小説用倉庫。
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一歩、前へと進み出る。
踏みしめた靴の下は、爪先を覆うほどの長さの草が生い茂っていた。
街道を少し外れた森の中、そこだけが開けた草原になっている。
一陣の風が吹いた。
項で一つに纏めた髪が、後へとなびく。
ぐ、と僅かに左手に力を込める。
構えた剣の切っ先は、正確に相手を捉えたまま、揺るがない。
対峙するのは薄茶色の大きな獣。
見た目は大型の犬、といったところか。
だが長く伸びた尾は二つに分かれ、爛と輝く瞳は三つあった。
じり、と双方が円を描くように動く。
張り詰められた空気。
その場には息をするのも憚られるような気迫が満ちていたが、双方の表情は平静を保っていた。
風が足元の草をなぎ倒していく。
風が凪ぐ、一瞬の後、双方は同時に動いた。
弧を描き迫る刃を爪で弾き、獣が踊りかかる。
身を捻って牙を躱し、鞘で打ち払う。
獣は喉の奥で低く唸ると、僅かに距離を開けた。
距離をとって飛び掛るのだろうか。
それ以上は深く考えずに踏み込んでいた。
剣を振るう。
だが獣は敏捷な身のこなしで避けた。
それを追うように、もう一歩、強く踏み込む。
振りぬいた勢いのまま身体を半回転させ、逆手に持っていた鞘で獣の胴を打った。
手加減はしていない。
すれば自分が怪我をするだけだ。
呻き、よろめいた獣の鼻先へ切っ先を突きつける。
獣は虚を突かれたような顔をし、視線を上げて唸った。
「――勝負あったな」
冷静に告げる。
その声音は突きつけた刃のように、揺ぎ無く響いた。
踏みしめた靴の下は、爪先を覆うほどの長さの草が生い茂っていた。
街道を少し外れた森の中、そこだけが開けた草原になっている。
一陣の風が吹いた。
項で一つに纏めた髪が、後へとなびく。
ぐ、と僅かに左手に力を込める。
構えた剣の切っ先は、正確に相手を捉えたまま、揺るがない。
対峙するのは薄茶色の大きな獣。
見た目は大型の犬、といったところか。
だが長く伸びた尾は二つに分かれ、爛と輝く瞳は三つあった。
じり、と双方が円を描くように動く。
張り詰められた空気。
その場には息をするのも憚られるような気迫が満ちていたが、双方の表情は平静を保っていた。
風が足元の草をなぎ倒していく。
風が凪ぐ、一瞬の後、双方は同時に動いた。
弧を描き迫る刃を爪で弾き、獣が踊りかかる。
身を捻って牙を躱し、鞘で打ち払う。
獣は喉の奥で低く唸ると、僅かに距離を開けた。
距離をとって飛び掛るのだろうか。
それ以上は深く考えずに踏み込んでいた。
剣を振るう。
だが獣は敏捷な身のこなしで避けた。
それを追うように、もう一歩、強く踏み込む。
振りぬいた勢いのまま身体を半回転させ、逆手に持っていた鞘で獣の胴を打った。
手加減はしていない。
すれば自分が怪我をするだけだ。
呻き、よろめいた獣の鼻先へ切っ先を突きつける。
獣は虚を突かれたような顔をし、視線を上げて唸った。
「――勝負あったな」
冷静に告げる。
その声音は突きつけた刃のように、揺ぎ無く響いた。
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管理者:西(逆凪)、または沖縞
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