小説用倉庫。
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城門までの道を歩きながら、ツェリーシュに聞いてみる。
「ところで、何故私に頼みなんだ?」
「さぁ……。とにかく名指しでしたから、知り合いかなぁと」
「街にそんな知り合いはいないぞ。それにあまり外に出歩けないではないか」
「そう言われれば、変ですねぇ」
「言われる前に気づけ」
げんなりとしながら、フォリィアは拭えない胸騒ぎがしていた。
何かがありそうな。
そんな。
「つきましたよ。どうしたんです?」
ツェリーシュの声にはっとして顔を上げると、城門のところにいた女性が小走りに走ってくるところだった。
「フォリィア様!」
聞いたことのない声。
見たことのない顔。
「それじゃ、失礼しますね」
城の中から呼ぶ声に返事をして、ツェリーシュはそちらに駆けて行ってしまう。
注意を女性に向けておいて、彼が城の中に入ったことを確かめる。
「頼みが、あるんです」
「その前に、君の名は?」
少し顔を伏せて、女性が言葉をつむぐ。
暗く、微笑み。
力をこめた声で。
「カーシュ・ラナーリン、と申します……!」
その女性が名を言ったとたん、周りを暴風が襲った。
思わず顔をかばう。
けれど。
その風は、フォリィアに微風程度の力しか与えなかった。
周りは木の葉や石などが飛び交っているのに。
疑問に思ったが、女性の体に変化が起きはじめているのに気づいて息を呑む。
バチバチと、電気を流したような。
火花が散る。
瞬間、ある人の顔が浮かぶ。
(何かあれば……)
無意識に、彼は叫んでいた。
「ディリク!」
彼が現れるのと、女性の体から光が放たれたのは、ほとんど同時だった。
腕で顔を庇い目を瞑ったフォリィアは、それ以上何も起こらないのを感じると目を開けた。
目の前には倒れた女性と、その傍らに片膝をつくディリクの姿がある。
「……何が……」
「魔法がかけられていたようだ。名前を言うと同時に風の魔法を。それで効かない場合は……」
そこで言いよどむ。
「何……」
「体が四散する、そういう、魔法だ」
苦々しげにディリクが吐き捨てる。
ディリクを呼ばなかったことを想像して、フォリィアは少し顔色を悪くする。
「すまない……」
「いや、そういう契約だ。約定を違えることはできん」
彼は女性の額に手を当てると、何かつぶやいた。
フォリィアが聞き返すが、彼はこちらを見ただけで何も言わずに立ち上がった。
「記憶を消しておいた。……もとより自身の意思ではないようだ」
「そうか……ありがとう」
言った瞬間にはもう彼は消えていた。
目を丸くしてから、苦笑して周りを見回す。
風が吹き荒れたため、周りはかなり汚くなっていた。
「誰か! 衛兵!」
叫ぶと、城の中から2、3人走ってきた。
「彼女を城の外へ。それから清掃員に仕事を」
「わかりました」
口々にそう言うと、彼らは与えられた仕事をこなすために走って行った。
それを見届けてから城の中に入る。
「ところで、何故私に頼みなんだ?」
「さぁ……。とにかく名指しでしたから、知り合いかなぁと」
「街にそんな知り合いはいないぞ。それにあまり外に出歩けないではないか」
「そう言われれば、変ですねぇ」
「言われる前に気づけ」
げんなりとしながら、フォリィアは拭えない胸騒ぎがしていた。
何かがありそうな。
そんな。
「つきましたよ。どうしたんです?」
ツェリーシュの声にはっとして顔を上げると、城門のところにいた女性が小走りに走ってくるところだった。
「フォリィア様!」
聞いたことのない声。
見たことのない顔。
「それじゃ、失礼しますね」
城の中から呼ぶ声に返事をして、ツェリーシュはそちらに駆けて行ってしまう。
注意を女性に向けておいて、彼が城の中に入ったことを確かめる。
「頼みが、あるんです」
「その前に、君の名は?」
少し顔を伏せて、女性が言葉をつむぐ。
暗く、微笑み。
力をこめた声で。
「カーシュ・ラナーリン、と申します……!」
その女性が名を言ったとたん、周りを暴風が襲った。
思わず顔をかばう。
けれど。
その風は、フォリィアに微風程度の力しか与えなかった。
周りは木の葉や石などが飛び交っているのに。
疑問に思ったが、女性の体に変化が起きはじめているのに気づいて息を呑む。
バチバチと、電気を流したような。
火花が散る。
瞬間、ある人の顔が浮かぶ。
(何かあれば……)
無意識に、彼は叫んでいた。
「ディリク!」
彼が現れるのと、女性の体から光が放たれたのは、ほとんど同時だった。
腕で顔を庇い目を瞑ったフォリィアは、それ以上何も起こらないのを感じると目を開けた。
目の前には倒れた女性と、その傍らに片膝をつくディリクの姿がある。
「……何が……」
「魔法がかけられていたようだ。名前を言うと同時に風の魔法を。それで効かない場合は……」
そこで言いよどむ。
「何……」
「体が四散する、そういう、魔法だ」
苦々しげにディリクが吐き捨てる。
ディリクを呼ばなかったことを想像して、フォリィアは少し顔色を悪くする。
「すまない……」
「いや、そういう契約だ。約定を違えることはできん」
彼は女性の額に手を当てると、何かつぶやいた。
フォリィアが聞き返すが、彼はこちらを見ただけで何も言わずに立ち上がった。
「記憶を消しておいた。……もとより自身の意思ではないようだ」
「そうか……ありがとう」
言った瞬間にはもう彼は消えていた。
目を丸くしてから、苦笑して周りを見回す。
風が吹き荒れたため、周りはかなり汚くなっていた。
「誰か! 衛兵!」
叫ぶと、城の中から2、3人走ってきた。
「彼女を城の外へ。それから清掃員に仕事を」
「わかりました」
口々にそう言うと、彼らは与えられた仕事をこなすために走って行った。
それを見届けてから城の中に入る。
自分の部屋に入ると、エディウスが窓際に立っていた。
ぼんやりと、窓の外を見ている。
近寄ると、こちらに気づいたのかゆっくりと振り向いた。
「何か見えるか?」
「……空が……」
赤くなり始めた空を、フォリィアはいぶかしげに見た。
普段と変わらない。
空なのに。
「何か、面白いのか?」
「……神界には……夜が、ないから……」
「じゃあ、いつも昼なのか?」
「……昼というより、朝に、近いよ……」
片眉を上げてフォリィアは難しい顔をする。
「いまいちわからないな」
そう言うと、エディウスはふわりと微笑んで、また窓の外に視線を移した。
「……神界に、夜がないように……魔界には、昼がないと……聞いたけど……」
「じゃあ、いつも夜なのか? それは見通しが悪いだろう」
「……夜と、はっきり区別はできないみたい……薄暗いだけだと……言うけど、僕は行ったことがないから……」
「それも、ルシェイドが言っていたのか?」
窓の外に視線をやったまま、エディウスがうなずく。
フォリィアは窓の近くを離れて、ソファに座った。
「とりあえず、今日はどうするんだ? ここに泊まっていくか?」
驚いたようにエディウスがこちらに視線を向ける。
「部屋はあまってるから、遠慮はすることないぞ」
「でも……」
「……扉を作るのも疲れると聞いた。大丈夫なのか?」
確かに疲れていたが、エディウスはあいまいに頷いた。
その様子を見てため息をつき、立ち上がってエディウスの腕をつかんだ。
そのまま部屋の右側にある扉を開くと中に連れて行った。
「ここを自由に使って良い。私は隣にいる」
「……フォリィア……」
「そんな顔色で大丈夫だといってみせたところで説得力がないぞ」
厳しい顔で切り返されて、エディウスは言葉に詰まる。
ふと表情を緩めると、扉に向かった。
「休めるときに休んでおけよ」
残されたエディウスは困ったように扉を見ている。
フォリィアの足音が扉から遠ざかっていくのが聞こえた。
ぼんやりと、窓の外を見ている。
近寄ると、こちらに気づいたのかゆっくりと振り向いた。
「何か見えるか?」
「……空が……」
赤くなり始めた空を、フォリィアはいぶかしげに見た。
普段と変わらない。
空なのに。
「何か、面白いのか?」
「……神界には……夜が、ないから……」
「じゃあ、いつも昼なのか?」
「……昼というより、朝に、近いよ……」
片眉を上げてフォリィアは難しい顔をする。
「いまいちわからないな」
そう言うと、エディウスはふわりと微笑んで、また窓の外に視線を移した。
「……神界に、夜がないように……魔界には、昼がないと……聞いたけど……」
「じゃあ、いつも夜なのか? それは見通しが悪いだろう」
「……夜と、はっきり区別はできないみたい……薄暗いだけだと……言うけど、僕は行ったことがないから……」
「それも、ルシェイドが言っていたのか?」
窓の外に視線をやったまま、エディウスがうなずく。
フォリィアは窓の近くを離れて、ソファに座った。
「とりあえず、今日はどうするんだ? ここに泊まっていくか?」
驚いたようにエディウスがこちらに視線を向ける。
「部屋はあまってるから、遠慮はすることないぞ」
「でも……」
「……扉を作るのも疲れると聞いた。大丈夫なのか?」
確かに疲れていたが、エディウスはあいまいに頷いた。
その様子を見てため息をつき、立ち上がってエディウスの腕をつかんだ。
そのまま部屋の右側にある扉を開くと中に連れて行った。
「ここを自由に使って良い。私は隣にいる」
「……フォリィア……」
「そんな顔色で大丈夫だといってみせたところで説得力がないぞ」
厳しい顔で切り返されて、エディウスは言葉に詰まる。
ふと表情を緩めると、扉に向かった。
「休めるときに休んでおけよ」
残されたエディウスは困ったように扉を見ている。
フォリィアの足音が扉から遠ざかっていくのが聞こえた。
「どういうことだ!」
「何がだ?」
声を荒げる人物に向かって、彼は淡々と答える。
質素な机をはさんで向かい合って、まだ5分とたっていない。
灯りは机に乗ったろうそくのみ。お互いの顔が微妙にしか見えない光の量だ。
それに片方は顔を布で覆っていて、どのみちはっきりとは見えない。
布で覆っているほうがまた叫んだ。
「この界隈では一番の腕利きだって聞いたぞ! それでなんで魔法が解けてるんだ!」
「……持続的に使えと、言っておいたはずだが?」
長く伸ばした前髪に手を当て、ため息とともにつぶやく。
「使っていたさ!」
「私より力の強い奴がいたんだろう」
「絶対大丈夫なんだろうが!」
声を荒げる人物を見る目が細まった。
背筋がひやりとするような剣呑な眼差しで見られて、乗り出していた体を心持ち引く。
「この世に絶対などという物事は存在しない」
「くそっ! わかったよ! もうおまえには頼まない!」
「どうぞ、ご自由に」
しれっとした顔で、窓の外を見る。
それを見て勢いよく立ち上がると、机を思い切り叩いた。
窓の外を見ていた顔を、しかめながら戻す。
「机を壊すなよ」
「他に、強力な魔法はないのか!」
「頼まないんじゃないのか」
「うるさいな! どうなんだよ!」
少し目を伏せて、布で覆われた顔から目をそらす。
「無理だ。私よりも強い魔力の持ち主が彼に味方をしたからな。太刀打ちできん」
「何ィ!」
「それより、今日城に行った女はおまえの差し金か?」
「何で、そんなこと知ってやがる」
彼は答えず、視線を扉のほうに向けた。
「さぁ、もう用はないだろう。私はこの件から手を引かせてもらう」
布の間から見える薄い緑の目を怒りに染めて、彼は扉を乱暴に開けて出て行った。
「まったく、始末に悪い。あれで本当に兄弟なのか」
つぶやいてから閉められた扉を見て彼、ディリクはため息をついた。
「……本物の『金の瞳』相手に勝てる奴なんて、この世界に存在しないのに」
「何がだ?」
声を荒げる人物に向かって、彼は淡々と答える。
質素な机をはさんで向かい合って、まだ5分とたっていない。
灯りは机に乗ったろうそくのみ。お互いの顔が微妙にしか見えない光の量だ。
それに片方は顔を布で覆っていて、どのみちはっきりとは見えない。
布で覆っているほうがまた叫んだ。
「この界隈では一番の腕利きだって聞いたぞ! それでなんで魔法が解けてるんだ!」
「……持続的に使えと、言っておいたはずだが?」
長く伸ばした前髪に手を当て、ため息とともにつぶやく。
「使っていたさ!」
「私より力の強い奴がいたんだろう」
「絶対大丈夫なんだろうが!」
声を荒げる人物を見る目が細まった。
背筋がひやりとするような剣呑な眼差しで見られて、乗り出していた体を心持ち引く。
「この世に絶対などという物事は存在しない」
「くそっ! わかったよ! もうおまえには頼まない!」
「どうぞ、ご自由に」
しれっとした顔で、窓の外を見る。
それを見て勢いよく立ち上がると、机を思い切り叩いた。
窓の外を見ていた顔を、しかめながら戻す。
「机を壊すなよ」
「他に、強力な魔法はないのか!」
「頼まないんじゃないのか」
「うるさいな! どうなんだよ!」
少し目を伏せて、布で覆われた顔から目をそらす。
「無理だ。私よりも強い魔力の持ち主が彼に味方をしたからな。太刀打ちできん」
「何ィ!」
「それより、今日城に行った女はおまえの差し金か?」
「何で、そんなこと知ってやがる」
彼は答えず、視線を扉のほうに向けた。
「さぁ、もう用はないだろう。私はこの件から手を引かせてもらう」
布の間から見える薄い緑の目を怒りに染めて、彼は扉を乱暴に開けて出て行った。
「まったく、始末に悪い。あれで本当に兄弟なのか」
つぶやいてから閉められた扉を見て彼、ディリクはため息をついた。
「……本物の『金の瞳』相手に勝てる奴なんて、この世界に存在しないのに」
瞼の裏にきらきらした光が踊る。
薄く目を開ける。見慣れない天井。
そして。
明るい朝の光。
エディウスは身体を起こして、ようやくそこがフォリィアの寝室だということに気づいた。
慌てて起きて、途中躓きながらも執務室への扉を開ける。
ソファに座ったまま、フォリィアは目を閉じていた。
寝ているのか、近づいても動かない。
ソファの前の机には、山積みにされた書類の束が乗っている。
全て処理済だ。
書類の山からフォリィアに視線を移す。
整った顔立ちは、昨日よりも少しだけ大人びてきていた。まだ魔法が完全に解けていないのだろう。
エディウスは寝室からかけ布を持ってくると、フォリィアの上にかけた。
起きるかと思ったが、身じろぎしただけで目を開かなかった。
エディウスは向かいのソファに座ると、背もたれに身を預けてじっと顔を見つめる。
年若い現界の王。
けれど決して、彼は自分より長く生きることはないのだ。
神族の寿命は人族の約5倍。
エディウスは寿命の半分ほどしかまだ生きていない。
なのに。
そのままじっと見ていると、フォリィアが薄く目を開いた。
「……どうした?」
瞬きをしながら、視線を向けてくる。
「……え……」
「何か、悲しいことでも?」
エディウスはわずかに目を見開いた。顔に出ていたとは思わなかったからだ。
何でわかったんだろうと思いつつ、フォリィアの顔を見る。
フォリィアは目をこすって書類の束を無造作に隅に置く。
そのうちのいくつかの書類を持って扉を開けると、彼は声を少し大きくして言った。
「ツェリーシュ! いるか?」
「はぁい~。おはようございます……」
「……寝ぼけてるのか? これを届けてくれ」
「大丈夫ですぅ。わかりました……」
渡された書類を手に戻ろうとするツェリーシュに向かって、フォリィアが声をかける。
「ああ、朝食はふたり分にしてくれ」
「エディウス様の分ですね。わかりましたぁ」
ツェリーシュの眠そうな声に、少し不安げな顔をしてフォリィアが戻ってくる。
薄く目を開ける。見慣れない天井。
そして。
明るい朝の光。
エディウスは身体を起こして、ようやくそこがフォリィアの寝室だということに気づいた。
慌てて起きて、途中躓きながらも執務室への扉を開ける。
ソファに座ったまま、フォリィアは目を閉じていた。
寝ているのか、近づいても動かない。
ソファの前の机には、山積みにされた書類の束が乗っている。
全て処理済だ。
書類の山からフォリィアに視線を移す。
整った顔立ちは、昨日よりも少しだけ大人びてきていた。まだ魔法が完全に解けていないのだろう。
エディウスは寝室からかけ布を持ってくると、フォリィアの上にかけた。
起きるかと思ったが、身じろぎしただけで目を開かなかった。
エディウスは向かいのソファに座ると、背もたれに身を預けてじっと顔を見つめる。
年若い現界の王。
けれど決して、彼は自分より長く生きることはないのだ。
神族の寿命は人族の約5倍。
エディウスは寿命の半分ほどしかまだ生きていない。
なのに。
そのままじっと見ていると、フォリィアが薄く目を開いた。
「……どうした?」
瞬きをしながら、視線を向けてくる。
「……え……」
「何か、悲しいことでも?」
エディウスはわずかに目を見開いた。顔に出ていたとは思わなかったからだ。
何でわかったんだろうと思いつつ、フォリィアの顔を見る。
フォリィアは目をこすって書類の束を無造作に隅に置く。
そのうちのいくつかの書類を持って扉を開けると、彼は声を少し大きくして言った。
「ツェリーシュ! いるか?」
「はぁい~。おはようございます……」
「……寝ぼけてるのか? これを届けてくれ」
「大丈夫ですぅ。わかりました……」
渡された書類を手に戻ろうとするツェリーシュに向かって、フォリィアが声をかける。
「ああ、朝食はふたり分にしてくれ」
「エディウス様の分ですね。わかりましたぁ」
ツェリーシュの眠そうな声に、少し不安げな顔をしてフォリィアが戻ってくる。
エディウスの表情に気づき、首をかしげる。
「……おい? どうかしたのか?」
「……え……?」
「寝ぼけているのか……?」
呆れたように言われて、エディウスはかすかに目を細める。
そのままふわりとソファに倒れこむ。
「おい!」
慌てるフォリィアを見て、何か考えるように眉をひそめて目を閉じた。
顔色は昨日よりは悪くない。
だが万全とは言い難いようだ。
「……ちょっと、疲れてる、みたい……」
「休むなら寝室へ行け。……ここで寝てもいいが、体調を崩すぞ」
「……平気」
まだ何か言おうとするが、フォリィアが口を開くと同時に扉が開いた。
「フォリィア様、追加の書類です……って、エディウス様どうかしたんですか?」
「……眠いだけ、だから……」
のろのろと答えると、ツェリーシュはうーんと唸って言った。
「それじゃあ、ご飯後にしますか? 眠いなら寝てたほうが良いですよね」
同意を求めるように見られて、フォリィアが頷く。
「そうですよね。それじゃ、フォリィア様ご飯どうします? 先にします? それとも一緒に食べますか?」
「いや、……私も後でいい。起きそうなら呼びに行く」
「はい。わかりました。それじゃ!」
ツェリーシュがパタパタと駆けていく。
それを見送って振り返ると、エディウスがソファで目を閉じていた。
穏やかなその寝顔に、ふと笑みがこぼれる。
子供のように。
純粋な、彼。
目を閉じ、安らかな寝息を立てる姿はずいぶん幼く見える。
落ち着いた物腰が年上に見せているのかもしれないが。
フォリィアはエディウスが持ってきていた布を、彼にかけてやる。
そして向かいに座ると、机の上の書類を手にとった。
「……おい? どうかしたのか?」
「……え……?」
「寝ぼけているのか……?」
呆れたように言われて、エディウスはかすかに目を細める。
そのままふわりとソファに倒れこむ。
「おい!」
慌てるフォリィアを見て、何か考えるように眉をひそめて目を閉じた。
顔色は昨日よりは悪くない。
だが万全とは言い難いようだ。
「……ちょっと、疲れてる、みたい……」
「休むなら寝室へ行け。……ここで寝てもいいが、体調を崩すぞ」
「……平気」
まだ何か言おうとするが、フォリィアが口を開くと同時に扉が開いた。
「フォリィア様、追加の書類です……って、エディウス様どうかしたんですか?」
「……眠いだけ、だから……」
のろのろと答えると、ツェリーシュはうーんと唸って言った。
「それじゃあ、ご飯後にしますか? 眠いなら寝てたほうが良いですよね」
同意を求めるように見られて、フォリィアが頷く。
「そうですよね。それじゃ、フォリィア様ご飯どうします? 先にします? それとも一緒に食べますか?」
「いや、……私も後でいい。起きそうなら呼びに行く」
「はい。わかりました。それじゃ!」
ツェリーシュがパタパタと駆けていく。
それを見送って振り返ると、エディウスがソファで目を閉じていた。
穏やかなその寝顔に、ふと笑みがこぼれる。
子供のように。
純粋な、彼。
目を閉じ、安らかな寝息を立てる姿はずいぶん幼く見える。
落ち着いた物腰が年上に見せているのかもしれないが。
フォリィアはエディウスが持ってきていた布を、彼にかけてやる。
そして向かいに座ると、机の上の書類を手にとった。
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管理者:西(逆凪)、または沖縞
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