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2012/02/03 (Fri)
「どこまで、行くんですか?」
 長い長い回廊を迷うことなく進んで行く彼の背に向かって、怪訝そうに聞いてみる。
「見晴らしのいいとこ」
 答えを返され、けれどアルファルは今向かっている方向には行ったことが無かった。

 そしてまた沈黙が落ちた。
 不意に彼が振り返る。
「怖いか?」
「まさか」
 反射的にそう答えていた。
 実を言えば、このまま進んでいくことが良いことなのかわからなかった。
 進めば、戻ってこられないような。
 そんな気がしていた。

「……おい?」
 怪訝そうな声にはっとして顔を上げると、目の前に男が立っていた。
 こちらよりも少し目線が高い。
 あわてて一歩下がる。
「そんなびびんなって。着いたぜ。ここだ」
 顎で指し示すのはひとつの扉。
 彼は一歩下がって、道を譲る。

 開けろと、いうことか。
 戸惑いながら、アルファルは扉に手を伸ばした。
 少し重いその扉は、深い緑の色をしていた。
 今までの場所にそぐわない、暗い色だ。

 恐れと戸惑いと。
 恐怖のほうが強かったかもしれない。

 そんな心で扉を引こうとすると、勢いよく閉じられた。
 目の前にアルジェンテウスの手がある。
 繊細そうには見えない、細いけれど無骨な手。

「それじゃ駄目だ」

「……え……?」
「もうちょっと軽い気持ちで開けろよ。別に変なもんは出てこねぇから」
 そう言うと手を離す。
 不思議に思いながらも、気持ちを落ち着けるために深呼吸をする。
 落ち着け、と言い聞かせ、脳裏に天界の広場を思い浮かべる。
 年中花が咲き乱れ、笑い声が耐えないその場所を。
「笑い声はちょっといらねぇけど……まぁいいか」
 心の中で思い浮かべただけなのに言葉を返され、驚いてそちらを見る。
「あ? 気にすんなって、ほら、開けろよ」
 手を引かれ、扉に手をかけさせられる。
 余計なことは考えないようにして、一気に開け放った。
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