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2012/03/01 (Thu)
 靄が完全に消えると、レインが支えを失ったかのように膝を折った。
 そのままゆっくりと、その場に倒れた。
「レイン!」
 驚いて駆け寄る。
 今度はシェンディルも邪魔はしなかった。
 傍らに膝をつき、レインを抱き起こす。
 意識を失い、脱力した身体はわずかに重い。
 死体のような感触に血の気が引く思いをしながら、微かに息のあることに安堵する。
 レインの手には、花の咲いた貴葉石樹がまだ抱えられていた。
「少し見せてくださるかしら」
 成す術もなく半ば呆然としていたルベアは、シェンディルのその声に、はっとして身を引いた。
 貴葉石樹はその場の毒素を常に吸収、浄化している。
 毒素が枯渇すれば自然と枯れ、あまりに強い場合は花を咲かせる。
 花が咲いている貴葉石樹というのは毒素が強く、また吸収途中であるということだ。
 引き抜かれても暫くは浄化しようと、毒を周囲に引き付け、集めようとする。
 その為に引き抜いた者は本来地中で集められる毒素を浴びることになるので、解毒剤を飲んでおくか、それを防ぐ結界を張るのが常だ。
 レインはどちらもしていなかった。
 最も強い、深紅の毒素を直に浴びてしまったのだ。
「解毒剤を持っているのか?」
 低い、平静を保った声でルベアが聞く。
 オルカーンも心配そうに近くに来ていた。
「……いいえ。防御の結界しか用意していませんでしたわ。まさか引き抜くとは思いませんでしたもの」
 脈を取り、呼吸の速度と深さを測りながら、シェンディルが答える。
「レインは、平気?」
 小声で、オルカーンが問う。
 見た目は昏睡状態。
 ルベアもオルカーンも毒には明るくない。
 どの種類の毒で、何をすれば解毒が出来るのか見当もつかなかった。
「薬師か医師に――……」
「……難しいですわね」
 見せたらどうか、と言おうとしたところでシェンディルが小声で呟いた。
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