小説用倉庫。
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目を開けるとそこは既に別の場所だった。
見覚えのある街角。
港町。
シュイザだ。
オルカーンが身を強張らせる。
人気のない路地裏でよかった。
人通りの多いところにいきなり現れたら町の者は恐慌状態になるだろう。
手馴れた仕草でルベアはオルカーンの額に布を巻くと、にやりと笑って言った。
「いざとなったら脅しが使えるな」
「余計に足止めを食いそうだよ」
オルカーンが嫌そうに返す。
彼は騒ぎになるのはあまり好まない。
額の目を隠されるのもあまり好まないが、これは仕方がないと諦めているらしい。
船着場に行き、事情を説明すると直ぐに船を出してもらえた。
船頭はオルカーンを頭の良い犬だと思い込んでくれたらしい。
急いでいるのが分かったのか、船頭は予定よりも早く港町につけてくれた。
其処からエールまでは歩いて3日程。
どちらからとも無く顔を見合わせ、二人は走り出した。
馬を使うことも考えたが、オルカーンが居ると怯えてしまい使い物にならなくなってしまうので結局自分の足で何とかするしかなくなる。
途中何度か休憩を挟みながら、最短距離でエールへ向かう。
シェンディルのおかげかレインは特に何の変化も無いように見えた。
皮膚の色が変色したり呼吸が止まったりと言うことは無い。
二人共肩で息をしながら、エールについたのは翌日の夕方頃だった。
かかった時間は1日半。
「思ったより、早く着いたな」
はぁ、と溜め息とともにオルカーンが言った。
さすがに疲れたようだ。
ルベアは頷く事で答え、先に立って歩き出した。
少し休みたいところだが、それでは早く来た意味が無い。
オルカーンは目的の場所を知らないので、自然とルベアが先頭になる。
町は以前来た時と同じように、賑やかだった。
通りを行く者や露店商人などがオルカーンを興味深げに見ていたが、ルベアがそちらを睨むと慌てて視線を逸らした。
「この先だ」
言って、細い路地に入る。
オルカーンが躊躇いがちに言った。
「……本当に此処?」
片眉をあげて振り返り、路地へと視線を戻す。
人が二人並んで通ればいっぱいの幅。
路地の奥は暗く、微妙に婉曲している為、先を見通すことは困難だ。
普通ならこの路地を抜けた先に店があると思うだろう。
だが目指す店はこの路地の奥まった所だ。
「道は覚えている」
再び歩き始めたルベアを追って、オルカーンも溜め息混じりに歩を進めた。
爪が石畳に当たる、硬質な音が辺りに響く。
奥に行くにつれ、暗くなっていく。
其処彼処に人の気配を感じ、オルカーンは警戒しながら周りを見回した。
「害のあるものは居ないはずだ。そんなに警戒しなくても良い」
ルベアが小声で声をかけるが、オルカーンはまだ不安そうだ。
更に闇が深まってきた頃、漸くルベアが歩調を緩めた。
見覚えのある街角。
港町。
シュイザだ。
オルカーンが身を強張らせる。
人気のない路地裏でよかった。
人通りの多いところにいきなり現れたら町の者は恐慌状態になるだろう。
手馴れた仕草でルベアはオルカーンの額に布を巻くと、にやりと笑って言った。
「いざとなったら脅しが使えるな」
「余計に足止めを食いそうだよ」
オルカーンが嫌そうに返す。
彼は騒ぎになるのはあまり好まない。
額の目を隠されるのもあまり好まないが、これは仕方がないと諦めているらしい。
船着場に行き、事情を説明すると直ぐに船を出してもらえた。
船頭はオルカーンを頭の良い犬だと思い込んでくれたらしい。
急いでいるのが分かったのか、船頭は予定よりも早く港町につけてくれた。
其処からエールまでは歩いて3日程。
どちらからとも無く顔を見合わせ、二人は走り出した。
馬を使うことも考えたが、オルカーンが居ると怯えてしまい使い物にならなくなってしまうので結局自分の足で何とかするしかなくなる。
途中何度か休憩を挟みながら、最短距離でエールへ向かう。
シェンディルのおかげかレインは特に何の変化も無いように見えた。
皮膚の色が変色したり呼吸が止まったりと言うことは無い。
二人共肩で息をしながら、エールについたのは翌日の夕方頃だった。
かかった時間は1日半。
「思ったより、早く着いたな」
はぁ、と溜め息とともにオルカーンが言った。
さすがに疲れたようだ。
ルベアは頷く事で答え、先に立って歩き出した。
少し休みたいところだが、それでは早く来た意味が無い。
オルカーンは目的の場所を知らないので、自然とルベアが先頭になる。
町は以前来た時と同じように、賑やかだった。
通りを行く者や露店商人などがオルカーンを興味深げに見ていたが、ルベアがそちらを睨むと慌てて視線を逸らした。
「この先だ」
言って、細い路地に入る。
オルカーンが躊躇いがちに言った。
「……本当に此処?」
片眉をあげて振り返り、路地へと視線を戻す。
人が二人並んで通ればいっぱいの幅。
路地の奥は暗く、微妙に婉曲している為、先を見通すことは困難だ。
普通ならこの路地を抜けた先に店があると思うだろう。
だが目指す店はこの路地の奥まった所だ。
「道は覚えている」
再び歩き始めたルベアを追って、オルカーンも溜め息混じりに歩を進めた。
爪が石畳に当たる、硬質な音が辺りに響く。
奥に行くにつれ、暗くなっていく。
其処彼処に人の気配を感じ、オルカーンは警戒しながら周りを見回した。
「害のあるものは居ないはずだ。そんなに警戒しなくても良い」
ルベアが小声で声をかけるが、オルカーンはまだ不安そうだ。
更に闇が深まってきた頃、漸くルベアが歩調を緩めた。
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