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2012/02/11 (Sat)
 地図は貴重品だ。
 一つ一つが手書きな上にそもそも書く人物が少ない。
 基本的に市場に出回っているのは近隣を記した簡単なものだけだ。
 それより細かく、また広範囲なものはかなり値が張る。
 今、レインが持っているのはそんなものではなかった。

 それは、三つの大陸が描かれた、世界地図だった。
 街道はもとより、他の細かな部分まで書き込まれている。
 これだけのものを手に入れるには、かなりの額が必要なはずだ。
 だがレインはそんな大金は持っていない。
 彼はいつもと変わらない表情で、現在地や町との距離を説明している。

 此処から近いのは、エールという町だ。
 湖の町として有名で、市場はいつもかなりの賑わいを見せている。
 東大陸各地から様々な物が集まるので、何かないかとレインは情報収集もかねてその町に行っていた。

「レイン、どうやってこの地図を手に入れた?」
 説明の途中で唐突に質問を投げると、彼はきょとんとして顔を上げた。
 先ほどと似た問いだ。
 だが。
「誤魔化すなよ」
 まず釘をさしておく。

 レインは困ったように眉間に皺を寄せると、地図に手を這わせた。
「買ったんじゃなくてもらったんだけど。……条件付きで」
 最後の一言は小声だったがはっきりと聞こえた。
 オルカーンが鼻を鳴らす。
「……まぁそんな事だと思ったよ」
「……何だ、その条件とやらは」
 不機嫌そうな声でルベアが問う。
「えぇと、欲しい物があるから取ってきて欲しいって」
 睨み付けるようなルベアの視線から目をそらしながら、レインが答える。

 その答えに、オルカーンは首を傾げた。
 きょとんとした表情は酷く人間くさい顔に見える。
「欲しい物って……そいつが取ってくれば早いんじゃないか?」
「うーん……そうなんだけど、何かね、今忙しいんだって。だから、イーアリーサに行く時に……帰りでも良いって言ってたけど、取ってきてくれないかって」
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