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2012/02/05 (Sun)
 けれど。
 見えない壁に跳ね返されて、短剣は虚しく地に落ちた。
 その瞬間に、青年は魔力を形あるものに変える。

 見えない人はたぶん何も見えないであろうそれは、巨大な鎌の形をしていた。
 避ける術はない。
 避けたら酒星が殺されてしまう。

 どうすれば。

 逡巡のうちに青年が走った。
 ほぼ一瞬のうちに間合いを詰められる。
(駄目だ)
 彼は大きく鎌を振りかぶって
(避けきれない!)


 そこで動きを止めた。


「踏青! 酒星!」


 聞きなれた声。
 いつもの。

「邪魔をするなッ!!」

 青年は叫ぶと、身体の自由を取り戻した。
 その時点で、何故青年が動きを止めたのかがわかった。

 邪眼。

 使われるはずのなかった力。
 あってはならないもの。

 自分が知る、数少ない薄氷の、力。
 自分が知っているということを彼は知らないはずだけれども。
 こんな、咄嗟の時に。

「踏青! 逃げろッ!」

 薄氷の声で我に返る。
 気がつくと目の前に刃が迫っていた。

 それはまるでスローモーションのように。
 実感もなく。
 脈絡もなく
(ああ)
 もう駄目だと思った。
(死ぬのか)

 潔く目を閉じるなんてできなかったけれど。
 薄氷のその必死な表情ははじめて見た気がして。

 少し。
 ほんの少しだけ。

 嬉しかった。
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