小説用倉庫。
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「うぁー。やっと着いたねー」
レインが大仰な溜め息と共に言う。
「思ったより早く着いたな」
「まぁ無事に、かなぁ」
あれだけ警戒して特に何も無かったので何とも拍子抜けした気分だ。
何事も無くて幸いだと思うべきなのだろうが。
イーアリーサの町は直ぐ目の前だ。
「寒いから早く行こうよ」
レインが促し、一行は改めて荷物を担ぎなおした。
一年の内半分以上を雪に覆われるこの北の地方では、イーアリーサだけが町として機能している。
人が住むに適さない土地を、魔法で快適にしているという。
だからあの町は魔法使いの町、と呼ばれる事も多い。
今も足元は雪が深い。
遠目から見ても特に何が違うとは判らないが、町に一歩足を踏み入れて気づいた。
雪は相変わらず降っているが、肌に感じる寒さは激減していた。
「ぅわッ!」
「痛!」
二人の声に振り返る。
見ると、二人とも怪訝そうな顔で首を傾げていた。
「何やってんだ?」
「ばちっていって痛いー」
「結界みたいだ。入れないのかなぁ」
要領を得ないレインの言葉に、オルカーンが結論付ける。
「俺は何とも無かったぞ」
「差別だー」
むくれて、レインが手を伸ばす。
途端、バチッと火花と共に手を引く。
オルカーンも同様に弾かれているらしい。
「お困りですか?」
ぎくり、として振り返る。
周囲に人影は無かった。
一瞬前までは誰もいなかったはずだ。
しかし、それは其処にいた。
先程から居たかのように微笑むその人物は、見た目は普通の青年のそれだった。
深い青色の瞳を何処か楽しそうに細め、彼はこちらを見ていた。
印象的なのは、彼のその髪の色だ。
まるで周囲の雪に溶けるかのような、白色をしていた。
レインのようにほんの少し青みがかった銀髪ではない。
ただ、白い。
大陸の人間としては酷く珍しい。
大抵はルベアのような黒髪や、茶色、金色が多い。
警戒するルベアの後ろから、レインが声をかけた。
「ねー、入れないよー」
その言葉に、青年は僅かに困ったような表情をして言った。
「魔法を使用する方や、それに関わっている方を阻むように出来ているんです。……崩されては困りますから」
「オルカーンは分かるけど何でオレまで入れないの?」
不思議そうにレインが問うと、青年は酷く驚いた顔をした。
笑んだ状態から殆ど表情を変えなかったので、それは何だか珍しいもののような気がした。
青年はルベア達に近づき過ぎない位置に立っている。
一歩踏み出せば剣は届くだろう。
だが、相手の出方が分からない。
剣の柄に手を掛け、いつでも反応できるように呼吸を整えた。
レインが大仰な溜め息と共に言う。
「思ったより早く着いたな」
「まぁ無事に、かなぁ」
あれだけ警戒して特に何も無かったので何とも拍子抜けした気分だ。
何事も無くて幸いだと思うべきなのだろうが。
イーアリーサの町は直ぐ目の前だ。
「寒いから早く行こうよ」
レインが促し、一行は改めて荷物を担ぎなおした。
一年の内半分以上を雪に覆われるこの北の地方では、イーアリーサだけが町として機能している。
人が住むに適さない土地を、魔法で快適にしているという。
だからあの町は魔法使いの町、と呼ばれる事も多い。
今も足元は雪が深い。
遠目から見ても特に何が違うとは判らないが、町に一歩足を踏み入れて気づいた。
雪は相変わらず降っているが、肌に感じる寒さは激減していた。
「ぅわッ!」
「痛!」
二人の声に振り返る。
見ると、二人とも怪訝そうな顔で首を傾げていた。
「何やってんだ?」
「ばちっていって痛いー」
「結界みたいだ。入れないのかなぁ」
要領を得ないレインの言葉に、オルカーンが結論付ける。
「俺は何とも無かったぞ」
「差別だー」
むくれて、レインが手を伸ばす。
途端、バチッと火花と共に手を引く。
オルカーンも同様に弾かれているらしい。
「お困りですか?」
ぎくり、として振り返る。
周囲に人影は無かった。
一瞬前までは誰もいなかったはずだ。
しかし、それは其処にいた。
先程から居たかのように微笑むその人物は、見た目は普通の青年のそれだった。
深い青色の瞳を何処か楽しそうに細め、彼はこちらを見ていた。
印象的なのは、彼のその髪の色だ。
まるで周囲の雪に溶けるかのような、白色をしていた。
レインのようにほんの少し青みがかった銀髪ではない。
ただ、白い。
大陸の人間としては酷く珍しい。
大抵はルベアのような黒髪や、茶色、金色が多い。
警戒するルベアの後ろから、レインが声をかけた。
「ねー、入れないよー」
その言葉に、青年は僅かに困ったような表情をして言った。
「魔法を使用する方や、それに関わっている方を阻むように出来ているんです。……崩されては困りますから」
「オルカーンは分かるけど何でオレまで入れないの?」
不思議そうにレインが問うと、青年は酷く驚いた顔をした。
笑んだ状態から殆ど表情を変えなかったので、それは何だか珍しいもののような気がした。
青年はルベア達に近づき過ぎない位置に立っている。
一歩踏み出せば剣は届くだろう。
だが、相手の出方が分からない。
剣の柄に手を掛け、いつでも反応できるように呼吸を整えた。
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