小説用倉庫。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
もうすぐ。
魔法陣が完成する。
いまだ誰も成功したことのない、魔法の力。
ラインシェーグは何のためらいもなく進めていく。
狂ったような瞳と、唇は相変わらず歪んだままで。
一心不乱に行動する彼は他人の目には奇異に映ることだろう。
けれどそんなことは彼には関係ない。
唯、自分の思うとおりにやるだけだ。
何を犠牲にしても。
描き終わった魔法陣を前にして、黒の本を片手に持って息を吸い込む。
「……我は汝に乞い願う。金色の後継者。運命の調停者よ。我は汝の名を知る者。契約において我汝が名を呼ばん。汝我が問いかけに応え、我が前に現われ出でよ。……ノーメン・スポンディエーレ・ロータ……」
長い呪文を途切れることなく滑らかに唱える。
詠唱の呪文は一気に発音を間違えずに唱えなければならない。
それは集中力も試される。
けれど今の彼はひとつの事しか頭にないから。
そうして呪文は完成した。
詠唱を終えた途端、部屋の扉が開かれた。
「ラインシェーグ!」
カウェラルとセルファの姿を認めて、ラインシェーグが笑う。
病んだ笑み。
「もう、遅い……!」
魔法陣からは吹き飛ばされそうなほどの風が巻き起こっている。
その風に煽られながら、ラインシェーグは一瞬、微笑んだ。
綺麗な、笑顔で。
「まさか、成功したのですか……?」
呆然と、カウェラルが呟く。
それを鼻で笑い、魔法陣に視線を移す。
「さぁ、出て来い! そして……」
私の願いを、叶えろ。
声に出さずに、呟く。
ゆらりと、魔法陣の中心に黒い影が出てきた。
長い黒髪。
しなやかな肢体を薄布で包み。
そして、金色の目が、鮮やかにその場にいる三人を貫く。
何もかもを見透かすような、そんな眼で周りを睥睨して。
『我が名はルシェイド……。私を呼んだのは、お前か』
頭に直接響く、けれど澄んだ、綺麗な声。
現われたその女性、ルシェイドは、冷たく光る瞳で周りを威圧する。
「そうだ。私の願いを叶えてほしい」
『……』
「ラインシェーグ! やめなさい!」
カウェラルが必死に声を出す。
彼女が放つ空気に押されて、苦しそうだ。
セルファはすでに気を失って倒れている。
高位のものが放つ存在感は、耐久力のない者にとっては死ぬほどに、それは圧力を伴って周りを襲う。
ルシェイドは魔法使いの最高位に位置する。
ほとんどの者にとっては実際に見たこともなく、伝説のようなもの。
ラインシェーグは、制止の声をあげるカウェラルを無視して、叫んだ。
「ルシェイド……私の願いはひとつだけだ……。ファレルを……ファレル=リィン=ゼードを甦らせろ!」
絞り出すような声で、彼は必死に訴える。
彼女が死んでから、本当に唯それだけを、願ってきたから。
ルシェイドはしばらくじっと、ラインシェーグを見つめる。
そして溜息とともに呟いた。
『……それはできない』
魔法陣が完成する。
いまだ誰も成功したことのない、魔法の力。
ラインシェーグは何のためらいもなく進めていく。
狂ったような瞳と、唇は相変わらず歪んだままで。
一心不乱に行動する彼は他人の目には奇異に映ることだろう。
けれどそんなことは彼には関係ない。
唯、自分の思うとおりにやるだけだ。
何を犠牲にしても。
描き終わった魔法陣を前にして、黒の本を片手に持って息を吸い込む。
「……我は汝に乞い願う。金色の後継者。運命の調停者よ。我は汝の名を知る者。契約において我汝が名を呼ばん。汝我が問いかけに応え、我が前に現われ出でよ。……ノーメン・スポンディエーレ・ロータ……」
長い呪文を途切れることなく滑らかに唱える。
詠唱の呪文は一気に発音を間違えずに唱えなければならない。
それは集中力も試される。
けれど今の彼はひとつの事しか頭にないから。
そうして呪文は完成した。
詠唱を終えた途端、部屋の扉が開かれた。
「ラインシェーグ!」
カウェラルとセルファの姿を認めて、ラインシェーグが笑う。
病んだ笑み。
「もう、遅い……!」
魔法陣からは吹き飛ばされそうなほどの風が巻き起こっている。
その風に煽られながら、ラインシェーグは一瞬、微笑んだ。
綺麗な、笑顔で。
「まさか、成功したのですか……?」
呆然と、カウェラルが呟く。
それを鼻で笑い、魔法陣に視線を移す。
「さぁ、出て来い! そして……」
私の願いを、叶えろ。
声に出さずに、呟く。
ゆらりと、魔法陣の中心に黒い影が出てきた。
長い黒髪。
しなやかな肢体を薄布で包み。
そして、金色の目が、鮮やかにその場にいる三人を貫く。
何もかもを見透かすような、そんな眼で周りを睥睨して。
『我が名はルシェイド……。私を呼んだのは、お前か』
頭に直接響く、けれど澄んだ、綺麗な声。
現われたその女性、ルシェイドは、冷たく光る瞳で周りを威圧する。
「そうだ。私の願いを叶えてほしい」
『……』
「ラインシェーグ! やめなさい!」
カウェラルが必死に声を出す。
彼女が放つ空気に押されて、苦しそうだ。
セルファはすでに気を失って倒れている。
高位のものが放つ存在感は、耐久力のない者にとっては死ぬほどに、それは圧力を伴って周りを襲う。
ルシェイドは魔法使いの最高位に位置する。
ほとんどの者にとっては実際に見たこともなく、伝説のようなもの。
ラインシェーグは、制止の声をあげるカウェラルを無視して、叫んだ。
「ルシェイド……私の願いはひとつだけだ……。ファレルを……ファレル=リィン=ゼードを甦らせろ!」
絞り出すような声で、彼は必死に訴える。
彼女が死んでから、本当に唯それだけを、願ってきたから。
ルシェイドはしばらくじっと、ラインシェーグを見つめる。
そして溜息とともに呟いた。
『……それはできない』
Comment
倉庫
管理者:西(逆凪)、または沖縞
文章の無断転載及び複製は禁止。
文章の無断転載及び複製は禁止。
カレンダー
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
カテゴリー
- ご挨拶。(3)
- [長編] Reparationem damni(12)
- [長編] Nocte repono rubei(72)
- [長編] Sinister ocularis vulnus (30)
- [長編] Lux regnum(61)
- [長編] Pirata insula(47)
- [長編] Purpura discipulus(43)
- [長編] Quinque lapidem(29)
- [短編] Canticum Dei(3)
- [短編] Candidus Penna(9)
- [短編] Dignitate viveret,Mori dignitas (11)
- [短編] Praefiscine(3)