたのはいつもの子供の姿ではなかった。
実感が湧かなかったので、エディウスをベッドに横たえ、その近くに腰を下ろす。
蒼白なエディウスの顔を見て、フォリィアは溜息を吐いた。
これが、成長した、身体か。
何とも信じられず、手を開いたり握ったりしてみた。
拭えない違和感。
苦しそうなエディウスの声に我に返る。
「大丈夫か」
起き上がろうとして、また倒れこむ。
「……ぁ……ッ……!」
ゆっくりと呼吸をくりかえすが、顔を伏せたままだ。
「おい……」
エディウスは苦しげに眉をひそめてフォリィアを見る。
「……魔、法の、……駄目だ……ぼくじゃ、その魔法は……完全に、解けない……」
切れ切れに何とか言う。
フォリィアはどうしていいかわからずに差し出そうとした手を戻した。
「……ごめん、時間を、くれないかな……解ける人を、……連れてくるから……」
「……それはいいが、この姿はもう小さくならないのか?」
突然大きくなっていれば、まわりの人間に何をいわれるか。
「……右手を……」
言われるままに右手を差し出す。
エディウスは低く一言、呟いた。
とたんに戻ってくるいつも通りの感覚。
視線も低くなったのを感じた。
「……それじゃあ、また、来るから……」
言い終えると同時にその姿は霞のように消えた。
何か言おうと口を開きかけ、もうその気配も完全になくなったのを悟る。
眉をひそめて溜息を吐き、彼は髪をかきあげた。
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管理者:西(逆凪)、または沖縞
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