小説用倉庫。
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「……若き魔法士・・・・・・ファレル=リィン=ゼードが安らかに眠らんことを……」
弔いの鐘の音が。
耳に、つく。
ざわめき。
人の話す声。
棺に入れられたファレルはまるで眠っているようで。
すぐに起きてきそうなほどに。
綺麗な、顔を。
薄く微笑ませている。
彼女はもう二度とその口を開くことも、目を開けることもないのだ。
棺を囲んで、魔法学院の生徒たちが囁く。
真ん中の地位を示す、緑のラインの入ったローブと、緑色のブローチをしている。
下の地位は赤、上の地位は青になる。
最高学年の者はごく少数だ。
三大大陸のひとつ、ユーディリス大陸の真ん中ほどに位置するミッシュローアの近くに、この学院は存在する。
現界でも少数の魔法氏たちを育成するこの学院は、ユーディリス大陸の中でも特別の位置にあった。
神聖なる魔法学院。
その中でも主席を取った者はかなりの確率で王都に仕える。
だが最近は治安が悪くなってきており、しばしば野党まがいの者が出始めていた。
魔法を使う集中力を欠けば、魔法士たちは無力だ。
それこそ赤子を殺すより簡単だろう。
だからあの時、大半の魔法士たちは何もできなかった。
奇襲。
深夜にたたき起こされ、何もわからぬうちに。
魔法士たちの半数以上が、命を落した。
そして主席の片方も。
「……まさかファレルが死ぬなんてな……」
「この学院の主席なのに……」
「そういえば、相方のラインシェーグはどうしたんだ? 姿が見えないようだが……」
「……!」
遠くで、叫ぶ声が聞こえる。
そちらを見て、学生たちがざわめいた。
「ラインシェーグだ。……何を騒いでいるんだ?」
ざわざわと話す学生たちのところまで、声が届いてくる。
「離せ……ッ! ファレルは……!」
ラインシェーグは、押し留めようとする教師たちを振りほどこうとしながら近づいてきた。
普段は整えられた緑に近い黒髪を、振り乱している。
「やめなさい!」
「どうか、落ち着いて……」
暴れようとするラインシェーグの前で、ファレルの入った棺が運ばれようとしていた。
棺はこのまま墓地の方まで運ばれて行く。
「……ファレル……ッ!」
「ラインシェーグ! ……ファレルは死んだんだよ……!」
彼女が。
死んだ?
そんなのは、信じない。
だって、あんなに、綺麗な死に顔なんて。
叫ぶラインシェーグを無視して、棺が遠ざかっていく。
弔いの鐘の音が耳に入る。
それは酷く耳障りで。
体の力が抜けていく。
ラインシェーグはその場に膝をついた。
「さぁ、戻りなさい。もうすぐ次の授業でしょう」
傍らに立つ教師の言葉も、ただ抜けていくだけで。
何も考えられず。
呆然と。
ただ彼女の微笑みだけが、瞼の裏に映る。
弔いの鐘の音が。
耳に、つく。
ざわめき。
人の話す声。
棺に入れられたファレルはまるで眠っているようで。
すぐに起きてきそうなほどに。
綺麗な、顔を。
薄く微笑ませている。
彼女はもう二度とその口を開くことも、目を開けることもないのだ。
棺を囲んで、魔法学院の生徒たちが囁く。
真ん中の地位を示す、緑のラインの入ったローブと、緑色のブローチをしている。
下の地位は赤、上の地位は青になる。
最高学年の者はごく少数だ。
三大大陸のひとつ、ユーディリス大陸の真ん中ほどに位置するミッシュローアの近くに、この学院は存在する。
現界でも少数の魔法氏たちを育成するこの学院は、ユーディリス大陸の中でも特別の位置にあった。
神聖なる魔法学院。
その中でも主席を取った者はかなりの確率で王都に仕える。
だが最近は治安が悪くなってきており、しばしば野党まがいの者が出始めていた。
魔法を使う集中力を欠けば、魔法士たちは無力だ。
それこそ赤子を殺すより簡単だろう。
だからあの時、大半の魔法士たちは何もできなかった。
奇襲。
深夜にたたき起こされ、何もわからぬうちに。
魔法士たちの半数以上が、命を落した。
そして主席の片方も。
「……まさかファレルが死ぬなんてな……」
「この学院の主席なのに……」
「そういえば、相方のラインシェーグはどうしたんだ? 姿が見えないようだが……」
「……!」
遠くで、叫ぶ声が聞こえる。
そちらを見て、学生たちがざわめいた。
「ラインシェーグだ。……何を騒いでいるんだ?」
ざわざわと話す学生たちのところまで、声が届いてくる。
「離せ……ッ! ファレルは……!」
ラインシェーグは、押し留めようとする教師たちを振りほどこうとしながら近づいてきた。
普段は整えられた緑に近い黒髪を、振り乱している。
「やめなさい!」
「どうか、落ち着いて……」
暴れようとするラインシェーグの前で、ファレルの入った棺が運ばれようとしていた。
棺はこのまま墓地の方まで運ばれて行く。
「……ファレル……ッ!」
「ラインシェーグ! ……ファレルは死んだんだよ……!」
彼女が。
死んだ?
そんなのは、信じない。
だって、あんなに、綺麗な死に顔なんて。
叫ぶラインシェーグを無視して、棺が遠ざかっていく。
弔いの鐘の音が耳に入る。
それは酷く耳障りで。
体の力が抜けていく。
ラインシェーグはその場に膝をついた。
「さぁ、戻りなさい。もうすぐ次の授業でしょう」
傍らに立つ教師の言葉も、ただ抜けていくだけで。
何も考えられず。
呆然と。
ただ彼女の微笑みだけが、瞼の裏に映る。
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