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2012/02/05 (Sun)
「どういうことだ!」

「何がだ?」
 声を荒げる人物に向かって、彼は淡々と答える。
 質素な机をはさんで向かい合って、まだ5分とたっていない。
 灯りは机に乗ったろうそくのみ。お互いの顔が微妙にしか見えない光の量だ。
 それに片方は顔を布で覆っていて、どのみちはっきりとは見えない。

 布で覆っているほうがまた叫んだ。
「この界隈では一番の腕利きだって聞いたぞ! それでなんで魔法が解けてるんだ!」
「……持続的に使えと、言っておいたはずだが?」
 長く伸ばした前髪に手を当て、ため息とともにつぶやく。
「使っていたさ!」
「私より力の強い奴がいたんだろう」
「絶対大丈夫なんだろうが!」

 声を荒げる人物を見る目が細まった。
 背筋がひやりとするような剣呑な眼差しで見られて、乗り出していた体を心持ち引く。
「この世に絶対などという物事は存在しない」

「くそっ! わかったよ! もうおまえには頼まない!」
「どうぞ、ご自由に」
 しれっとした顔で、窓の外を見る。
 それを見て勢いよく立ち上がると、机を思い切り叩いた。
 窓の外を見ていた顔を、しかめながら戻す。
「机を壊すなよ」
「他に、強力な魔法はないのか!」
「頼まないんじゃないのか」
「うるさいな! どうなんだよ!」
 少し目を伏せて、布で覆われた顔から目をそらす。
「無理だ。私よりも強い魔力の持ち主が彼に味方をしたからな。太刀打ちできん」
「何ィ!」

「それより、今日城に行った女はおまえの差し金か?」
「何で、そんなこと知ってやがる」
 彼は答えず、視線を扉のほうに向けた。
「さぁ、もう用はないだろう。私はこの件から手を引かせてもらう」
 布の間から見える薄い緑の目を怒りに染めて、彼は扉を乱暴に開けて出て行った。

「まったく、始末に悪い。あれで本当に兄弟なのか」
 つぶやいてから閉められた扉を見て彼、ディリクはため息をついた。

「……本物の『金の瞳』相手に勝てる奴なんて、この世界に存在しないのに」
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