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2012/02/05 (Sun)
 一通り見回してから、口を開く。
「おかしい、と思わないか? こんな短期間で、別の依頼内容だぞ」
「別?」
 聞き返すルシェイドに、高西風が答える。

「ぼくに依頼ってことは殺しってことだもの。君の依頼と、違うでしょ?」

 ルシェイドは困った顔をしてこちらを見た。
「私が拒む理由、大体わかるか?」
「……あんまり、わかりたくないけど」
 ためらうように言葉を濁して、続ける。

「君に会ったら、殺すつもりかな」
「つもり、じゃなくてそうだろうな」
 淡々と答えた。

 それに食って掛かったのは踏青。
「ちょっと待てよ! それは決着ついたんじゃないのかよ!」
「ついてないからこうして話してんじゃないか」
「だって高西風依頼やめたって……」
「でもルシェイドは止めると言っていない」

 さらりと言う。
 その言葉に踏青はすがるようにルシェイドに視線を向けた。
「そのとおりだよ。できれば彼を連れて行きたい。……最後の肉親に、会わせてやりたい」
「最後?」
 怪訝そうに聞くと、ルシェイドは頷いた。
「そう、もうノーリィ家はロウと、君しか残っていない」
 がたんと、思わず椅子を蹴倒して立ち上がっていた。

 視線が一瞬集まる。

「……なんだって……? 他の皆は、どうしたんだ……?」
 ルシェイドは目を閉じて首を振った。
 横に。
 唇をかみ締めて、椅子に座りなおす。
「なんてこった……!」
「どういうこと?」
 高西風が口を挟む。

「……あそこの家には、ロウと、彼に従う人たちしかいない」
 呟いて、ルシェイドを見る。
「そういう、ことだろう?」
「……そうだ」
「それでも、まだ私をあそこに連れて行きたいのか? あんな奴のところに?」
 半ば自嘲気味に言うと、ためらう様子が見て取れた。

「……えぇと……さっぱりわかんないんだけど……」
 片手を上げておそるおそる踏青が口を開く。
「あぁ、お前馬鹿だもんな」
「何だと!」
「馬鹿を馬鹿といって何が悪い」
 怒る踏青を鼻であしらう。

 口元に手を当て、何か悩んでいたルシェイドは、ひとつ溜息をついた。
「……仕方ない、ぼくは一応報告に戻るとするよ」
「そうか」
 お茶の残りを飲み干して、立ち上がる。
「どうなるか……何ともいえないけど」
「まぁ何とかなるさ」

 その言葉が終わるか終わらないかのうちに、ルシェイドの姿は薄れて消えた。
「何とも行動の早いやつだな」
 感心したように冬杣が呟く。
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