小説用倉庫。
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轟然と言い放つルシェイドに一瞬呆然として、ラインシェーグは怒鳴った。
「何だと!? お前は生と死をも司ると聞いた! 出来ぬことは無いと!!」
『……確かにできないことはない』
「じゃあ……!」
『……言い方が悪かったか。……私は、そんなことはしない』
表情も変えずに、淡々と。
「何故だ! お前は願いを叶えてくれるんだろう!」
『願いを叶えるのは、それが必要なときのみ。……それに』
ラインシェーグを見つめたまま、そこで一旦言葉を切る。
『……彼の者の魂はお前のものではない。お前が、勝手にかき回すこともできない。……それにお前も言っていただろう。私は運命の調停者。自らがその運命を変えることは許されない』
言いながら少し表情を曇らせて。
『許されないんだ……』
カウェラルはその言葉に含まれた響きに、視線を上げる。
哀しそうな、声と眼で。
それすらも見えないのか、ラインシェーグは声を荒げる。
「ならばやり方を教えろ! お前がやらないというなら私がやる!」
『無理だ。人間如きに扱える術ではない』
ルシェイドはにべもない。
『いくらお前の魔力が強くても……蘇生の術に関しては、素人だからな』
肩を震わせて、ラインシェーグはルシェイドを睨みつける。
「蘇生の術なんか、誰もやったことなどないだろう。けれど、できるかもしれないじゃないか」
何も言わずに、ルシェイドはラインシェーグを見据える。
「どうして、どうして叶えてくれないんだ……! 私は彼女以外いらないのに……ッ!」
『駄目だ。……やるわけにはいかないし、教えるわけにもいかない』
きっぱりとした拒絶。
それを聞いてラインシェーグは片手で顔を覆う。
「……ッ……!」
そうしてしばらく沈黙が下りた。
不意に、彼は手を下ろす。
拳を握るでもなく自然に。
カウェラルははっとして顔を上げた。
魔法力が、集っていく。
ラインシェーグの、ところに。
何をするのか一瞬にして悟ったカウェラルは、止めようと手を伸ばす。
身体が重い。
泥の中にいるかのような動きづらさがもどかしい。
「……止めなさい……! ラインシェーグ……!」
苦しげに言う言葉はもはや彼には届かない。
もう、届かない。
ルシェイドは眉をひそめてラインシェーグを見る。
『何を、する気だ……。ラインシェーグ=レイズ=アヴェロス』
それは彼の真名。
彼を縛る、唯一の。
けれど彼は暗く、微笑んで呟く。
「ファレルが、いないなら……」
こんな世界なんて。
自分は、要らない。
弾けるような音と共に、集められた魔力は一気に解放され、そしてあたりは閃光に包まれた。
(ラインシェーグ……)
ファレルが微笑む。
けれどそれは金の残像を残して白い光に飲み込まれ、もう見えない。
永遠に。
彼のことを好きだといったファレルは、もう、二度と彼に微笑みかけることはない。
叶うなら、もう一度。
彼女と、一緒に。
「何だと!? お前は生と死をも司ると聞いた! 出来ぬことは無いと!!」
『……確かにできないことはない』
「じゃあ……!」
『……言い方が悪かったか。……私は、そんなことはしない』
表情も変えずに、淡々と。
「何故だ! お前は願いを叶えてくれるんだろう!」
『願いを叶えるのは、それが必要なときのみ。……それに』
ラインシェーグを見つめたまま、そこで一旦言葉を切る。
『……彼の者の魂はお前のものではない。お前が、勝手にかき回すこともできない。……それにお前も言っていただろう。私は運命の調停者。自らがその運命を変えることは許されない』
言いながら少し表情を曇らせて。
『許されないんだ……』
カウェラルはその言葉に含まれた響きに、視線を上げる。
哀しそうな、声と眼で。
それすらも見えないのか、ラインシェーグは声を荒げる。
「ならばやり方を教えろ! お前がやらないというなら私がやる!」
『無理だ。人間如きに扱える術ではない』
ルシェイドはにべもない。
『いくらお前の魔力が強くても……蘇生の術に関しては、素人だからな』
肩を震わせて、ラインシェーグはルシェイドを睨みつける。
「蘇生の術なんか、誰もやったことなどないだろう。けれど、できるかもしれないじゃないか」
何も言わずに、ルシェイドはラインシェーグを見据える。
「どうして、どうして叶えてくれないんだ……! 私は彼女以外いらないのに……ッ!」
『駄目だ。……やるわけにはいかないし、教えるわけにもいかない』
きっぱりとした拒絶。
それを聞いてラインシェーグは片手で顔を覆う。
「……ッ……!」
そうしてしばらく沈黙が下りた。
不意に、彼は手を下ろす。
拳を握るでもなく自然に。
カウェラルははっとして顔を上げた。
魔法力が、集っていく。
ラインシェーグの、ところに。
何をするのか一瞬にして悟ったカウェラルは、止めようと手を伸ばす。
身体が重い。
泥の中にいるかのような動きづらさがもどかしい。
「……止めなさい……! ラインシェーグ……!」
苦しげに言う言葉はもはや彼には届かない。
もう、届かない。
ルシェイドは眉をひそめてラインシェーグを見る。
『何を、する気だ……。ラインシェーグ=レイズ=アヴェロス』
それは彼の真名。
彼を縛る、唯一の。
けれど彼は暗く、微笑んで呟く。
「ファレルが、いないなら……」
こんな世界なんて。
自分は、要らない。
弾けるような音と共に、集められた魔力は一気に解放され、そしてあたりは閃光に包まれた。
(ラインシェーグ……)
ファレルが微笑む。
けれどそれは金の残像を残して白い光に飲み込まれ、もう見えない。
永遠に。
彼のことを好きだといったファレルは、もう、二度と彼に微笑みかけることはない。
叶うなら、もう一度。
彼女と、一緒に。
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