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2012/03/07 (Wed)
 立ち止まったのは、何の変哲も無い扉の前。
「此処だ」
「……え?」
 怪訝そうな声をあげて、オルカーンは改めて扉と、その周囲を見た。
 石造りの壁、何の装飾も無い、板のような扉。
 色は薄暗い為によくわからないが、多分白か、灰色だろう。
 どちらもそれなりの年月を感じるものだが、店の看板すらない。
 一見普通の裏口だ。
 半ば呆然と扉を見上げていると、ルベアがノックも無しに扉を開けた。

 中を覗き込んで目を丸くする。
 暗い。
 明かりの一つも灯っているように見えない。
 僅かな光源は、今開けた扉からのみ。
「……何かの間違いじゃなくて?」
 ルベアを見上げて言う。
 見上げた先の表情は、薄暗かったが困惑と、諦めが滲んでいるように見えた。
「……いいから入れ。閉めるぞ」
 渋々ながら中に入ると、ルベアが扉を閉めた。
 直ぐ目の前すら見えない闇に包まれる。
「これじゃ何にも……」
 見えないよ、と言いかけたところで、前方に薄く明かりが灯ったのを感じた。
 それに連鎖するように、部屋のあちこちから同じような薄い明かりが灯る。
 部屋の中は漸く、見通せるようになった。
 それほど広くも無い部屋の中は、背の高い棚がいくつか並び、そのそれぞれに用途もよくわからない瓶や書籍等が積まれている。
 瓶の形も様々だ。
 きょろきょろと周りを見回すオルカーンを置いて、ルベアは店の奥へと進んでいった。
「ディリク、いないのか?」
 店の最奥にあるカウンターの向こうへ声をかける。
 店内に人の気配は無い。

「奥へ連れて来い」

 奥から声が響いた。
 低いが、通りの良い声だ。
 ルベアはオルカーンを振り返り、ついてくるように促す。
 カウンターの奥は細い通路になっていて、左右と正面に扉がある。
「こっちだ」
 声は左から聞こえた。
 扉を押し開けると、中はやはり薄暗かった。
 だがそれよりも、中の内装に目を見開く。
 その部屋には窓は一つも無かった。
 調度品すら置いていない。
 あるのは幾つかの瓶、植物、書類の束。
 そして床の中央には、魔方陣が敷かれていた。
 陣の中心には店の主人であるディリクが立っている。
 薄茶の髪。
 青と、金の色違いの瞳。
 背はルベアよりも高い。
 だがひ弱な感じも、頑丈な感じも受けない。
 左半身を向けていた彼は、ルベア達が入るのを見て正面に向き直った。
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