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2012/02/05 (Sun)
 目を開けばそれは見慣れた自分の部屋で。

 起き上がると体の節々が痛んだ。
 まるで高熱でも出した時のようだ。
 ふ、と息を吐いて窓の外を見ると、雨の名残もまるで見せず、ただ晴天がそこにあった。
 すぐ側の机には、布で丁寧に包んでおいた花びらが置いてある。
 布は少し赤く染まっていたが、花びらは平気だったようだ。
 ベッドから抜け出し、部屋を出るために扉に手をかける。
 たいして力を入れないうちに、それは自分の意思とは別に動いた。

「……踏青?」

 目の前に立つ見慣れた姿に、思わず眉根を寄せる。
 声は驚くほどかすれていたが、聞き取れないほどではない。
「何やってんだ、こんなとこで」
 馬鹿みたいに突っ立ってこちらを凝視していた彼は、突然両肩を掴んできた。

「……ッ……!」
 焼けるような痛みが走る。
「薄氷……! 目が覚めたんだな!」
「離せッ! この、馬鹿力!」
 両肩を掴まれていて腕がつかえないので、膝で思い切り踏青の腹を蹴り上げる。
「痛ぇ!」
 踏青は目を白黒させながらも肩から手を離した。

「おや、起きたのかい、薄氷」
 声に顔を上げると、冬杣がいた。
 その後ろには酒星や高西風、ルシェイドがいる。
「……どうかしたのか?」
 疑問に思って聞くと、驚いたように踏青が言った。
「っておまえ、3日も目を覚まさなかったんだぜ?」
「……あのこは山の麓に埋葬しておいたよ」
「そうか……すまなかった」
 目を伏せて言うルシェイドに答える。

 少し間を置いてから、改めてルシェイドに声をかける。
「ルシェイド……力を貸してくれないか。それと……酒星にも」
「僕はかまわない」
「アタシもいいですよ」
 それぞれの顔を見ながら言うと、実にあっさりと承諾された。
「ロウを操っていたやつに心当たりがある」
 薄く聞こえていた声。
 昔聞いた、思い出したくもなかった女の。

「どうするんだ?」
 尋ねた踏青に目をやって、他の皆に顔を向ける。

「私はユーディリス大陸に……自分の領地に、帰る」
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