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2012/02/04 (Sat)
 がたんと、大きな音がした。
 目を開けばそこは見慣れた自分の部屋で。
 ベッドに仰向けに寝転んで、眠っていたらしい。
 傍らの床に本が落ちていた。

 黒い、本。

 手を伸ばしてそれを拾う。
 慎重に、書庫から持ってきたものだ。
 けれど、そんなことよりも。

「夢か……」
 ポツリと、どこか自嘲気味に笑う。
 夢などいくら見ても、彼には関係ない。
 彼が求めるのは、唯一つだから。
 眩い空を見て、彼は笑った。
 明るい空とは正反対な、暗い微笑いで。


「ラインシェーグ!」
「……セルファ……?」
 振り向いて、掛けて来る相手の名を呼ぶ。
「やっと部屋から出てきたな。何やってたんだ?」
「別に……瞑想していただけだ」
「ふぅん」
 首を傾げて、セルファが呟く。
「それより、急いでたんじゃないのか?」
「あ、そうそう。カウェラル様に呼ばれてたんだよ。忘れてた」
 じゃあと片手を挙げて、走っていく。
 その後ろ姿に手を振りながら、ラインシェーグは笑っていた。

 底なしの闇のような、暗い笑みを。
 その笑みを瞬時に消すと、表情を無くし、彼はきびすを返す。

 ああ今までのことがすべて夢だったら良かったのに。

 どこから?
 出会う前から。
 いっそ。

 けれど待っているのは残酷な真実。
 それは変わることのない事実で。
 たとえ夢を見たとしても意味はない。
 そう、意味はないのだ。
 だから彼は決意する。

 唯一つの、願いをかなえるために。
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