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2012/07/18 (Wed)
 次に目が覚めたときは、前よりももっと意識がはっきりしていた。
 体はまだ痛かったが、起き上がれない程ではなくなっていた。
 まだ冷たさの残る布を額から取り、寝台から起き上がる。
 窓から見える空は暗い。
 床に下ろした足は裸足で、石は思ったよりも冷たかった。
 痛みと、重く感じる体を引きずって扉までたどり着く。

 短い距離。
 ほんの十歩位だ。
 なのに息が上がっている。
 扉のところで僅かに呼吸を整えて、扉を押し開けた。

「……!」
 目の前に青年がいた。
 片手に燭台を持っている。
 揺れる炎に照らされた顔は驚きと怪訝そうな表情をしていた。
 間近に見ると整った造作をしているのがわかった。
 印象的には鋭利な刃物のようだけれど。

 一歩を踏み出そうとしてバランスを崩す。
 倒れる、と思った次の瞬間には、青年の腕に抱きとめられていた。
 そのまま抱え上げられ、寝台まで戻される。
 布団をかけられ、また元のように寝かされた。
「まだ無理だ。寝ていろ」
 囁く様な声音。
 何か答えようと口を開け、言葉が何も出ないまままた眠りに落ちた。








「……彼は?」
 蝋燭の明かりだけの暗い廊下で、彼は小さく尋ねた。
「起きてきたから、寝かせた」
「……起きてきた? 寝台から?」
 淡々とした答えに、問う声は驚きの色を混ぜて問いを重ねる。
 肯定の意味でうなずき、問われた青年は次の言葉を待つ。

 彼はしばらく考えておもむろに髪をかきあげた。
「わかった。とりあえずお前は休めよ。ここしばらくまともに休んでないだろ」
 苦笑しながら言われた言葉に、青年は困惑して首をかしげた。
「ルヴィア、だが、此処の……」
「駄目だ」
 きっぱりと、反論を許さぬ口調で告げる。
「お前が倒れたら、元も子もないだろ。セイラス」
 セイラスと呼ばれた青年は唇を噛み締めて俯き、それを少し困ったような顔でルヴィアが見ている。
 僅かな逡巡の後、セイラスは詰めていた息とともに言葉を吐き出した。
「……わかった。言うとおりにしよう」
「あぁ。ちゃんと休めよ」
「わかってる」
 二人は言い合い別れ、後には静寂が残った。
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