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2012/02/05 (Sun)
「何馬鹿面さげてやがるんだ」

 薄氷は次の日も薄氷だった。

 当たり前のことだが、昨日の夜のことが何もなかったように思える。
「いや……何でもないんだ……」
 しゃがみこみたくなる気持ちを抑えて、昨日人が漂着したという話を伝える。


 朝食がてらその人物を見に、診療所へ向かう。
「まだ起きてないんだな」
「あぁ、踏青と薄氷か、呼吸も穏やかだ。もうすぐ目覚めるだろう」
 頭に巻いてあった包帯を取り替えながら、冬杣が言う。

 と、薄氷がその人物に近づく。
 何をするのかと見ていると、すっと右手を伸ばして、人差し指で額を弾いた。
「薄氷!? お前、何やってんだよッ!」
「いや起きるかなと」
 しれっと告げる薄氷を見て冬杣が呆れたように肩をすくめる。
「一応病人扱いなんだが」
「怪我人の間違いだろ」

「……ぅ……」

 寝ていた彼はうめき声を上げて目を開けた。
 でこぴんが聞いたのかと思ってなんだか複雑な気持ちになる。
 開いた目は鮮やかな青緑色だった。
 自分の周りにいて顔を覗き込んでいる3人を順に見て、彼は口を開いた。

「……ここは……」
「ここはシャイレア島。君は昨日この島に漂着したんだ。覚えてない?」
「いや普通漂着したのは覚えてねぇだろ」
 眉間にしわを寄せて薄氷に言うが、どうやら無視する方針らしい。

 彼は起き上がろうとして、苦痛に顔を歪めた。
 手を右目の傷のあたりに持っていくのを見て、冬杣があっさり告げる。
「あんたの右目はもう見えないよ。傷が深かったからね」
「可能性じゃなかったっけ?」
「楽観視しても駄目な場合は駄目だろう」
 疑問に思って問い掛けると、あっさりと切り捨てられた。
「で、君誰?」
 彼女は淡々と聞く。

「……私、は……」
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