小説用倉庫。
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忘れることは許されない。
多くの者を殺めたことを。
罪有る者を。
罪無き者を。
老人を、幼子を。
全ての生ある者を、お前が殺したのだということを。
その罪ゆえに呪いをかけよう。
忘れるな。
その瞳は呪いの証。
それを見るたびに思い出せ。
お前が殺した者たちのことを。
永遠に許されない罪を。
多くの者を殺めたことを。
罪有る者を。
罪無き者を。
老人を、幼子を。
全ての生ある者を、お前が殺したのだということを。
その罪ゆえに呪いをかけよう。
忘れるな。
その瞳は呪いの証。
それを見るたびに思い出せ。
お前が殺した者たちのことを。
永遠に許されない罪を。
頭上には暖かな日差しが降り注いでいる。
緩やかに流れる風と、木の間を飛んでいる鳥との声が心を落ち着かせる。
適当な木に寄りかかるようにして腰をおろす。
穏やかな気候はこの土地特有のものだという。
町を出てからすでに2日。
もう一番近い村に着いていて良いものなのに、まだ影も形も見えない。
ため息をついて目を閉じた。
長く伸ばした銀青色の髪が風に揺れる。
額にかかった髪を手で払って空を見上げた。
時間の流れが止まったような感覚。
このまま、ここで。
ふと思い、自嘲気味に薄く笑う。
そんなことできるわけ無いのに。
何かを振り払うように首を振って、立ち上がる。
少ない荷物を手にとって歩き出した。
村のあるであろう方角に向かって。
緩やかに流れる風と、木の間を飛んでいる鳥との声が心を落ち着かせる。
適当な木に寄りかかるようにして腰をおろす。
穏やかな気候はこの土地特有のものだという。
町を出てからすでに2日。
もう一番近い村に着いていて良いものなのに、まだ影も形も見えない。
ため息をついて目を閉じた。
長く伸ばした銀青色の髪が風に揺れる。
額にかかった髪を手で払って空を見上げた。
時間の流れが止まったような感覚。
このまま、ここで。
ふと思い、自嘲気味に薄く笑う。
そんなことできるわけ無いのに。
何かを振り払うように首を振って、立ち上がる。
少ない荷物を手にとって歩き出した。
村のあるであろう方角に向かって。
途中何度か休憩を入れながら歩いたが、ついにその日は村にたどり着けなかった。
日が暮れてきたので火を起こすための木切れを拾いに森に入る。
拾っているうちに、気がつけば足元すら見えない程に暗くなってきていた。
ある程度まで拾い終えたので、そのままきびすを返してもと来た道を引き返す。
と、途中で何かに躓いた。
その拍子にせっかく拾った木切れを地面にばら撒いてしまう。
何を踏んだのだろうと足で探ると、それはなにやら柔らかかった。
疑問に思って手で触れてみる。
布の感触。
さらりとした髪。
(髪?)
わずかな月明かりのあたる場所までそれを引きずっていくと、それは人間だった。
短い黒髪。
幼い顔。
まだ若い。
少年といって良いほどの。
とりあえずその場に置いておいて、さっきばら撒いてしまった木切れを拾いなおす。
しばらくその作業をして、何とか集め終わったところで火を起こす。
そのまましばらくは炎だけを見ていた。
ふと、その少年が身じろぎした。
「……?」
炎の照り返しを受けたその顔は、目を開いてもやはり幼く見えた。
赤に負けないほどに鮮やかな緑の瞳。
「……ここは……? あんた、誰だ……?」
思ったよりも低い声に多少驚く。
少年は頭に手を当ててうつむいた。
「……そうか、……助けてもらったんだな。礼を言うよ」
そしてまっすぐにこちらを見る。
「俺の名前はアィル=ディーン=ウィステリアス。ここから南にある村に住んでるんだ」
日が暮れてきたので火を起こすための木切れを拾いに森に入る。
拾っているうちに、気がつけば足元すら見えない程に暗くなってきていた。
ある程度まで拾い終えたので、そのままきびすを返してもと来た道を引き返す。
と、途中で何かに躓いた。
その拍子にせっかく拾った木切れを地面にばら撒いてしまう。
何を踏んだのだろうと足で探ると、それはなにやら柔らかかった。
疑問に思って手で触れてみる。
布の感触。
さらりとした髪。
(髪?)
わずかな月明かりのあたる場所までそれを引きずっていくと、それは人間だった。
短い黒髪。
幼い顔。
まだ若い。
少年といって良いほどの。
とりあえずその場に置いておいて、さっきばら撒いてしまった木切れを拾いなおす。
しばらくその作業をして、何とか集め終わったところで火を起こす。
そのまましばらくは炎だけを見ていた。
ふと、その少年が身じろぎした。
「……?」
炎の照り返しを受けたその顔は、目を開いてもやはり幼く見えた。
赤に負けないほどに鮮やかな緑の瞳。
「……ここは……? あんた、誰だ……?」
思ったよりも低い声に多少驚く。
少年は頭に手を当ててうつむいた。
「……そうか、……助けてもらったんだな。礼を言うよ」
そしてまっすぐにこちらを見る。
「俺の名前はアィル=ディーン=ウィステリアス。ここから南にある村に住んでるんだ」
きっぱりと言った意志の強い瞳を眩しそうに見つめる。
ぼうっと見ているだけだったので、彼、アィルが不思議そうな顔をした。
「……なんか、俺変なこと言ったか?」
「……あ、いや……。私はヴィオルウス。これからシオンの村に行く予定なんだけど……」
そう言うと、アィルは顔を輝かせた。
無邪気な顔。
何の警戒心も見せずに。
「それなら一緒に行こう。どうせ俺も帰るつもりだったし」
返す言葉が見つからなくて黙っていると、アィルはきょとんとした。
「もしかして用事があるのか?」
「……そんなことないけど……」
「……? だって、ここは村からかなり離れてるぞ?」
不思議そうに聞いてくる彼に、ヴィオルウスは驚く。
「……え?」
「いや、だからさ……」
困ったように頭を掻いて、手近にあった木を拾う。
それで地面に長細い丸を書いた。
どうやらそれがこの地方のつもりらしい。
大陸であればただの楕円ではありえない。
「ここがシオンの村だろ?」
そう言って、丸の南寄りに円をひとつ書く。
「そんでここがエールの町」
描いた円より少し左斜め上あたりにもうひとつ書く。
そこはヴィオルウスが何日か前に出発した町だった。
「それで、ここが現在地、だな」
アィルが示したのは、シオンの村よりはるかに上のほうだった。エールより遠い。
「……あれ?」
ぼうっと見ているだけだったので、彼、アィルが不思議そうな顔をした。
「……なんか、俺変なこと言ったか?」
「……あ、いや……。私はヴィオルウス。これからシオンの村に行く予定なんだけど……」
そう言うと、アィルは顔を輝かせた。
無邪気な顔。
何の警戒心も見せずに。
「それなら一緒に行こう。どうせ俺も帰るつもりだったし」
返す言葉が見つからなくて黙っていると、アィルはきょとんとした。
「もしかして用事があるのか?」
「……そんなことないけど……」
「……? だって、ここは村からかなり離れてるぞ?」
不思議そうに聞いてくる彼に、ヴィオルウスは驚く。
「……え?」
「いや、だからさ……」
困ったように頭を掻いて、手近にあった木を拾う。
それで地面に長細い丸を書いた。
どうやらそれがこの地方のつもりらしい。
大陸であればただの楕円ではありえない。
「ここがシオンの村だろ?」
そう言って、丸の南寄りに円をひとつ書く。
「そんでここがエールの町」
描いた円より少し左斜め上あたりにもうひとつ書く。
そこはヴィオルウスが何日か前に出発した町だった。
「それで、ここが現在地、だな」
アィルが示したのは、シオンの村よりはるかに上のほうだった。エールより遠い。
「……あれ?」
「もしかして、道間違えてたのか?」
呆れたようにきいてくるアィルに、困惑した瞳を向ける。
「……まぁ、見たところ方角器も持っていないみたいだし……」
「……君は、どうして、ここに?」
「俺? どうしてって、薬草を取りに」
ほらと示した小さな袋の中には、いろいろな種類の草が入っていた。
これをどうするのだろうと首を傾げていると、彼は袋をしまいながら言う。
「これは大抵シオンの村で売るか、そうじゃないときはエールまで持っていくんだ」
「……大変じゃない?」
「まぁ大変だけど。……さっきみたいにいろいろあるから」
表情が翳ったのをみて、ヴィオルウスが口を閉ざす。
さっきは気がつかなかったが、どうやら足を怪我しているらしい。
微妙に庇っている。
ヴィオルウスは無言で自分の荷物の中から薬を出す。
きょとんとしたアィルの足を取って、傷口を調べる。
どうやら何かに噛み付かれたらしい。
裂傷のような傷の周りに、乾いた血がこびりついている。
よく見れば顔色も悪い。
「平気だよ、このくらいなら……」
慌てて後ろに下がろうとするアィルを制して、ヴィオルウスは傷口を水筒の水で流した。
少し綺麗になったのを見てから薬を塗り、布を巻く。
流れるような動き。
どうやら慣れているらしい。
「へぇ。すごいなぁ」
素直に感心したようなアィルの声。
「どうして、怪我を?」
「実は剣を落しちゃって。そこに運悪く獣がな……」
困ったような口調だが、表情にはあまり困った様子がない。
むしろ照れているような。
「その剣は?」
「ああ、明るくなったら探そうと思って」
そう言って、アィルはその場に横になった。
「ごめん。少し疲れた。……しばらくしたら起こしてくれ」
何を言う暇もなく、アィルは静かな寝息を立て始めた。
ヴィオルウスはしばらくその顔を見ていたが、おもむろに炎を見つめるとその中に手を入れた。
救い上げるように手を動かして、炎の中から手を出す。
袖には焼け焦げ一つなく、手も綺麗なままだ。
眠るアィルに一瞥を投げると、ヴィオルウスはアィルの倒れていた森のほうに入っていった。
呆れたようにきいてくるアィルに、困惑した瞳を向ける。
「……まぁ、見たところ方角器も持っていないみたいだし……」
「……君は、どうして、ここに?」
「俺? どうしてって、薬草を取りに」
ほらと示した小さな袋の中には、いろいろな種類の草が入っていた。
これをどうするのだろうと首を傾げていると、彼は袋をしまいながら言う。
「これは大抵シオンの村で売るか、そうじゃないときはエールまで持っていくんだ」
「……大変じゃない?」
「まぁ大変だけど。……さっきみたいにいろいろあるから」
表情が翳ったのをみて、ヴィオルウスが口を閉ざす。
さっきは気がつかなかったが、どうやら足を怪我しているらしい。
微妙に庇っている。
ヴィオルウスは無言で自分の荷物の中から薬を出す。
きょとんとしたアィルの足を取って、傷口を調べる。
どうやら何かに噛み付かれたらしい。
裂傷のような傷の周りに、乾いた血がこびりついている。
よく見れば顔色も悪い。
「平気だよ、このくらいなら……」
慌てて後ろに下がろうとするアィルを制して、ヴィオルウスは傷口を水筒の水で流した。
少し綺麗になったのを見てから薬を塗り、布を巻く。
流れるような動き。
どうやら慣れているらしい。
「へぇ。すごいなぁ」
素直に感心したようなアィルの声。
「どうして、怪我を?」
「実は剣を落しちゃって。そこに運悪く獣がな……」
困ったような口調だが、表情にはあまり困った様子がない。
むしろ照れているような。
「その剣は?」
「ああ、明るくなったら探そうと思って」
そう言って、アィルはその場に横になった。
「ごめん。少し疲れた。……しばらくしたら起こしてくれ」
何を言う暇もなく、アィルは静かな寝息を立て始めた。
ヴィオルウスはしばらくその顔を見ていたが、おもむろに炎を見つめるとその中に手を入れた。
救い上げるように手を動かして、炎の中から手を出す。
袖には焼け焦げ一つなく、手も綺麗なままだ。
眠るアィルに一瞥を投げると、ヴィオルウスはアィルの倒れていた森のほうに入っていった。
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管理者:西(逆凪)、または沖縞
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