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2012/02/05 (Sun)
 かなり遠くまで来て、診療所を振り返る。
「あいつ、一体どこからきたんだろうな」
「……お前、一体何聞いてたんだ?」
 例によって嫌そうな顔で薄氷が口を開く。
「聞いてたけど! あんな名前知らねぇよ!」
「世の中お前の知らないことなんて腐るほどあるだろ」

「まぁいいじゃないか。そんなことどうだっていいことだろう」
 ここでは。
 そう言って冬杣が微笑む。

「そういや高西風は?」
 樹雨を拾ってきた元凶ともいうべき高西風の姿が見えない。
「あぁ、あいつなら仕事だって」
「そっかー大変そうだな」
「お前は暇そうでいいな」
 溜息とともに言われて、カチンとくる。
 薄氷はいつも一言多い。
「俺だってそれなりに忙しいぞ」
「何にだよ」
 冷笑で答え、薄氷は皆と違う方向に足を進める。
「あれ? どこ行くの?」
 素朴な東旭の疑問に、彼は片手を上げて答えた。
「野暮用」
 そのまますたすたと去ってしまう。

 最近の薄氷はおかしい。
 けれど自分ではどうもできないこともわかっていた。



「私を、殺すのか」

「どうして……?」




「……島から出てない?」

 次の朝早く。
 散歩がてら船着場に来て、高西風がどこに行ったのか聞いてみた。
「仕事っていう連絡は受けたけど、どこに行ったのか知らないなー」
「船は使ってないぜ。乗ってんとこ見てねぇし、あいつひとりで船動かせねぇだろ」
 これから漁に出る人たちが教えてくれる。
 何か嫌な予感がした。

「ありがとう。じゃな!」

 その場から身を翻すと、足の向くままにある場所に向かった。
 それは高い山の頂。

 ディストーラと呼ばれる山だ。
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