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2012/02/05 (Sun)
 どこから忍び寄ってきたのか、振り向いた先には漆黒の獣の爪があった。

 驚きに目を見開いた後、視界は赤に染まった。

 痛みは後からきた。
 片膝をつく。
 頬を流れる液体の感触。

 熱い。
 痛みよりも、熱さが先にたつ。

「こ……のォ!」
 ウォルファーの声が聞こえる。
 何かを切る音。
 重い物の落ちる音。
 目を開ける。

 視界は痛みの所為で赤みがかっていたが、数回瞬きを繰り返すと何とか晴れた。
 ルシェイドの白い頬に赤い雫が数滴落ちていた。
 あれは俺の血か。
 視界にはまだ違和感があって、最初何故か分からなかった。
 けれど、直ぐに思い至った。

 片目が、開いていない。
 否、開いているのかもしれないが、見えていない。
「ライナート! 大丈夫か?」
「痛い。それより早く出るぞ」
 立ち上がると少しふらついた。
 舌打ちをして歩き出そうとした時、腕をつかまれた。

「……ウォルファー?」
 問うような呼びかけには答えず、強く腕を引かれたと思ったら浮遊感があった。
 気がついた時にはルシェイドごとウォルファーに抱えられていた。
「……おい。俺は歩けないわけじゃねぇんだが?」
「こっちの方が早い」
 顔をしかめながら言うが、一言で返されてしまった。
 抱えたまま、ウォルファーが走り出す。
 二人抱えて鎌も離さない。
 力持ちなんだなとぼんやり思いながら、揺れに少し吐きそうだった。

 背後では、あれは既に跡形もなくなっていた。
 まるで最初から何も居なかったかのように。

 ただ、先程ウォルファーが切り捨てた獣の死骸があるだけだ。
 それも直ぐに視界から外れてしまう。

 暗い廊下を抜け、外に出る頃には、痛みはだいぶ耐えがたいものになっていた。
 施設からだいぶ離れたところで下に降ろされた。
 思ったより降ろす手つきが優しかったのはやはり怪我人だからだろうか。

「……ッ……」
 ルシェイドを横たえ、顔に手をやって、痛みに怯む。
 どこかに痛み止めって無かったかな。
 探すと丸薬がいくつか見つかったので口に含む。
 おかげで左腕の痛みも少し治まった。
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