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2012/02/05 (Sun)
「おまえが、見せてんのか……?」
 暗い部屋。
 アィルはそこに蹲っていた。

「ヴィオルウス……!」
 振り返る。

 暗闇に浮かび上がるかのようなその色。
 淡い青銀の髪。
 同じような薄い青の衣を身にまとって、ヴィオルウスはアィルより少し離れたところに立っていた。

「そうだよ……私が見せているんだ」
 囁き声。
 ともすれば聞き落としそうなほどに小さい。

「……なんでだ? こんなもの……俺に見せて、どうしようってんだよ?」
「おまえは、何でそう私にかまうんだ? 放っておいた方が楽だろうに」
 こちらの問いかけには答えず、ただ静かに問い掛けてくる。
「何故だ?」
「……知るかよ。放っておけたらそれは楽だろうけど、そうできないんだから、しょうがないだろ……!」
 半ば吐き捨てるように、まだ涙の乾かない瞳でヴィオルウスを見つめる。
「何故? 何故放っておけないんだ? ……私にはそれがわからない」
 かすんで表情は見えない。

 アィルは一歩前に踏み出した。
 とたん、怖じ気たようにヴィオルウスが一歩下がる。

「何で逃げるんだ?」
「……近寄らないでくれ。……私は自分が制御できない。おまえを殺してしまう」
「殺したければ殺せばいいだろ」
「簡単に言うな! その所為で、どんなに苦しんでいるのか……」
 目を伏せて吐き捨てる。
 ヴィオルウスは近寄ろうとするアィルから一定の距離を保ったまま、こちらを睨みつける。
「何で苦しんでるんだ?」
「今言っただろう!」
「逃げてるだけじゃねぇか。そんなんじゃいつまでたっても苦しいままだ」
 ヴィオルウスが怯んだのがわかる。
 顔を伏せてしまったので表情がわかりづらい。

「顔を上げろ。ヴィオルウス」
 決然と。
 そしてゆっくりと近づいていく。
 顔を伏せているヴィオルウスには、こちらが近づいているのがわからないらしい。

「……嫌だ。これ以上……誰かを殺すのは嫌なんだ――!」
 肩が震えている。
 そっと、本当にそっと手を触れただけなのに、ヴィオルウスは驚いて一歩下がろうとした。
 その肩を掴む。
「……ッ!」
 風が周囲を切り裂く。
 アィルは思わず腕で目を庇う。
 肩で荒い息を吐きながら、ヴィオルウスはアィルと距離を取る。
「何で、逃げるんだよ……」

「……殺したくない。でも、自分が死ぬのも嫌なんだ――」
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