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2012/02/05 (Sun)
「……あの扉って便利だよな」
 エールに戻ってきたアィルが呟く。
「でもそうでもない場合も多いから」
 苦笑するヴィオルウスは、エールの町を眺めてため息をつく。
「どうかしたか?」
「ううん。綺麗だなって思って」

 視線を回りにめぐらせながら微笑む。
 夜の暗闇を払拭するかのように、今は光が溢れていた。
 いつもより人が多い。
 賑やかな。
 光と音。

「あぁ、宵闇祭っていうんだ。この時期にやる祭りだよ」
「へぇ……」
「今日はこのまま祭りを見て、それから……シオンに帰ろう」
 アィルはヴィオルウスの肩を押して、喧騒に紛れ込んだ。



 よく晴れた日だった。
 村までのんびり歩く。
 ふと、前方に人影が見えた。

「あれ?」
 アィルがきょとんとした声を出して、小走りにそちらに向かう。
 置いていかれないようにヴィオルウスも続く。
「アリアじゃないか、どうしたんだ? こんなとこで」
 人影は男女ふたりいた。
 そのうち女性の方がアィルを見て微笑む。
「待っていました」
 追いついたヴィオルウスに視線を向け、アリアは膝をついた。
「ヴィオルウス……」
「え……?」
 困惑して、ヴィオルウスが少し離れたところで止まる。
「私たちはこの地を守り、貴方が、帰ってくるのを待っていたんです」
「どういうことだ?」
 アィルが口を挟む。
「おまえたち……たしか兄弟って……」
「ある意味兄弟ではあるのよ」
 アリアはアィルに視線を向け、立ち上がった。

「これを。帰ってきたら渡すように言われていた物です」
 今まで黙っていた青年の方が、手を差し出す。
 その手に乗っていたもの。
「これ……」
「わたしの、石……?」
 渡されたのは石。深い青色。
 手に握ると、ゆっくりと、心が落ち着くのを感じる。
「私達の役目は、これで一段落です」
 安堵の表情を見せてアリアが言う。
「……レーウィス……?」
 ヴィオルウスが戸惑いがちに青年に声をかける。
 そこで初めて、彼は笑みを見せた。
「お帰りなさい、ヴィオルウス。やっと、帰ってきてくれましたね」

「さぁ、シオンに帰りましょう」

 4人は太陽の光の下。
 シオンの村への道のりを歩き出した。
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