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2012/02/05 (Sun)
「もしかして、道間違えてたのか?」
 呆れたようにきいてくるアィルに、困惑した瞳を向ける。
「……まぁ、見たところ方角器も持っていないみたいだし……」

「……君は、どうして、ここに?」
「俺? どうしてって、薬草を取りに」
 ほらと示した小さな袋の中には、いろいろな種類の草が入っていた。
 これをどうするのだろうと首を傾げていると、彼は袋をしまいながら言う。
「これは大抵シオンの村で売るか、そうじゃないときはエールまで持っていくんだ」
「……大変じゃない?」
「まぁ大変だけど。……さっきみたいにいろいろあるから」
 表情が翳ったのをみて、ヴィオルウスが口を閉ざす。
 さっきは気がつかなかったが、どうやら足を怪我しているらしい。
 微妙に庇っている。

 ヴィオルウスは無言で自分の荷物の中から薬を出す。
 きょとんとしたアィルの足を取って、傷口を調べる。
 どうやら何かに噛み付かれたらしい。
 裂傷のような傷の周りに、乾いた血がこびりついている。

 よく見れば顔色も悪い。
「平気だよ、このくらいなら……」
 慌てて後ろに下がろうとするアィルを制して、ヴィオルウスは傷口を水筒の水で流した。
 少し綺麗になったのを見てから薬を塗り、布を巻く。
 流れるような動き。
 どうやら慣れているらしい。
「へぇ。すごいなぁ」
 素直に感心したようなアィルの声。

「どうして、怪我を?」
「実は剣を落しちゃって。そこに運悪く獣がな……」

 困ったような口調だが、表情にはあまり困った様子がない。
 むしろ照れているような。

「その剣は?」
「ああ、明るくなったら探そうと思って」
 そう言って、アィルはその場に横になった。
「ごめん。少し疲れた。……しばらくしたら起こしてくれ」
 何を言う暇もなく、アィルは静かな寝息を立て始めた。
 ヴィオルウスはしばらくその顔を見ていたが、おもむろに炎を見つめるとその中に手を入れた。
 救い上げるように手を動かして、炎の中から手を出す。
 袖には焼け焦げ一つなく、手も綺麗なままだ。

 眠るアィルに一瞥を投げると、ヴィオルウスはアィルの倒れていた森のほうに入っていった。
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