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2012/02/11 (Sat)
 青年は驚きから立ち直ると、首を僅かに傾げて言った。
「貴方は魔法を使うでしょう?」

 一瞬、思わずレインの顔を見てしまった。
 だが、彼もぽかんとした表情をしている。
 オルカーンはそんな二人を見て驚いているのか、奇妙な表情をしていた。

 三人の反応を見て、途方にくれたように青年が言った。
「……知らなかったんですか?」
「……お前一言もそんなこと言わなかったじゃないか」
「え、ていうかそうなの?」
「何で二人とも知らないんだよ」
「そんな素振り無かっただろう」
「だって使った覚えないよー」
「何でお前知ってたんだ」
「纏う気配違うし。分かるだろルベア」
「俺はそういうのは分からないぞ」
 不意に、背後で小さく吹き出す音が聞こえた。
 見ると、青年が口元に手を当てて面白そうにこちらを見ていた。

「……確かに、リィの言った通りだ」
 青年は小声で呟くと、笑みを湛えたまま姿勢を正した。
「貴方達の、目的を聞きましょう」
 ルベアが見定めるように青年を見ている横で、レインが手を上げた。
「あのねー俺の」
「レイン!」
 オルカーンとルベアが同時に遮る。
「お前何言う気だよ」
「だって聞かれたから」
「だからって簡単に答えるな。何の為に秘してると思ってる」
 二人に窘められ、レインは困ったように青年を見た。
 青年は静かに三人を見ていた。

「聞かれて、正直に答えると思っていたのか?」
「いいえ。ですが、何も聞かずに通すわけにもいきませんから」
 低く、凄むようなルベアの問いに、青年がさらりと答える。
 二人が見詰め合うのを、レインがおろおろと見ている。

 その時、オルカーンが口を開いた。
「俺達は、シェンディルって人に会いに来たんだ」
「オルカーン!?」
 レインが驚いたように声を上げた。
 非難するようなルベアの視線に、オルカーンが頭を伏せる。
「此処で言い合ってても仕方ないだろ。それに此処寒いんだよ」
 ルベアが素早く視線を戻すと、青年は一歩、近づいてきていた。
「分かりました。貴方達の、町への侵入を許します」
 青年が厳かに宣言すると、彼の身体が淡く輝いた。
 ゆらり、と空間が歪む。
 眩暈にも似た感覚に、足元がふらつく。

 けれどそれは、始まったときと同じように唐突に終わった。

「どうぞ。もう入れますよ」

 にこりと言われた言葉にレインが恐る恐る手を伸ばす。
 だがその手は弾かれる事無く通り抜けられたようだ。
 驚いた顔をしてレインが一歩踏み出し、ルベアの隣に並ぶ。
 オルカーンもそれに続いた。
 二人が通った事を確認すると青年は一つ頷いて、片手を軽く振った。
「ご案内しましょう。ついてきてください」
 そう言うと青年は背を向けて歩き出した。
 警戒しながらルベアが続く。
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