小説用倉庫。
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瞼の裏で光が踊る。
眩しい。
かすかに目を開けると、そこは見慣れない部屋だった。
壁や天井、その他の小物など全てが白い。
それが日の光に反射して目が眩む。
不思議に思って、起き上がってみる。
そこではじめて自分がベッドに寝ていたのだと気づく。
清潔な服。
それさえも白い。
ベッドから降りて、窓の側に行く。
さわやかな風が通り過ぎていく。
身体がなにやら重く感じるが、それよりも何故自分がここにいるのかがわからない。
ふと、ドアの向こうで足音が聞こえた。
こちらに近づいてくる。
ドアの前でそれは止まり、次にノブが回された。
現われたのは、赤毛の髪を短く切ってある女性。
彼女は自分を見ると、ぽかんと口を開けて、花瓶を落した。
綺麗な花瓶がこなごなになる。いけてあった花も地面に散らばった。
「……」
彼女は信じられないものでも見ているようにこちらを凝視している。
「どうした、煩いではないか」
彼女の背後から、もうひとり顔を出した。
長い、水色の髪。
閉じられた瞼。
その顔。
「ヒウリ……?」
「ふむ。その声。なんじゃ、おんし、やっと起きたのか」
「ね、あたしはわかる?」
勢い良く聞かれた。
「……ユゥア?」
名前を呼ぶと、ユゥアは嬉しそうに顔を輝かせた。
「なんだ、しっかりしてんじゃん! 良かったー! ぜんぜん起きないから、どうにかなっちゃってるんだと思ってたよ」
「……何の話?」
いまいち話がわからず首を傾げる。
「覚えておらんのかえ?」
答えずにいると、ヒウリはこちらに近寄って来た。
「……サキ・レイディル。思い出すが良いよ。……何が起きていたのか」
ヒウリの手がサキに触れる。
同時に頭の中で何かが弾けたような感覚がした。
一気に今までのことが甦る。
「……他の、皆は……」
「あたしとヒウリ、アールドルと……シルウァ」
「つい先日、ラクスも起きた」
膝が震えそうになる。
けれど唇をかみ締めて、サキは訪ねた。
「他の皆は……死んだんだな」
ユゥアが救いを求めるようにヒウリを見る。
「そうじゃの」
なんでもないことのようにヒウリが答える。
「おんしは彼らに守られて、今ここにおる。そのことを肝に命じよ。忘れてはならんぞ」
「……わかってる」
思わず目を閉じて、それでもサキは頷いた。
「ユゥア、ここを片付けたらサキを少し休ませてやらんとな。……起きたばかりじゃからの」
「……そうだね……ってあたしが片付けんの?」
「あたりまえじゃ。誰が汚したと思うておる」
言いあいながら部屋から出て行く。
その姿を見送ってからサキは窓の外を見た。
緑が広がる景色。
「……そうか……」
サキは呟いた。
日が落ち、景色がすべて闇に消えても。
しばらくそこに立ち尽くしたまま。
サキはいつまでも外を見ていた。
眩しい。
かすかに目を開けると、そこは見慣れない部屋だった。
壁や天井、その他の小物など全てが白い。
それが日の光に反射して目が眩む。
不思議に思って、起き上がってみる。
そこではじめて自分がベッドに寝ていたのだと気づく。
清潔な服。
それさえも白い。
ベッドから降りて、窓の側に行く。
さわやかな風が通り過ぎていく。
身体がなにやら重く感じるが、それよりも何故自分がここにいるのかがわからない。
ふと、ドアの向こうで足音が聞こえた。
こちらに近づいてくる。
ドアの前でそれは止まり、次にノブが回された。
現われたのは、赤毛の髪を短く切ってある女性。
彼女は自分を見ると、ぽかんと口を開けて、花瓶を落した。
綺麗な花瓶がこなごなになる。いけてあった花も地面に散らばった。
「……」
彼女は信じられないものでも見ているようにこちらを凝視している。
「どうした、煩いではないか」
彼女の背後から、もうひとり顔を出した。
長い、水色の髪。
閉じられた瞼。
その顔。
「ヒウリ……?」
「ふむ。その声。なんじゃ、おんし、やっと起きたのか」
「ね、あたしはわかる?」
勢い良く聞かれた。
「……ユゥア?」
名前を呼ぶと、ユゥアは嬉しそうに顔を輝かせた。
「なんだ、しっかりしてんじゃん! 良かったー! ぜんぜん起きないから、どうにかなっちゃってるんだと思ってたよ」
「……何の話?」
いまいち話がわからず首を傾げる。
「覚えておらんのかえ?」
答えずにいると、ヒウリはこちらに近寄って来た。
「……サキ・レイディル。思い出すが良いよ。……何が起きていたのか」
ヒウリの手がサキに触れる。
同時に頭の中で何かが弾けたような感覚がした。
一気に今までのことが甦る。
「……他の、皆は……」
「あたしとヒウリ、アールドルと……シルウァ」
「つい先日、ラクスも起きた」
膝が震えそうになる。
けれど唇をかみ締めて、サキは訪ねた。
「他の皆は……死んだんだな」
ユゥアが救いを求めるようにヒウリを見る。
「そうじゃの」
なんでもないことのようにヒウリが答える。
「おんしは彼らに守られて、今ここにおる。そのことを肝に命じよ。忘れてはならんぞ」
「……わかってる」
思わず目を閉じて、それでもサキは頷いた。
「ユゥア、ここを片付けたらサキを少し休ませてやらんとな。……起きたばかりじゃからの」
「……そうだね……ってあたしが片付けんの?」
「あたりまえじゃ。誰が汚したと思うておる」
言いあいながら部屋から出て行く。
その姿を見送ってからサキは窓の外を見た。
緑が広がる景色。
「……そうか……」
サキは呟いた。
日が落ち、景色がすべて闇に消えても。
しばらくそこに立ち尽くしたまま。
サキはいつまでも外を見ていた。
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