小説用倉庫。
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「魔獣の毒を解毒できる方なんて……滅多に居ませんわよ」
その声に潜む絶望的な色。
ぎり、と歯を食いしばる。
落ち着け、と自分に言い聞かせながら、ルベアはどうすればいいのかも分からず、ただ呆然とレインの横に膝をついていた。
不意にシェンディルがレインの手元から貴葉石樹を抜き取った。
「何を……?」
訝しげな声に、彼女はそれを捧げるかのように両手で目の前に翳した。
淡く、光が漏れる。
「このままでは直ぐに枯れてしまいますわ。……これが、入用なのでしょう?」
「あぁ……」
荷物の中から手早く布を取り出すと、器用に巻いていく。
「これで良いですわ。後は……」
ふとシェンディルが言葉を途切れさせた。
オルカーンが訝しげに、俯けていた顔をあげる。
「……どうした?」
「ディリク……でしたわね。この依頼は」
考え込むような表情でシェンディルが問う。
繋がりが分からずに、それでも頷くと、シェンディルは僅かに顔を輝かせた。
「それなら解毒法が分かるかもしれませんわ。彼は道具屋ですし、情報も集めていると聞いた事がありますもの。手立てが見つかると思いますわ」
「しかし、エールまではどんなに急いでも5日はかかる。そんなに保つのか?」
頭の中で道程を計算しながら言うと、シェンディルは自信のこもった笑みを浮かべた。
「大丈夫ですわ。シュイザまででしたら転移魔法で移動が可能です。1日とかからずに着けましてよ」
それ以上はさすがに無理ですけれど、と付け足して、レインの身体に両手を翳した。
「暫くの間でしたら現状を保てますわ」
「分かった。荷物を取ってくる」
言い置いて、ルベアは荷物を置いておいた場所へと走った。
戦闘前、邪魔になるからと退けておいたのだ。
急いで戻ると、オルカーンが背にレインを乗せていた。
シェンディルが、地面に何か書き付けている。
「さぁ、この円の中に入ってくださいまし。直ぐに起動させますわ」
ルベアとオルカーンが円の中に入る。
振り返ると、シェンディルは円の外側に留まっていた。
視線に気づいたのか、シェンディルは微笑みながら言った。
「わたくしは行けませんわ。やることも残ってますもの」
「しかし……」
言いかけたルベアを遮って、シェンディルが笑う。
「いつか、全て片付きましたら、遊びに来てくださいまし。お土産もあると嬉しいですわね。歓迎いたしますわ」
光に包まれ始めた円の中、ルベアとオルカーンが頷く。
「あぁ。全て終わったら、行くよ」
「お待ちしておりますわ。……では、いってらっしゃいまし」
言葉が終わるか終わらないかの内に、三人の姿は薄れて消えた。
「わたくしの力では、……あれが限界ですもの。ついて行くことはできませんわ」
光すら消えた後を見ながら、シェンディルが呟いた。
小さな再会の約束に微笑む。
その約束が、果たされないことも知らずに。
その声に潜む絶望的な色。
ぎり、と歯を食いしばる。
落ち着け、と自分に言い聞かせながら、ルベアはどうすればいいのかも分からず、ただ呆然とレインの横に膝をついていた。
不意にシェンディルがレインの手元から貴葉石樹を抜き取った。
「何を……?」
訝しげな声に、彼女はそれを捧げるかのように両手で目の前に翳した。
淡く、光が漏れる。
「このままでは直ぐに枯れてしまいますわ。……これが、入用なのでしょう?」
「あぁ……」
荷物の中から手早く布を取り出すと、器用に巻いていく。
「これで良いですわ。後は……」
ふとシェンディルが言葉を途切れさせた。
オルカーンが訝しげに、俯けていた顔をあげる。
「……どうした?」
「ディリク……でしたわね。この依頼は」
考え込むような表情でシェンディルが問う。
繋がりが分からずに、それでも頷くと、シェンディルは僅かに顔を輝かせた。
「それなら解毒法が分かるかもしれませんわ。彼は道具屋ですし、情報も集めていると聞いた事がありますもの。手立てが見つかると思いますわ」
「しかし、エールまではどんなに急いでも5日はかかる。そんなに保つのか?」
頭の中で道程を計算しながら言うと、シェンディルは自信のこもった笑みを浮かべた。
「大丈夫ですわ。シュイザまででしたら転移魔法で移動が可能です。1日とかからずに着けましてよ」
それ以上はさすがに無理ですけれど、と付け足して、レインの身体に両手を翳した。
「暫くの間でしたら現状を保てますわ」
「分かった。荷物を取ってくる」
言い置いて、ルベアは荷物を置いておいた場所へと走った。
戦闘前、邪魔になるからと退けておいたのだ。
急いで戻ると、オルカーンが背にレインを乗せていた。
シェンディルが、地面に何か書き付けている。
「さぁ、この円の中に入ってくださいまし。直ぐに起動させますわ」
ルベアとオルカーンが円の中に入る。
振り返ると、シェンディルは円の外側に留まっていた。
視線に気づいたのか、シェンディルは微笑みながら言った。
「わたくしは行けませんわ。やることも残ってますもの」
「しかし……」
言いかけたルベアを遮って、シェンディルが笑う。
「いつか、全て片付きましたら、遊びに来てくださいまし。お土産もあると嬉しいですわね。歓迎いたしますわ」
光に包まれ始めた円の中、ルベアとオルカーンが頷く。
「あぁ。全て終わったら、行くよ」
「お待ちしておりますわ。……では、いってらっしゃいまし」
言葉が終わるか終わらないかの内に、三人の姿は薄れて消えた。
「わたくしの力では、……あれが限界ですもの。ついて行くことはできませんわ」
光すら消えた後を見ながら、シェンディルが呟いた。
小さな再会の約束に微笑む。
その約束が、果たされないことも知らずに。
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