小説用倉庫。
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「あ、おふたりサン、東旭がどこにいるか知りませんか?」
声をかけられてそちらを見ると、酒星が立っていた。
にこにこした顔。
いつもの。
「……」
止まってしまったこちらを見て、彼は少し戸惑ったようだ。
「どうか、したんですか?」
「……それはこっちのセリフだよ……」
「おまえ! 無事だったのか!?」
顔を伏せる薄氷の言葉にかぶせるように叫ぶと、酒星はきょとんとした顔をして言った。
「何がです?」
「だって船が転覆したって聞いて……」
「あー転覆しましたネェ」
「何で平気なんだよ!」
混乱してつい怒鳴る。
「落ち着けよ」
薄氷が勢いよく頭をはたいてくる。
あまりに勢いがついていたのでそのまま膝をついてしまったほどだ。
笑い声に顔を上げると酒星が笑っていた。
「相変わらずですね、ふたりとも」
「相変わらずって、まだ出かけて1週間しかたってねぇだろ!」
「……1週間?」
首を傾げて聞いてくる。
こうやって見ると暗殺を生業にしているようには見えない。
柔らかな金の髪が日に反射してきらめく。
「少なくとも3週間たってる予定なんですけどネ……」
「予定って……」
「暗殺失敗しちゃったんですヨ」
さらりと笑顔で言ってくる。
「……ロスウェルにまで行ってきたのか?」
「イーアリーサに流れ着きまして。そこから」
薄氷は腕を組んでうつむく。
「そうだな。どうやっても1週間じゃ無理だな」
「え、そうなのか?」
聞くと、ものすごく嫌そうな顔で薄氷が見てきた。
「普通にヴェリィサからいっても2週間以上はかかるんですヨ。帰りはヴェリィサから来ましたし」
冷笑でもって答えない薄氷にかわって、酒星が説明してくる。
声をかけられてそちらを見ると、酒星が立っていた。
にこにこした顔。
いつもの。
「……」
止まってしまったこちらを見て、彼は少し戸惑ったようだ。
「どうか、したんですか?」
「……それはこっちのセリフだよ……」
「おまえ! 無事だったのか!?」
顔を伏せる薄氷の言葉にかぶせるように叫ぶと、酒星はきょとんとした顔をして言った。
「何がです?」
「だって船が転覆したって聞いて……」
「あー転覆しましたネェ」
「何で平気なんだよ!」
混乱してつい怒鳴る。
「落ち着けよ」
薄氷が勢いよく頭をはたいてくる。
あまりに勢いがついていたのでそのまま膝をついてしまったほどだ。
笑い声に顔を上げると酒星が笑っていた。
「相変わらずですね、ふたりとも」
「相変わらずって、まだ出かけて1週間しかたってねぇだろ!」
「……1週間?」
首を傾げて聞いてくる。
こうやって見ると暗殺を生業にしているようには見えない。
柔らかな金の髪が日に反射してきらめく。
「少なくとも3週間たってる予定なんですけどネ……」
「予定って……」
「暗殺失敗しちゃったんですヨ」
さらりと笑顔で言ってくる。
「……ロスウェルにまで行ってきたのか?」
「イーアリーサに流れ着きまして。そこから」
薄氷は腕を組んでうつむく。
「そうだな。どうやっても1週間じゃ無理だな」
「え、そうなのか?」
聞くと、ものすごく嫌そうな顔で薄氷が見てきた。
「普通にヴェリィサからいっても2週間以上はかかるんですヨ。帰りはヴェリィサから来ましたし」
冷笑でもって答えない薄氷にかわって、酒星が説明してくる。
「酒星、東旭なら診療所にいたよ」
薄氷が横から口を挟む。
「そうですか。それじゃ、これはおふたりに」
言って酒星が渡してきたのは緑色の石。
薄氷が貰ったのは蒼い石のようだ。
「へぇ、綺麗だな、これ」
「ずいぶん力のある石みたいだけど、どうしたんだ?」
薄氷が怪訝そうな顔で酒星を見る。
「アタシももってんですがね。多分おふたり似あうかと思って」
ほら、と示したのは赤い石。
綺麗な。
「貰ったんですよ。綺麗でしょう」
そういうと、酒星はふたりに手を振りながら診療所の方に向かった。
「……なんかおまえ俺のこと目の敵にしてないか?」
「してるわけないだろ。……からかいやすいだけさ」
口の端だけあげて笑い、薄氷は先に進む。
目指しているのは食堂の方だ。
食堂に行くと食事はもう少し後だと断られた。
町の外に向かおうとする薄氷に声をかけると、肩越しに答えが返ってきた。
「散歩だよ。ついてくんな」
首を傾げつつ、薄氷に背を向けて自分の家のほうに向かう。
酒星のことで不安だったので、なんだか気が抜けてしまった。
港の方角から吹く風に煽られながらのんびり歩く。
「踏青ー! ちょっと来てー!」
声のする方角を見ると、小さな子供がいた。
海岸のある方だ。まだ遠いので良く見えない。
近くに行くと、それが誰だかわかった。
「何だよ、何かあったのか? 高西風」
彼は小さいながらも殺人者としてこの島に住んでいる者だ。
小さいといっても東旭たちとたいした差はない。
「僕ひとりじゃ持ち上がんないからさ、ちょっと来てって!」
「持ち上がんない? 何が」
首を傾げつつ、後についていく。
海岸に近づくにつれて、何かが倒れているのが目に入った。
最初はただのごみかと思った。
ごみにしては結構でかい。
次に目に入ったのが白っぽい色。
そして金色。
きらきらと日に反射している。
「……人?」
半ば呆然と呟く。
「何で人が、こんなとこに?」
薄氷が横から口を挟む。
「そうですか。それじゃ、これはおふたりに」
言って酒星が渡してきたのは緑色の石。
薄氷が貰ったのは蒼い石のようだ。
「へぇ、綺麗だな、これ」
「ずいぶん力のある石みたいだけど、どうしたんだ?」
薄氷が怪訝そうな顔で酒星を見る。
「アタシももってんですがね。多分おふたり似あうかと思って」
ほら、と示したのは赤い石。
綺麗な。
「貰ったんですよ。綺麗でしょう」
そういうと、酒星はふたりに手を振りながら診療所の方に向かった。
「……なんかおまえ俺のこと目の敵にしてないか?」
「してるわけないだろ。……からかいやすいだけさ」
口の端だけあげて笑い、薄氷は先に進む。
目指しているのは食堂の方だ。
食堂に行くと食事はもう少し後だと断られた。
町の外に向かおうとする薄氷に声をかけると、肩越しに答えが返ってきた。
「散歩だよ。ついてくんな」
首を傾げつつ、薄氷に背を向けて自分の家のほうに向かう。
酒星のことで不安だったので、なんだか気が抜けてしまった。
港の方角から吹く風に煽られながらのんびり歩く。
「踏青ー! ちょっと来てー!」
声のする方角を見ると、小さな子供がいた。
海岸のある方だ。まだ遠いので良く見えない。
近くに行くと、それが誰だかわかった。
「何だよ、何かあったのか? 高西風」
彼は小さいながらも殺人者としてこの島に住んでいる者だ。
小さいといっても東旭たちとたいした差はない。
「僕ひとりじゃ持ち上がんないからさ、ちょっと来てって!」
「持ち上がんない? 何が」
首を傾げつつ、後についていく。
海岸に近づくにつれて、何かが倒れているのが目に入った。
最初はただのごみかと思った。
ごみにしては結構でかい。
次に目に入ったのが白っぽい色。
そして金色。
きらきらと日に反射している。
「……人?」
半ば呆然と呟く。
「何で人が、こんなとこに?」
「ああ、これは駄目だね。残念だけど……」
冬杣はそう言って手にもっていた包帯をくるくるとしまう。
彼女は医者としての資格も有するので、大抵のけが人などは彼女に任せられる。
運ばれてきたのは、薄氷たちとそう年のかわらなそうな青年だ。
彼は頭部が血まみれの状態で発見された。
「そうなの?」
心配そうに東旭が聞く。
「まだ目が覚めてみないと断定はできないけど」
傷があったのは左眼より少し上の位置。
けれど傷は大きくて、失明している可能性が高いと冬杣が告げたのだ。
「大変ですねェ。どこから来たんでしょう」
酒星が腕を組んで首をひねる。
聞き取れないほどかすかな呼吸を続ける青年は、どの大陸にも見られない装飾をつけている。
白く長い上着の裾などに細かな金の刺繍が施してある。
布も上等のものだ。
「まぁ今日は様子を見よう」
そういう冬杣の言に従って、各々はその場から散っていった。
冬杣はそう言って手にもっていた包帯をくるくるとしまう。
彼女は医者としての資格も有するので、大抵のけが人などは彼女に任せられる。
運ばれてきたのは、薄氷たちとそう年のかわらなそうな青年だ。
彼は頭部が血まみれの状態で発見された。
「そうなの?」
心配そうに東旭が聞く。
「まだ目が覚めてみないと断定はできないけど」
傷があったのは左眼より少し上の位置。
けれど傷は大きくて、失明している可能性が高いと冬杣が告げたのだ。
「大変ですねェ。どこから来たんでしょう」
酒星が腕を組んで首をひねる。
聞き取れないほどかすかな呼吸を続ける青年は、どの大陸にも見られない装飾をつけている。
白く長い上着の裾などに細かな金の刺繍が施してある。
布も上等のものだ。
「まぁ今日は様子を見よう」
そういう冬杣の言に従って、各々はその場から散っていった。
薄氷が帰ってきたのはもう日付が変わろうとする時間だった。
たまたま寝付けず外に出ていたら、うつむき加減に歩いていた。
昼間見たときと違って服が少し汚れている。
山に登ったのかと思い、声をかけようと近くに行くと、薄氷はこちらを見た。
「……おまえ、こんな時間に何やってるんだ?」
「な、何って……おまえこそ何やってんだよ」
薄氷は表情を変えずにじっと見つめる。
深い青の目が、微かな月の光で仄かに輝く。
不意にその目が逸らされた。
「……おまえには関係ない」
「え、おい、薄氷?」
てっきり冷笑とともに言われると思っていたので拍子抜けしてしまう。
どうやらそれが習慣になっていたようだ。
いつもと違う薄氷の様子に首を傾げていると、薄氷はきびすを返してその場を去ろうとした。
「ちょっと待てよ!」
思わず制止の声をあげる。
胡散臭そうにこちらを見る薄氷を見て、しどろもどろになりながら言う。
「や、えっと……いつもと違うからさ……どうかしたのか?」
「生憎だが、おまえと違っていろいろ考えているんだよ」
「何だそりゃ、それじゃ俺が何にも考えていないみたいじゃないか」
「違うのか?」
フンと鼻で笑う薄氷に、心配することもなかったかとため息をつく。
その時、一瞬、本当に一瞬だけ、薄氷は表情をまったく消した。
それは仮面が剥がれ落ちるかのように。
唐突に。
驚いて瞬きを繰り返すが、そのときにはもういつもと大して変わりない様子に戻っていた。
「……薄氷」
「何だよ」
機嫌の悪そうな声。
「おまえ、大丈夫か?」
つい、そう聞いていた。
いつもと違ったから。
けれど、薄氷にはそれが酷く気に障ったらしかった。
「煩いよ! おまえには関係ないだろ!」
「……ッ……!」
思わず息を呑む。
「……私はおまえほど、人生気楽に生きてきたわけじゃないんだよ!!」
叩きつけるように言うと、ほんの少しばつの悪そうな顔をして、足早にその場から去っていった。
反射的に伸ばした手は彼の背中を見て、下におろされた。
どうしたらいいものか。
馬鹿みたいに突っ立っていたら、後ろから声が聞こえた。
「……喧嘩でもしたのかね? ずいぶん機嫌が悪そうだったが」
「冬杣……」
少し遠くから歩いてきたのは冬杣だった。
寒いのか薄い上着を羽織っている。
薄氷が去ったほうを見ながらこちらに近づいてくると、不審そうな視線に気づいたのかこちらを見て首を傾げる。
「何だ。私がここにいるのがおかしいか?」
「いや、そういうわけじゃねぇけど……聞いてたのか?」
薄氷の声は決して大きい方ではないはずなのに。
遠くにいたはずの冬杣には聞こえていたのか。
「私は耳が良いんだよ」
冬杣はそういうとその問題は終わりだとばかりに口を開いた。
「あんたたちはいつも仲がいいんだから、変なことでこじれないようにな」
「こじれるっつーか……。なぁ、俺と薄氷って仲良いのか?」
疑わしげに聞くと、苦笑で返された。
たまたま寝付けず外に出ていたら、うつむき加減に歩いていた。
昼間見たときと違って服が少し汚れている。
山に登ったのかと思い、声をかけようと近くに行くと、薄氷はこちらを見た。
「……おまえ、こんな時間に何やってるんだ?」
「な、何って……おまえこそ何やってんだよ」
薄氷は表情を変えずにじっと見つめる。
深い青の目が、微かな月の光で仄かに輝く。
不意にその目が逸らされた。
「……おまえには関係ない」
「え、おい、薄氷?」
てっきり冷笑とともに言われると思っていたので拍子抜けしてしまう。
どうやらそれが習慣になっていたようだ。
いつもと違う薄氷の様子に首を傾げていると、薄氷はきびすを返してその場を去ろうとした。
「ちょっと待てよ!」
思わず制止の声をあげる。
胡散臭そうにこちらを見る薄氷を見て、しどろもどろになりながら言う。
「や、えっと……いつもと違うからさ……どうかしたのか?」
「生憎だが、おまえと違っていろいろ考えているんだよ」
「何だそりゃ、それじゃ俺が何にも考えていないみたいじゃないか」
「違うのか?」
フンと鼻で笑う薄氷に、心配することもなかったかとため息をつく。
その時、一瞬、本当に一瞬だけ、薄氷は表情をまったく消した。
それは仮面が剥がれ落ちるかのように。
唐突に。
驚いて瞬きを繰り返すが、そのときにはもういつもと大して変わりない様子に戻っていた。
「……薄氷」
「何だよ」
機嫌の悪そうな声。
「おまえ、大丈夫か?」
つい、そう聞いていた。
いつもと違ったから。
けれど、薄氷にはそれが酷く気に障ったらしかった。
「煩いよ! おまえには関係ないだろ!」
「……ッ……!」
思わず息を呑む。
「……私はおまえほど、人生気楽に生きてきたわけじゃないんだよ!!」
叩きつけるように言うと、ほんの少しばつの悪そうな顔をして、足早にその場から去っていった。
反射的に伸ばした手は彼の背中を見て、下におろされた。
どうしたらいいものか。
馬鹿みたいに突っ立っていたら、後ろから声が聞こえた。
「……喧嘩でもしたのかね? ずいぶん機嫌が悪そうだったが」
「冬杣……」
少し遠くから歩いてきたのは冬杣だった。
寒いのか薄い上着を羽織っている。
薄氷が去ったほうを見ながらこちらに近づいてくると、不審そうな視線に気づいたのかこちらを見て首を傾げる。
「何だ。私がここにいるのがおかしいか?」
「いや、そういうわけじゃねぇけど……聞いてたのか?」
薄氷の声は決して大きい方ではないはずなのに。
遠くにいたはずの冬杣には聞こえていたのか。
「私は耳が良いんだよ」
冬杣はそういうとその問題は終わりだとばかりに口を開いた。
「あんたたちはいつも仲がいいんだから、変なことでこじれないようにな」
「こじれるっつーか……。なぁ、俺と薄氷って仲良いのか?」
疑わしげに聞くと、苦笑で返された。
「何馬鹿面さげてやがるんだ」
薄氷は次の日も薄氷だった。
当たり前のことだが、昨日の夜のことが何もなかったように思える。
「いや……何でもないんだ……」
しゃがみこみたくなる気持ちを抑えて、昨日人が漂着したという話を伝える。
朝食がてらその人物を見に、診療所へ向かう。
「まだ起きてないんだな」
「あぁ、踏青と薄氷か、呼吸も穏やかだ。もうすぐ目覚めるだろう」
頭に巻いてあった包帯を取り替えながら、冬杣が言う。
と、薄氷がその人物に近づく。
何をするのかと見ていると、すっと右手を伸ばして、人差し指で額を弾いた。
「薄氷!? お前、何やってんだよッ!」
「いや起きるかなと」
しれっと告げる薄氷を見て冬杣が呆れたように肩をすくめる。
「一応病人扱いなんだが」
「怪我人の間違いだろ」
「……ぅ……」
寝ていた彼はうめき声を上げて目を開けた。
でこぴんが聞いたのかと思ってなんだか複雑な気持ちになる。
開いた目は鮮やかな青緑色だった。
自分の周りにいて顔を覗き込んでいる3人を順に見て、彼は口を開いた。
「……ここは……」
「ここはシャイレア島。君は昨日この島に漂着したんだ。覚えてない?」
「いや普通漂着したのは覚えてねぇだろ」
眉間にしわを寄せて薄氷に言うが、どうやら無視する方針らしい。
彼は起き上がろうとして、苦痛に顔を歪めた。
手を右目の傷のあたりに持っていくのを見て、冬杣があっさり告げる。
「あんたの右目はもう見えないよ。傷が深かったからね」
「可能性じゃなかったっけ?」
「楽観視しても駄目な場合は駄目だろう」
疑問に思って問い掛けると、あっさりと切り捨てられた。
「で、君誰?」
彼女は淡々と聞く。
「……私、は……」
薄氷は次の日も薄氷だった。
当たり前のことだが、昨日の夜のことが何もなかったように思える。
「いや……何でもないんだ……」
しゃがみこみたくなる気持ちを抑えて、昨日人が漂着したという話を伝える。
朝食がてらその人物を見に、診療所へ向かう。
「まだ起きてないんだな」
「あぁ、踏青と薄氷か、呼吸も穏やかだ。もうすぐ目覚めるだろう」
頭に巻いてあった包帯を取り替えながら、冬杣が言う。
と、薄氷がその人物に近づく。
何をするのかと見ていると、すっと右手を伸ばして、人差し指で額を弾いた。
「薄氷!? お前、何やってんだよッ!」
「いや起きるかなと」
しれっと告げる薄氷を見て冬杣が呆れたように肩をすくめる。
「一応病人扱いなんだが」
「怪我人の間違いだろ」
「……ぅ……」
寝ていた彼はうめき声を上げて目を開けた。
でこぴんが聞いたのかと思ってなんだか複雑な気持ちになる。
開いた目は鮮やかな青緑色だった。
自分の周りにいて顔を覗き込んでいる3人を順に見て、彼は口を開いた。
「……ここは……」
「ここはシャイレア島。君は昨日この島に漂着したんだ。覚えてない?」
「いや普通漂着したのは覚えてねぇだろ」
眉間にしわを寄せて薄氷に言うが、どうやら無視する方針らしい。
彼は起き上がろうとして、苦痛に顔を歪めた。
手を右目の傷のあたりに持っていくのを見て、冬杣があっさり告げる。
「あんたの右目はもう見えないよ。傷が深かったからね」
「可能性じゃなかったっけ?」
「楽観視しても駄目な場合は駄目だろう」
疑問に思って問い掛けると、あっさりと切り捨てられた。
「で、君誰?」
彼女は淡々と聞く。
「……私、は……」
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管理者:西(逆凪)、または沖縞
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