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2012/02/05 (Sun)
「あれ、酒星、仕事?」
 船着場で忙しく指示していた少女が振り向いて片手を挙げる。
「そうですヨ。この船、ヴァイサーシアー行きですよね。ちょっと乗せてもらおうと思って」
「そう。……しかし不便だよね。船使わなきゃでらんないんだもん」
「東旭サン、そんな事言うもんじゃありませんヨ。その船のおかげで生活できるやつだっているんですから」

 そう言って船着場を見回す。
 現在そこにいる船は3艘だけだった。
 ここには確かあと5艘くらいはあったはずだ。

「皆は仕事ですかい?」
「うん。何か大きな船が通るからってさッ!」
 伸びをして笑う。
 出て行った船はほとんどが大きなやつでどうやら「仕事」らしい。
 この島は他の船の荷を奪うという海賊行為をよくしている。
 それは島の収入源のひとつでもあった。

 この少女は東旭といって、その海賊たちを束ねる統領のような者だ。
 小さいながらなかなか要領がよく、またムードメーカーとしてもがんばっている。
「そういえば姐さんの姿が見えませんね」
「船についてったよ。今回はあたしには合わないだろって」
「そうですか」
 うんと言って、東旭は海を眺める。
 潮風が吹いて髪を、額に巻いたバンダナをなびかせる。
「あと少しで出航だよ」
「この船ですか?」
「あたしはついていけないけど、気をつけて」

「ありがとうございます」
 細い目をさらに細めて東旭に笑いかけ、船に乗り込む。

 乗り込んでしばらくしてから、船が動き始めた。
 波の揺れがダイレクトに伝わるほどの小さな船だが、5人乗っても結構スペースはある。
 遠ざかっていく東旭の小さな白い手が見え、それもやがて見えなくなった。
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