小説用倉庫。
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目的、と言ってもそう大仰なものではない。
殆ど成り行きで同行する事になった、レインという人物に関するものだ。
彼には記憶が無いらしい。
生活する上で必要な事はそれなりに知っていたが、地名や物の事は殆ど覚えていないようだった。
大陸があることすらよくわかっていなかったらしい。
まるでこの世界を知らないかのような、そんな気がしたのを覚えている。
記憶を探して各地を旅するのは、自分の目的とも合致する。
そうでなければこんな厄介そうな相手と共に旅するなど考えなかっただろう。
ふと、同行している二人に視線を送る。
リズミカルに足を運びながら、オルカーンが先頭を歩いている。
最初に出会った時は他の魔獣のように殺そうと思った。
なのに思ったより手強くて苦戦し、結局は相打ちになった。
その後、少し話をして、何故か一緒に行動する事になった。
暇だから、と本人は言っていたが、本当の目的はよく知らない。
彼も、自分の目的を知らないのだから相子だろう。
もう一人の同行者、レインを見た。
何処で取ったのか先に葉のいくつかついた枝を持っている。
彼は、行き倒れていたのをオルカーンが見つけてきたのだ。
何処の地域でも見かけない、薄い銀色の髪をしている。
瞳は紫がかった青。
見るたびに、ちりりと心臓がうずく。
似た人物を、見た事があるからだ。
彼の記憶が無い事を知り、各地を回りながら聞くようになった。
情報を集め、知っていそうな人物を尋ねたりした。
最初は次の目的地や、会う予定の人物を伏せたりはしなかった。
記憶を戻す目的も、伏せはしなかった。
だが、聞き込むにつれて次の相手先が行方不明になったりした。
おかしい、と思ったのは、次に会うはずだった人物が惨殺され、魔獣の襲撃を受けてからだ。
本来徒党を組まないはずの種族が、群れをなして襲ってきた時はさすがに驚いた。
全て撃退はできたが。
それからは次に行く場所は伏せ、極力人目につかない場所を選んで行動するようにした。
そうしてからは襲撃も殆ど無くなった為、以来目的地は誰にも言わないようにしてきた。
知っている人物が居たのは驚いたが。
ふぅ、と溜め息をついてその人物の事を思い出す。
名前はディリク。
エールの町で道具屋を営んでいる。
道具屋、といっても置いてあるのは普通の店にあるようなものではない。
主に呪術系の道具が多いらしいが、魔法を使わないルベアには用途はさっぱりだ。
裏道にある為に知名度は高くない。
鬱蒼とした裏道の、何の変哲もない扉が入り口だ。
看板も何もあったものではない。
どことなく胡散臭い感じがするが、何故かレインは懐いているみたいだった。
ふと視線を感じて目を上げると、レインがこちらを見ていた。
人形のような無表情に、ぎくりとした。
だがそれは一瞬で、直ぐに相好を崩すと、手に持った枝を振りながら言った。
「ディリクがね、何かあったらおいでって言ってたよ」
「……何か?」
怪訝そうに問い返すと、レインはそう、とだけ言って前を歩くオルカーンの元へ走っていった。
胸の奥に不安が広がる。
何があるのだろう。
頭を左右に振ると、嫌な予感を振り切るように二人を追った。
イーアリーサは失せ物探しで高名な人物がいるという。
その人物に会えば何かわかるかもしれない。
そう願いながら、日が落ちる前にと足を速めて行った。
殆ど成り行きで同行する事になった、レインという人物に関するものだ。
彼には記憶が無いらしい。
生活する上で必要な事はそれなりに知っていたが、地名や物の事は殆ど覚えていないようだった。
大陸があることすらよくわかっていなかったらしい。
まるでこの世界を知らないかのような、そんな気がしたのを覚えている。
記憶を探して各地を旅するのは、自分の目的とも合致する。
そうでなければこんな厄介そうな相手と共に旅するなど考えなかっただろう。
ふと、同行している二人に視線を送る。
リズミカルに足を運びながら、オルカーンが先頭を歩いている。
最初に出会った時は他の魔獣のように殺そうと思った。
なのに思ったより手強くて苦戦し、結局は相打ちになった。
その後、少し話をして、何故か一緒に行動する事になった。
暇だから、と本人は言っていたが、本当の目的はよく知らない。
彼も、自分の目的を知らないのだから相子だろう。
もう一人の同行者、レインを見た。
何処で取ったのか先に葉のいくつかついた枝を持っている。
彼は、行き倒れていたのをオルカーンが見つけてきたのだ。
何処の地域でも見かけない、薄い銀色の髪をしている。
瞳は紫がかった青。
見るたびに、ちりりと心臓がうずく。
似た人物を、見た事があるからだ。
彼の記憶が無い事を知り、各地を回りながら聞くようになった。
情報を集め、知っていそうな人物を尋ねたりした。
最初は次の目的地や、会う予定の人物を伏せたりはしなかった。
記憶を戻す目的も、伏せはしなかった。
だが、聞き込むにつれて次の相手先が行方不明になったりした。
おかしい、と思ったのは、次に会うはずだった人物が惨殺され、魔獣の襲撃を受けてからだ。
本来徒党を組まないはずの種族が、群れをなして襲ってきた時はさすがに驚いた。
全て撃退はできたが。
それからは次に行く場所は伏せ、極力人目につかない場所を選んで行動するようにした。
そうしてからは襲撃も殆ど無くなった為、以来目的地は誰にも言わないようにしてきた。
知っている人物が居たのは驚いたが。
ふぅ、と溜め息をついてその人物の事を思い出す。
名前はディリク。
エールの町で道具屋を営んでいる。
道具屋、といっても置いてあるのは普通の店にあるようなものではない。
主に呪術系の道具が多いらしいが、魔法を使わないルベアには用途はさっぱりだ。
裏道にある為に知名度は高くない。
鬱蒼とした裏道の、何の変哲もない扉が入り口だ。
看板も何もあったものではない。
どことなく胡散臭い感じがするが、何故かレインは懐いているみたいだった。
ふと視線を感じて目を上げると、レインがこちらを見ていた。
人形のような無表情に、ぎくりとした。
だがそれは一瞬で、直ぐに相好を崩すと、手に持った枝を振りながら言った。
「ディリクがね、何かあったらおいでって言ってたよ」
「……何か?」
怪訝そうに問い返すと、レインはそう、とだけ言って前を歩くオルカーンの元へ走っていった。
胸の奥に不安が広がる。
何があるのだろう。
頭を左右に振ると、嫌な予感を振り切るように二人を追った。
イーアリーサは失せ物探しで高名な人物がいるという。
その人物に会えば何かわかるかもしれない。
そう願いながら、日が落ちる前にと足を速めて行った。
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