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2012/02/03 (Fri)
 目を開けると、アルジェンテウスの後ろの空が見えた。
 作り物の青い色が。

 どうやら倒れていたらしい。
 差し伸べられた手にすがって、身体を起こす。
 ふと、耳に届いた声。
 何かの、歓声のような。
 けれど喜びの響きではなく、これは恐怖。

 喧騒。……悲鳴。
「お前にも聞こえるか」
「何が……」
 慌てて立ち上がるとまだ頭がふらふらしたが、そんなことを言っている場合ではない。
「……戦争だよ。知らなかったのか?」

 戦争。
 誰と、誰の?

「その様子じゃ、知らなかったみたいだな。……天界人の一人がへまをしたのさ。魔界と天界の戦争だ」
 愕然とした。
 そんなことは知らなかった。
 空にある天界と、地にある魔界でそんなことがあるなんて。
 それに、両者は不可侵だったはずだ。

 へまを、した?
 アルファルはきびすを返すと、扉を開け放つ。
「どこへ行く」
「決まってます。皆を助けないと」
「お前ひとりが行ったところで何も変わんねぇぞ」
 もっともな意見に唇をかみ締める。
「……わかっています。私ひとりが行ったところでどうにもならないことなんて。でも、行かなければ私はここにいる意味が無い」
 言い捨てると返事も待たずに回廊を走る。
 回廊は翼を広げて飛べるほどには広くない。
 急いで走っていくうちに、錆びた鉄の臭いが強くなってきた。

 血の臭い。
 顔をしかめて回廊を曲がる。

「!」
 足元に天使の死体があった。
 足がすくむ。
 翼は引きちぎられ、一目で絶命していることが見て取れる。
 見覚えのある姿。
 今朝は笑っていた。
 唇をかみ締めて傍らに落ちていた剣を拾うと、その死体を超えてまた走り出した。
 血の臭いはさらに濃くなってきている。
 それにつれて戦う音や、声も大きくなってきていた。

「天使ダ!ここにもイるゾ!」
 ざらざらした魔族の声に振り返ると、すぐ近くにそれはいた。

 黒く変色した肌。
 蝙蝠のような羽根。
 それは槍を突き出してきた。
 とっさにかわし、剣で斬り付ける。
 浅い、と思ったが、剣で斬ったところから魔族の身体が崩れていくのを目にして、自分がさっき拾った剣が破邪の剣だったことに気づく。
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