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2012/02/27 (Mon)
「何か意外とあっさりだったな」
 オルカーンが黒い地面を見ながら言う。
 頷く事でそれに答え、ルベアはシェンディルへ視線を移した。
「助力を頼むほどか?」
 シェンディルは服についた葉や泥を叩き落としながら、顔を顰めて言った。
「わたくし、あのようなドロドロと蠢くものは好きではありませんの。出来れば見たくも無いですわ」
 成る程ね、とオルカーンが鼻を鳴らす。
 半ば呆れたようにシェンディルに、次いでその後ろに視線を送り、ルベアが口を開いた。
「オルカーン。レインは?」
「少し離れたところに居る」
 オルカーンの視線の先を見やって、シェンディルが、あぁ、と呟いた。
「貴葉石樹の生えている辺りですわ」
 何気ないふうな口調に、ルベアが眉を顰める。
 次いで、苦虫を噛み潰したような表情でそちらに歩き出した。
「レインは貴葉石樹のことを何も知らない。不用意に抜けばどうなるかも、な」
 低く吐き出された言葉に、シェンディルが顔色を変える。
「教えておかなかったんですの!?」
「単独で辿り着くとは思っていなかった」
 声には何処か悔やむ響きがあったが、表情に大した変化は無い。
 盛大な音を立てて茂みを掻き分け、前に進んでいくと、レインの銀色の頭が見えた。
 どうやらしゃがんでいるらしい。
 嫌な予感を覚えつつ、邪魔な茂みを退かす。
 茂みから一歩抜け出す。
 前方にレインがしゃがんでいるのが見えた。
 そして、その手には。
「レイン! 止めろ!」
 レインは振り向きざま、花の咲いた貴葉石樹を地面から引き抜いた。
 駆け寄ろうとしたルベアの腕を、小さな手が掴んで引き寄せる。
 苛立たしげに見ると、シェンディルは真剣な表情で腕を掴んでいるのとは反対の手を前に突き出していた。
「下がってくださいまし。花の咲いた貴葉石樹は、最も危険ですのに……!」
 視線をレインに戻す。
 生々しく開いた地面の穴から、どす黒い靄が覆い尽くさんばかりに広がろうとしていた。
 驚愕の面持ちで、レインがそれを見ている。
 靄は一帯に流れ出した。
 レインの姿は胸から下が靄に包まれてしまっている。
 それはルベア達に届く寸前で消えた。
 霧散したのではない。
 吸い込まれたのだ。
 薄紅色から深紅へと花びらの色を変えた、貴葉席樹に。
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