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2012/02/05 (Sun)
 消えてから半刻ほどしか経っていないのに、長い時間が経っているように感じる。
 半分いらいらしながら、倒れたままのヴィオルウスを見る。

「落ち着け、グラディウス」
「……だって……」
「動かないでくれ、怪我が治せない」
 腕を強く握られて、うめきをあげる。
「……治療じゃないの……?」
「動くからだ。おとなしくしていろ」
 ゆっくり、時間をかけての治療。
 怪我した腕は暖かな光に包まれている。

 ルシェイドはアレンを治療しに階下に降りている。
 もう一度ヴィオルウスの方を見る。

 軽い足音がして、アレンとルシェイドが走ってきた。
「……ヴィオルウスは?」
「まだだ」

「あ……」
 アレンが声をあげる。
 その声に4人がヴィオルウスの方を見た。
 ゆっくり、目が開く。
 以前より青に近づいた紫の眼。
 まるで夢遊病者のような動作で立ち上がると、両手を前に差し出すようにしてまた目を閉じる。
 柔らかな光が溢れる。
 その光の中から、黒い髪の青年が出てきた。
 光が収まると目を開け、ヴィオルウスの方を見て笑う。
 ヴィオルウスの方も少しはにかんだように笑い、4人の方を振り向いた。

「……ヴィオルウス!」
 グラディウスが駆け寄る。
 ため息をついて苦笑して、ルシェイドはディリクと顔を見合わせた。
 疲れたように、アレンは髪をかきあげる。
「一件落着、か?」
「まぁ、今のところはね」
 ルシェイドが微笑む。
「それじゃ、退避させたやつら呼び戻さないとな」
 うん、と伸びをしてアレンがぼやく。
「そうだね。ここも修復させないと……」
 これからの相談をはじめた3人を残し、グラディウスは心配げに、けれどどこか安心したようにヴィオルウスの頭を柔らかくなでた。
「……良かった……ヴィオルウス、もう、大丈夫?」
「……平気。ごめん」
「ああ、怪我? 大丈夫だよ、ディリクに治してもらったから」
 ほらと言って腕を振る。
 それからアィルのほうを見て笑った。
「ありがとうな。感謝してもし足りないくらいだよ」
 笑みをもって答え、アィルはディリクのほうに向かう。

「ディリク、これ、借りてたやつ」
 そう言って石を差し出す。
 それは、ディリクの差し出した手に触れる前に砕け散った。
 驚くアィルに、ディリクは笑って言った。
「これはおまえの身を守るように作ったものだから、役目を終えたんだ」
「そうか……」
 グラディウスとヴィオルウスが皆のところに来る。
「これから、どうするの?」
 ルシェイドが静かに聞く。

「俺は帰るよ」
 その言葉に、ヴィオルウスは少し戸惑ったような表情を見せた。
「おまえは?」
「わ、わたし、は……」
 ヴィオルウスはグラディウスを振り返る。
「行っておいでよ」
 彼は笑って、背中を押す。
「たまに帰ってきてくれればいいからさ」
「……うん」

「じゃあ決まりだな。……ところでどうやって帰ったらいいんだ?」
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