忍者ブログ
小説用倉庫。
HOME 58  59  60  61  62  63  64  65  66  67  68 
2024/11/24 (Sun)
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2012/02/05 (Sun)
「何だ、レイザじゃねぇか」

 親しげな声に、ヴィオルウスは瞬きをくりかえす。
 戸口にいる人物に視線を移すと、そこに立っているのは気弱そうな顔をした青年だった。
 黒いマントをまとっているが、殺気立ったような気配も無い。
 髪も短い。

(それじゃあ)
 知らず握り締めていた手から力を抜く。
(今のは)
 呼吸が荒い。

「どうしたんだ? ……ふたりとも」
「何でもないよ。……あ、これ、届に来ただけだから……ッ!」
 レイザはそれだけ言うと逃げるように去っていった。
 渡された包みと外を交互に見て、アィルは首を傾げる。
「なんだったんだ?」
「今の人……」
「ああ、村の入り口あたりに住んでるやつだよ。どうかしたのか?」
 ヴィオルウスは力なく首を横に振り、ため息をついた。
「まァいいや。入れよ」
 たいして気にも止めずにアィルが促す。

 ドアを開けると、古びた書物の匂いがした。
 そこは書斎のようだった。
 壁には、天井に届きそうなほど本がある。
 部屋のほぼ中央にあるソファに座るように言うと、アィルは部屋から出た。
 ヴィオルウスはソファには座らず、まわりの本棚を眺めた。
 えらく古い本があったり、一度も開いたことの無いような綺麗な本もある。

「本を読むのか?」
 ふいに背後から声をかけられて、慌てて振り向く。
「え……ッ」
「や、そんなに驚かれるとは」
 心持ち目を見開いてアィルがカップを差し出す。
「お茶。入れてきたんだ」
「ありがとう……」
 ぼんやりと受け取って礼を言う。

「……それで?」
 ソファに座って、アィルが問い掛ける。
 ヴィオルウスにも座るように促すので、とりあえず向かいに腰をおろした。
Comment
Name
Title
Color
Mail
URL
Comment   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
Password
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
HOME 58  59  60  61  62  63  64  65  66  67  68 
HOME
Copyright(C)2001-2012 Nishi.All right reserved.
倉庫
管理者:西(逆凪)、または沖縞

文章の無断転載及び複製は禁止。
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
最新記事
[長編] Reparationem damni  (03/12)
[長編] Reparationem damni  (03/12)
[長編] Reparationem damni  (10/19)
[長編] Reparationem damni  (10/19)
[長編] Reparationem damni  (09/07)
忍者ブログ [PR]
PR