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2012/02/05 (Sun)
「…………厭だ……」

「え?」
 ふと、エディウスがつぶやくのが聞こえて、聞き返す。
 とりあえず担いだままでは表情すら見えないので、ベッドの上に降ろすと、エディウスは薄く目を開いた。
「……どうして……? こんな……」
「なんだ?」
「……て……意味が……じゃないか……」
「……もしかして寝ぼけてるのか」
「……答え……ない、なら……ぼくは…………」
 眉根を寄せて閉じた彼の目から、涙がこぼれる。
 フォリィアは枕もとにあった布を取ると、それを丁寧に拭う。

「……起きろ、エディウス」
「……フォリィア……?」
「そうだ、私だ」
 潤んだ瞳で、エディウスは不思議そうに見ている。
「ここ、……どこ……?」
「私の部屋だが?」
 いつも以上にゆっくりとした動作で起き上がったエディウスは、ぼんやりと周りを見回す。
 そうしてからまたフォリィアに視線を合わせると、口を開いた。
「……ルシェイドは……?」
「帰った。何か用があったのか?」
「……別に、そうじゃ、ないけど……」
「おい、しっかりしてくれ」
 困った様子のフォリィアに微笑んで、少し目を閉じる。
「……用事、何だったの……?」
「……王は私だそうだ。私自身はそう忙しくなるわけではないのだがな」

 用意やらは城の者がたいていやってくれる。
 フォリィア自身はいつもどおりだ。
「……明日、フォリィアは何を、するの……」
「何って……ロスウェルの大通りを一周ぐるりと回ってから城に戻って、父上から王冠を戴くんだ」
「……それ、ぼくが一緒にいたら……だめかな……」
「駄目ということはないだろうが……何故だ?」

「……うん……」
 ためらいがちに、エディウスは厭な予感がするといった。
 落ち着かなくなるような、不安がある。

 何か。
 あるような。

「……わかった。そう伝えておこう。……顔色がまだ少し悪い。このまま寝ておけ」
 エディウスの額を指で押して寝かせると、フォリィアはツェリーシュを呼ぶために部屋を出て行った。
 残されたエディウスは、隣の部屋の足音や声を聞くとはなしに聞いていたが、ゆっくりと意識を沈めていった。
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