小説用倉庫。
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ふと青年が肩越しに振り返った。
「そういえば、まだ名乗っていませんでしたね。……私はウェンラーディルといいます。どうぞ、ウェル、と」
「オレはレインていうの。そんでルベアと、オルカーン」
後を追いかけながらレインが応える。
一行は町の中心に向かっているようだった。
「この中ってあったかいね。でも雪は通るんだ」
空を見ながら言うレインに、ウェルが笑う。
「家の中はもっと暖かいですよ。積雪量も外よりは少ないんです」
「へぇ。どうやってるの?」
ウェルは困ったように首を傾げた。
「説明するのは……少し、難しいですね」
「全部魔法なの?」
「えぇ。造形を使った複合魔法ですから、この町自体が魔法といえるかもしれません」
レインが驚いたように周囲を見回す。
「でもこの町結構大きいよ? これ全部?」
何故か嬉しそうに、ウェルが笑って頷く。
「随分大掛かりなんだなー」
二人の話を聞いていたオルカーンが声を上げる。
「見た目が大きいだけですよ。魔法を使うものにとっては仕掛けは単純だと思います」
言って、ウェルは足を止めた。
其処は町の中心のようだった。
一際大きな家が、目の前に建っている。
同心円状に建ち並ぶ家々の、ほぼ中心にあたるようだ。
「まずは長に会ってもらいます。……お客様ですから」
笑んで建物の扉に目を向けると、不意に扉が開いた。
「……ん?」
扉を内側から開けた人物は、こちらを見て訝しげに眉をひそめた。
「やぁ、ラナ」
「……ウェル。誰だ、そいつら?」
にこやかなウェルと対照的に不機嫌そうな顔をしたその人。
「……同じ顔?」
思わず声が漏れた。
二人は表情を除けば殆ど違いは無かった。
ただ、瞳の色が違うだけだ。
ウェルが深い青色に対し、このラナという青年は鮮やかな緑色をしている。
「……あぁ。そういやリィが呼んでたぜ。いつものところにいるって」
肩越しに背後を指差し、そのまま立ち去ろうとするラナへ、ウェルが声を掛けた。
「ラナ! 何処へ?」
「見回り」
短い返事と共に、その姿が掻き消えた。
「わ、消えたよ?」
「えぇ、ですが町の何処かには居るでしょう」
動じることなく、ウェルは改めて扉を大きく引き開けた。
「さぁ、どうぞ」
ほんの僅かの躊躇いを振り切って一歩中に踏み込む。 中に入って直ぐ、空気の違いに気づいた。
「わ、あったかい」
隣でレインが声を洩らす。
中は驚くほど暖かかった。
外が雪であることが信じられないくらいの。
暖炉のような暖房とは少し違う。
暑すぎず、寒すぎない、丁度良い温度だ。
「これも、魔法、か?」
皮肉な思いを込めてウェルへと尋ねる。
彼は笑みをほんの少し深くすると、頷いて答えた。
「殆どの事柄が、ここでは魔法でできているんですよ」
当たり前の事だ、というウェルの態度に、ルベアは微かに眉をひそめる。
成る程此処では当たり前の事だろう。
例え他の町で見かけないことだとしても。
そもそも魔法を使える人間のほうが少ない。
だからこそ、此処まで大規模に魔法を使っていることに違和感がある。
そんな不信な感情を読み取ったのか、ウェルは苦笑すると、扉を閉めて奥へと促した。
「そういえば、まだ名乗っていませんでしたね。……私はウェンラーディルといいます。どうぞ、ウェル、と」
「オレはレインていうの。そんでルベアと、オルカーン」
後を追いかけながらレインが応える。
一行は町の中心に向かっているようだった。
「この中ってあったかいね。でも雪は通るんだ」
空を見ながら言うレインに、ウェルが笑う。
「家の中はもっと暖かいですよ。積雪量も外よりは少ないんです」
「へぇ。どうやってるの?」
ウェルは困ったように首を傾げた。
「説明するのは……少し、難しいですね」
「全部魔法なの?」
「えぇ。造形を使った複合魔法ですから、この町自体が魔法といえるかもしれません」
レインが驚いたように周囲を見回す。
「でもこの町結構大きいよ? これ全部?」
何故か嬉しそうに、ウェルが笑って頷く。
「随分大掛かりなんだなー」
二人の話を聞いていたオルカーンが声を上げる。
「見た目が大きいだけですよ。魔法を使うものにとっては仕掛けは単純だと思います」
言って、ウェルは足を止めた。
其処は町の中心のようだった。
一際大きな家が、目の前に建っている。
同心円状に建ち並ぶ家々の、ほぼ中心にあたるようだ。
「まずは長に会ってもらいます。……お客様ですから」
笑んで建物の扉に目を向けると、不意に扉が開いた。
「……ん?」
扉を内側から開けた人物は、こちらを見て訝しげに眉をひそめた。
「やぁ、ラナ」
「……ウェル。誰だ、そいつら?」
にこやかなウェルと対照的に不機嫌そうな顔をしたその人。
「……同じ顔?」
思わず声が漏れた。
二人は表情を除けば殆ど違いは無かった。
ただ、瞳の色が違うだけだ。
ウェルが深い青色に対し、このラナという青年は鮮やかな緑色をしている。
「……あぁ。そういやリィが呼んでたぜ。いつものところにいるって」
肩越しに背後を指差し、そのまま立ち去ろうとするラナへ、ウェルが声を掛けた。
「ラナ! 何処へ?」
「見回り」
短い返事と共に、その姿が掻き消えた。
「わ、消えたよ?」
「えぇ、ですが町の何処かには居るでしょう」
動じることなく、ウェルは改めて扉を大きく引き開けた。
「さぁ、どうぞ」
ほんの僅かの躊躇いを振り切って一歩中に踏み込む。 中に入って直ぐ、空気の違いに気づいた。
「わ、あったかい」
隣でレインが声を洩らす。
中は驚くほど暖かかった。
外が雪であることが信じられないくらいの。
暖炉のような暖房とは少し違う。
暑すぎず、寒すぎない、丁度良い温度だ。
「これも、魔法、か?」
皮肉な思いを込めてウェルへと尋ねる。
彼は笑みをほんの少し深くすると、頷いて答えた。
「殆どの事柄が、ここでは魔法でできているんですよ」
当たり前の事だ、というウェルの態度に、ルベアは微かに眉をひそめる。
成る程此処では当たり前の事だろう。
例え他の町で見かけないことだとしても。
そもそも魔法を使える人間のほうが少ない。
だからこそ、此処まで大規模に魔法を使っていることに違和感がある。
そんな不信な感情を読み取ったのか、ウェルは苦笑すると、扉を閉めて奥へと促した。
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