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2024/11/25 (Mon)
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2012/02/05 (Sun)
 差し伸べられた手にすがるように触れたとたん、それはまるで溶け崩れるようにアィルの手の中で砕けた。
 呆然と、水に塗れた自分の手を見る。
 腰まで浸かった水が急に形を変えてアィルを飲み込む。
 手を無我夢中で振るが、逃げる間もあればこそ、すぐに水中深く飲み込まれた。

『さよなら』

 蒼い水の中。
 太陽が水の向こうに見えている。
 その前、太陽を阻むようにして見える人影が。

『貴方は、もういらないの』

 囁くような声。
 聞いたことがある。
 自分は知っている。
 その、声を――。

「あ」

 振り上げた『彼女』の手に光るナイフも。
 その頬を伝う涙も。

「ああ」

『だって』

 すべて。
 自分が、見てきたことだから。

『彼はもう居ないのだもの』

「ぁああああ――――!!」

 絶叫が起こる。
 海の、水の中のはずなのに。

 引きつるような悲鳴はあたりを暗く染めていく。
 振り上げられた手はおろされることなく、一言、低く呟いた彼女は
『ごめんね』
 そのナイフをもった手を
『いらないのは』
 自分におろした。
『私のほうね――』
 胸に赤い薔薇が咲く。

 暗く染まった闇を払拭するように広がる、その赤い色はじわりと肌に吸い込まれるようにまとわりついてくる。

 きつく目を閉じて耳を塞ぐ。

『彼女』の断末魔を聞かないように。
 聞こえないように。

 閉じた瞼から涙が一筋流れ落ちる。
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