忍者ブログ
小説用倉庫。
HOME 235  236  237  238  239  240  241  242  243  244  245 
2024/11/22 (Fri)
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2012/02/11 (Sat)
 やがてその沈黙を打ち破るかのようにオルカーンが伸びをしながら言った。
「まぁ、此処で考え込んでても仕方ないだろうし、まずは俺たちの目的を達成してから考えようぜ」
「……そうだな。ルートはどうする?」
 言いながら、改めて地図を眺める。
「とりあえずウェリアに行って、其処から海路でシュイザかなぁ」
「そのままイーアリーサに行けないの?」
 イーアリーサは北の海沿いだ。
 船でそのまま行けるのではないかと、そういうことだろう。

「……無理だ。北は海流が激しいし、船をつける岸が無いからな」
 場所を思い出しながらルベアが言う。
 この中であそこまで行った事があるのは彼だけだ。

 否。
 レインも、行った事があるかもしれないが。

「まぁ街道があるし、楽といえば楽なんじゃないかな」
 のんびりと言うオルカーンを、二人が驚いたように見た。
「……」

 ややあって、オルカーンがぼそりと呟く。
「……悪かったよ」

 人を襲う魔獣と同様の姿を持つオルカーンは、普通に街道を歩くとかなりの騒ぎを起こす。
 時には討伐隊まで組まれるほどだ。
 というよりその魔獣と同じ種族なのだが。
 元々この種族は知性を持たず、手当たり次第に人を襲う。
 退治しようにも生半な相手では返り討ちにあうのが関の山だ。
 そんな中、オルカーンのような存在は極めて稀で、一般の人にはあまり受け入れてもらえない。

「んー、額の目を隠してみるとか」
「……ついでに尻尾も結ぶか。そうすればそう見分けはつかなさそうだ」
 ルベアがにやりと笑ってレインの提案に付け足す。
 頭を伏せ、オルカーンは喉の奥で唸った。
「以前それで失敗したろ。またあんな大騒ぎになるのは嫌だよ」
 辟易した様子にルベアとレインが笑う。
「街道に近いところを選べばそれなりに楽だろう。そろそろ出発するぞ。今日中に川向こうに行きたい」
 言って、ルベアは手早く荷物をまとめた。
 地図も折りたたんで仕舞う。
 レインも荷物をまとめながら、ふと首を傾げた。
「エールを通るの?」
「いや。少し南下すれば橋があるはずだ。其処を渡る」
「え、橋?」
 驚いたように身を起こすオルカーンを見て、ルベアが苦笑する。
「心配しなくても、人通りはそう多くない。騒がれる事はあまり無いだろう」
 準備が整ったところで周りを見回す。
 人が居たという気配は特に残っていない。
 残してはいない。
 問題は無いだろう。

「行くぞ」
 促して、その場を後にする。
 特に何も無ければ、明日中にはウェリアに着くはずだ。
Comment
Name
Title
Color
Mail
URL
Comment   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
Password
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
HOME 235  236  237  238  239  240  241  242  243  244  245 
HOME
Copyright(C)2001-2012 Nishi.All right reserved.
倉庫
管理者:西(逆凪)、または沖縞

文章の無断転載及び複製は禁止。
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
最新記事
[長編] Reparationem damni  (03/12)
[長編] Reparationem damni  (03/12)
[長編] Reparationem damni  (10/19)
[長編] Reparationem damni  (10/19)
[長編] Reparationem damni  (09/07)
忍者ブログ [PR]
PR