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2012/02/05 (Sun)
 薄氷が酒星とルシェイドをつれてこの島から出て結構経つ。
 なぜか日課と化してしまった浜辺への散歩の途中で、樹雨に会った。
「もうすっかり良いみたいだな」
「えぇ、もうあまり目眩も起こさなくなりましたし……」

 目の傷もだいぶ癒えてきたころ、ベッドから起き上がるたびに真っ直ぐ立てなくてふらふらしていた。
 身体のほうがずいぶんと衰弱していたらしい。
 長いこと漂流してたんじゃないかとか。
 いろいろ言われてたけど、今見ると包帯を巻いているだけでちゃんと立っている。

「今日も、浜辺に行くんですか?」
「……うん」
「そうですか。気をつけて、くださいね」
 そう言ってふわりと微笑む。
 育ちが良さそうな立ち居振舞いをするけど、何でだろうとかは聞かない。
 ここはそういう島だから。

「それじゃな」
 別れを告げて浜辺に向かう。
 最近は雨も降らず、晴天が続いている。
 いつもと変わらない空。
 変わらない海。

 溜息をついてきびすを返そうとした時、落ちていた貝に躓く。
「……あ」
 ころりと、転がり落ちたのは光を反射する石。
 酒星から土産だといって渡された、緑の石。
「……何で、帰ってこないんだろ」
 ぽつりと呟いて、落ちた石を拾う。


 その背がふいに翳る。
 驚いて降り返ると、金の髪を揺らして青年が立っていた。

「お久しぶりです、踏青サン」
「……ッ! 酒星……?」
 呆然と呟くと、笑顔が返ってきた。
「はい」

「何だ、全然変わってないな、その馬鹿面」
 後ろから歩いてきたのは薄氷。
 髪を後ろで縛っている以外は変わっていない。

「いやぁ、なかなかてこずりまして。こんなに時間経っちゃいましたよ」
「まぁでも終わったんだし、良いだろ」
 ふたりが肩をすくめる。
「どうした、踏青?」

 聞きなれた声。
 懐かしい、声。

「お……遅いんだよ!」

 笑いながら、踏青はふたりに走り寄った。
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