小説用倉庫。
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沈黙に耐えられなくなったフォリィアが何か話そうと口を開くのと、扉が叩かれるのはほぼ同時だった。
「誰だ」
「フォリィア様、食事どうします?」
開けて入ってきたのは、何回か会ったあの衛兵だった。
「……そうだな、運んでくれるか? ツェリーシュ」
「えっと、こちらの方のも、ですか?」
ちらりとエディウスのほうを見て問う。
「ああ、頼む」
「はい。分かりました。後半刻ほど待ってくださいね」
穏やかに笑って、静かに戸を閉める。
視線を落とした姿勢でかたまっているエディウスを見て、フォリィアは声をかけた。
「食事を頼んでしまったが、……泊まって行くか? ええと……」
そこで初めて、フォリィアは名前を聞いていないことに気づいた。
「……エディウス。……エディウス=ライア=セス=アルトゥーラス、だよ……」
長い名前を半ば虚ろに言って、けれど彼は顔を上げない。
「……ずいぶん長い名前だな」
「……え……」
驚いたようにエディウスが声をあげる。
「? だから、名前が長いと……」
それは微かな変化だったけど、フォリィアは怪訝そうな顔をした。
エディウスの顔色が変わったのだ。
「……もしかして、ぼく、名前を言ったの……?」
「ああ、何かまずいことでもあるのか?」
「……真名を……?」
フォリィアが頷くと、エディウスは片手で顔を覆った。
「何なんだ」
「……フォリィアは、王だから……。でも、……ぼくの名前は他の人に、言わないでくれる……?」
「名前?」
「エディウスは、いいけど……他の名前……」
顔を覆っているためにくぐもった声になっている。
「なぜ名前を言ったらいけないんだ?」
「……ぼくは魔法を使う。……神界の王という立場もある……不用意に名前を明かすことはできないんだ……」
「だから、どうして名前を言っては駄目なんだ」
分からないというように怪訝な顔をする。
言い淀んで、エディウスは口を開く。
「……名前はその人を縛る……。真名によって束縛されたら、……抗えないから……」
魔法を使う者はなおの事気をつけなくてはならない。
そういうことだ。
「そうか。私は知っていてもいいんだな」
フォリィアの言葉に頷く。
「誰だ」
「フォリィア様、食事どうします?」
開けて入ってきたのは、何回か会ったあの衛兵だった。
「……そうだな、運んでくれるか? ツェリーシュ」
「えっと、こちらの方のも、ですか?」
ちらりとエディウスのほうを見て問う。
「ああ、頼む」
「はい。分かりました。後半刻ほど待ってくださいね」
穏やかに笑って、静かに戸を閉める。
視線を落とした姿勢でかたまっているエディウスを見て、フォリィアは声をかけた。
「食事を頼んでしまったが、……泊まって行くか? ええと……」
そこで初めて、フォリィアは名前を聞いていないことに気づいた。
「……エディウス。……エディウス=ライア=セス=アルトゥーラス、だよ……」
長い名前を半ば虚ろに言って、けれど彼は顔を上げない。
「……ずいぶん長い名前だな」
「……え……」
驚いたようにエディウスが声をあげる。
「? だから、名前が長いと……」
それは微かな変化だったけど、フォリィアは怪訝そうな顔をした。
エディウスの顔色が変わったのだ。
「……もしかして、ぼく、名前を言ったの……?」
「ああ、何かまずいことでもあるのか?」
「……真名を……?」
フォリィアが頷くと、エディウスは片手で顔を覆った。
「何なんだ」
「……フォリィアは、王だから……。でも、……ぼくの名前は他の人に、言わないでくれる……?」
「名前?」
「エディウスは、いいけど……他の名前……」
顔を覆っているためにくぐもった声になっている。
「なぜ名前を言ったらいけないんだ?」
「……ぼくは魔法を使う。……神界の王という立場もある……不用意に名前を明かすことはできないんだ……」
「だから、どうして名前を言っては駄目なんだ」
分からないというように怪訝な顔をする。
言い淀んで、エディウスは口を開く。
「……名前はその人を縛る……。真名によって束縛されたら、……抗えないから……」
魔法を使う者はなおの事気をつけなくてはならない。
そういうことだ。
「そうか。私は知っていてもいいんだな」
フォリィアの言葉に頷く。
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