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2012/02/05 (Sun)
「……見てていい?」
 聞くと、アィルは驚いたような顔をしたが、少し笑って頷いた。
「あんまり面白くないと思うけどな」
 アィルは手に持っていた緑の草を石で出来ているらしい白い器に入れる。
「これは緑菜草。すりつぶして使うんだ」
 器と同じような白く短い棒を使って、草をすりつぶす。
 すでに乾燥している草は徐々に粉々になっていく。

 慣れた手つきに、思わず見とれる。
 ふと、アィルは背後の棚から小さな瓶を取り出した。
 中に入っている赤い実を少量入れる。
「それは?」
「ん? これか。これは炎花の実。花が咲くと綺麗だよ」
 見分けがつかないほど粉々になると、アィルは今度は棚の下から瓶を取り出した。
 中に白い半透明の液体が入っているのが見える。
 それを器の中に2、3滴落す。
 長い硝子のような棒でかき混ぜると、とろりとした暗緑色の液体になった。

 眉をひそめて、ヴィオルウスが聞いてくる。
「……それ、飲むの?」
 アィルはきょとんとした顔をしてから、腹を抱えて笑い出した。
「飲まねぇよ! ……これは塗り薬! それにまずいと思うぞ? これ」
 くすくす笑いながら、器の中を指差す。
 最初は暗緑色だったものが、次第に色あせていく。
「しばらくすれば透明になる。そうすりゃおまえでも見たことあるものになるだろ。……さっきレイザが来てな。ばあさんの腰の調子が悪いらしい」
 わからないような顔をしているヴィオルウスに、笑いながらアィルが説明する。
「腰に塗るんだ。さっきの緑菜草は痛みに、炎花の実は温める効果があるから」
「腰痛?」
「そう。……飲まないからな」
「それはわかったよ!」
 ヴィオルウスは顔を赤らめて抗議する。
 その表情にまたアィルが笑う。
 透明になった液体を、空の瓶に流し込む。蓋をしっかり閉めてから、麻の袋に入れた。
「じゃあ、ご飯を食べたら、これを届けてくるから……。……一緒にくるか?」
 まだ笑いながらアィルがたずねる。
「行く」
 すねた表情で、それでも好奇心には勝てないのかヴィオルウスが頷く。
「レイザの家は村の入り口近くだ……その格好で行くつもりか?」
 言われて、そういえば寝巻きに上着を羽織っただけの格好だったことにに気づく。
「き、着替えてくる!」
 慌ててヴィオルウスが部屋を飛び出した。

 階段の途中で何かにぶつかる音と、声が聞こえて思わずまた笑ってしまった。
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