小説用倉庫。
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「魔法使いが集まる町」
その答えはすぐにわかった。
暖炉の火は薪をくべなくとも消えず、部屋の中はともかく、暖炉から遠く離れた場所さえ暖かい。家全体が暖かくなっているらしい。
町にも結界が張ってあり、外よりもまだ暖かいらしい。
まだ外に出ていないのでなんともいえないのだが。
イーアリーサの町は長の家を囲む形で、円形に広がる家並みで構成される。
それも結界の一種だとウェルたちの母親は笑って言った。
この地は寒さに耐えるには厳しすぎるから、と。
少し寂しそうな顔で。
長とはこの村で一番の魔力の持ち主であり、一部には人間ではないとさえ言われる(もちろん悪意は無い)。
小耳に挟んだところによると、今度の長はウェルたちになるらしい。
あんな子供が一番の魔力を、と思うが、3人そろって、というところが引っかかる。
(まァ明日にはここから離れるんですが)
その日はウェルたちの家にお世話になった。
家の中は暖炉の火が落されても暖かいままだった。
「おはよう!」
「今日もいい天気だよ!」
朝、目が覚めるとそんな声が聞こえてきた。
ウェルたちが母親に挨拶しているらしい。
いつもなら朝早くには目が覚めるのに今日は寝過ごしたようだ。
割り当てられた部屋の、ベッドから見を起こすと、小さな足音が近づいてくるのに気づいた。
かたりとドアが開けられる。
慎重に、音を立てないように開けようとしていたのか、細く開けられたドアはしばらくそのままだった。
ゆっくりと扉が開くと、目を輝かせた子供が顔を見せた。
「起きてる?」
その様子がなんだか微笑ましくてつい頬が緩む。
「えェ、起きてますよ。おはよう、リィ」
名前を呼ぶと、リィは顔を輝かせた。
「すごい! ぼくの名前覚えてたんだ!」
子供特有の素直な反応。
無邪気に。
リィは部屋に入ってくると、手に持っていたものを差し出した。
「あのね、これあげる」
差し出されたものは暖かそうな手袋だった。
「村の外は寒いから……」
「……良いんですか?」
聞くと、リィは小さな頭を縦に振った。
「ありがとうございます」
礼を言って微笑む。
「それじゃね!」
リィはすごく嬉しそうな顔をしてくるりときびすを返し、軽い足音を立てて部屋から出ていく。
ドアを閉めようとしたところで何かを思い出したのかこちらを振り返った。
「あのね、お母さんが、ご飯あるからって!」
それだけ言うと、あとは脱兎のごとく部屋から遠ざかっていった。
「……」
手に渡された手袋はどう見てもあの子供たちのものではなさそうだった。
ためしにと思って手を入れてみると、驚くほどにぴったりだ。
「『お父さん』のものかな……」
呟いてから手袋を外し、『ご飯』を食べるために部屋から出た。
その答えはすぐにわかった。
暖炉の火は薪をくべなくとも消えず、部屋の中はともかく、暖炉から遠く離れた場所さえ暖かい。家全体が暖かくなっているらしい。
町にも結界が張ってあり、外よりもまだ暖かいらしい。
まだ外に出ていないのでなんともいえないのだが。
イーアリーサの町は長の家を囲む形で、円形に広がる家並みで構成される。
それも結界の一種だとウェルたちの母親は笑って言った。
この地は寒さに耐えるには厳しすぎるから、と。
少し寂しそうな顔で。
長とはこの村で一番の魔力の持ち主であり、一部には人間ではないとさえ言われる(もちろん悪意は無い)。
小耳に挟んだところによると、今度の長はウェルたちになるらしい。
あんな子供が一番の魔力を、と思うが、3人そろって、というところが引っかかる。
(まァ明日にはここから離れるんですが)
その日はウェルたちの家にお世話になった。
家の中は暖炉の火が落されても暖かいままだった。
「おはよう!」
「今日もいい天気だよ!」
朝、目が覚めるとそんな声が聞こえてきた。
ウェルたちが母親に挨拶しているらしい。
いつもなら朝早くには目が覚めるのに今日は寝過ごしたようだ。
割り当てられた部屋の、ベッドから見を起こすと、小さな足音が近づいてくるのに気づいた。
かたりとドアが開けられる。
慎重に、音を立てないように開けようとしていたのか、細く開けられたドアはしばらくそのままだった。
ゆっくりと扉が開くと、目を輝かせた子供が顔を見せた。
「起きてる?」
その様子がなんだか微笑ましくてつい頬が緩む。
「えェ、起きてますよ。おはよう、リィ」
名前を呼ぶと、リィは顔を輝かせた。
「すごい! ぼくの名前覚えてたんだ!」
子供特有の素直な反応。
無邪気に。
リィは部屋に入ってくると、手に持っていたものを差し出した。
「あのね、これあげる」
差し出されたものは暖かそうな手袋だった。
「村の外は寒いから……」
「……良いんですか?」
聞くと、リィは小さな頭を縦に振った。
「ありがとうございます」
礼を言って微笑む。
「それじゃね!」
リィはすごく嬉しそうな顔をしてくるりときびすを返し、軽い足音を立てて部屋から出ていく。
ドアを閉めようとしたところで何かを思い出したのかこちらを振り返った。
「あのね、お母さんが、ご飯あるからって!」
それだけ言うと、あとは脱兎のごとく部屋から遠ざかっていった。
「……」
手に渡された手袋はどう見てもあの子供たちのものではなさそうだった。
ためしにと思って手を入れてみると、驚くほどにぴったりだ。
「『お父さん』のものかな……」
呟いてから手袋を外し、『ご飯』を食べるために部屋から出た。
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