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2012/07/24 (Tue)
 次に目が覚めたとき、外は明るいようだった。
 時間の感覚はすでに無い。
 そこでふと、時間の数え方に疑問を持つ。

 そもそも、此処はどこだろう。

 疑問符に埋められた頭で周りを見ると、寝台の足元に近い所に青年がいた。
 稲穂の様な金の髪は流れるように肩に落ち、紺色の衣服の上に光を落としている。
 手には何かの書類。
 真剣な表情で字面を追っている。
 身を起こすと、彼はこちらに気付き、手に持った書類もそのままに立ち上がった。
「やぁ、起きた? と、まだ無理はしないほうが良い」
 鈍く痛む胸に顔を顰めた途端、青年は気遣わしげに顔を歪めた。
 問うように顔を向けると、手に持った書類を枕もとの机に置く。
「私の名前はルヴィア。君は北の草原で倒れている所を見つけてきたんだよ。……君の、名前は?」
「……ッ」
 名前。
 頭が一瞬空白になった。
 思い出せないことはないはずなのに。
 あるはずだ。
 自分の、名前が。
「……ルシェイド」
 ぽつりと。
 浮かんだ名前を、特に何も考えずに呟く。
 声は初めて出したかのようにかすれていた。
 子供のような少し高めの声。
 ルヴィアはそれを聞いて笑んだ。
「そうか。ルシェイドは、どうして草原で倒れていたんだ? 見つけたとき、酷い怪我をしていたよ」
「……怪我?」
 首をかしげると、ルヴィアは手を伸ばし、ルシェイドの手を取った。
 その手には白い包帯が巻かれていた。
 だから随分体が痛かったのかと、思う。
「……覚えてない?」
 怪訝そうにルヴィアが聞く。
 覚えていない。
 最初の記憶は暗いこの部屋だったから。
「此処、は?」
 ルシェイドが聞くと、ルヴィアは首をかしげた。
 訝しげな表情。
「……此処は」
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