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2012/02/05 (Sun)
 そこは何か異様な匂いに包まれていた。
 異臭。
 その発生源はどこかとサキは周りを見回す。

「ようこそ」

 声が聞こえて、3人はそちらに視線を移す。
 そこには、椅子に座ったアンスリウムがいた。
 ゆったりと背もたれにかけたその顔が、心なしか青ざめている。

 質問をしようとサキが少し前に出て口を開いたとき、また地震が起きた。
 突然のことに思わず膝をつく。
 瞳に少し悲しそうな色を乗せて、アンスリウムは3人を見る。
 正確には唯ひとりを。
 けれど地震をやり過ごすのに集中している彼らは気づかない。

 椅子から微動だにせず、彼はただ見ていた。
 なす術もなく床に這いつくばる彼らを。

 揺れは程なくして収まった。
 何とか立ち上がったサキは、レイラに手を貸して立たせる。
 ミカゲは自力で立ち上がったようだ。
「……今の揺れで、最後の大地が堕ちたな」
 その言葉にサキがぎくりと動きを止める。
 上目遣いに睨みつけるが、ふと、その視線が自分に向いているわけではないことに気づく。

「どこを見て……」

 視線をたどる。
 サキ達よりも後ろ。
 奥のほうに。
 誰かが椅子に掛けていた。

 それは人形のよう。
 ろうのような肌。
 虚ろににごった目。
「……まさか、アザミ……」
 呆然と、ミカゲが呟いた。

 唇からは鮮やかな赤い血。
 それは彼女の死体だった。
 部屋に漂う異臭の源。
「どういうことだ!」
 サキが怒鳴る。
「見たままだ。……彼女は死んでいる」
 億劫そうに囁く。
 ぎこちない動き。
「何が……」

「本当は……全員に死んでもらうつもりだったのだがね。……レイラ?」

 緩やかな笑みをレイラに向け、吐息のような声で言う。
 肩を震わせ、レイラはアンスリウムを凝視する。
「……レイラ、どういうことだ……?」
「彼女は私の意思に沿ったまでだ……ひとり、生き残ってしまったようだがね……」
「……ッ……!」
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